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» 2008年06月09日 13時22分 UPDATE

ロサンゼルスMBA留学日記:外資系企業、非情な“クビ切り”の実態 (1/2)

「外資系企業=クビ切り」といったイメージがあるが、実態はどうなっているのだろうか? 全従業員の下位10%になればクビという米GEや、そのほか投資銀行や戦略コンサルティング業界のクビ切りの真相について、関係者から話を聞いた。

[新崎幸夫,Business Media 誠]

著者プロフィール:新崎幸夫

南カリフォルニア大学のMBA(ビジネススクール)在学中。映像関連の新興Webメディアに興味をもち、映画産業の本場・ロサンゼルスでメディアビジネスを学ぶ。専門分野はモバイル・ブロードバンドだが、著作権や通信行政など複数のテーマを幅広く取材する。


 MBA卒業生の就職先は、厳しい職場であることも多い。外資系企業に入ったりすると、なにかの弾みで解雇される危険性もある。

 MBA留学日記、今回のテーマは「クビ」について。どの企業で、どんな確率でクビ切りが行われているのだろうか?

下位10%は自動的にクビ?――米GE

 「厳しい職場」と聞いて、すぐに思い浮かぶのは米GE(ゼネラル・エレクトリック)だろう。GEといえば、時価総額30兆円(5月末時点)を誇る、世界的な「超」巨大企業。傘下にはNBCユニバーサルといったメディア企業から、ファイナンス企業、インフラ事業に至るまで、実に数多くのビジネス・ユニットを抱えている。「多様なビジネスポートフォリオを構築しつつ、成功している企業」の代表格としても有名だ。

 GEの人事制度として、下位10%は自動でクビ――というものがある。上司により部下が相対評価を受け、それによって明確なランキングが付けられるというシステムで、ここで下位になってしまうと会社から追い出される仕組みだ。同システムはMBAの組織論の授業でも紹介されており、“競争的な人事制度”の代名詞みたいに言われている。

 筆者は一度、GEの内部の人間と食事をしたことがある。その時に、本当に下位は強制的にクビなのかどうか、確認してみた。結論からいって、下位10%に入ると「成績不振人物」のレッテルが貼られるということはあるが、すぐさまクビということはない、とのこと。

 とはいえ、そうした成績不振者を矯正するようなプログラムが存在しており、ここでも上手くいかないと見切りをつけられる、ということはあるようだ。即クビではなく、“半強制的クビ”はあるのだろう。GEは落ちこぼれた社員を次々と切り捨て、代わりに有能な社員をどんどん補充していく。その集団の中でまた成績下位になった者は、放出される。これほど激しい職場もない。

 一方でGEの場合、優秀な社員への待遇の良さも有名だ。GEはイメルト会長肝いりの人材育成プログラムである「リーダーシッププログラム」を用意しており、このプログラム向けにMBA卒業生などを採用している。MBA向けに開催された説明会では、この採用枠に入った人間は“幹部候補生”になると明言。イメージとしては30歳〜40歳ぐらいまでに、数十人単位の部隊を1つ任せてビジネスを運営してもらうとのことだった。

 まだ30歳台の“若造”に大きな権限、責任を与える可能性があるということで、さすがは外資系企業といえるだろう。クビになるリスクは大きいが、やりがいある仕事を任せてもらえ、リワード(=報酬)も大きい。成功を夢見る自信家たちが、次々GEの門を叩くのも分かる気がする。

職場そのものがゴッソリなくなる?――投資銀行

 本連載で何度も取り上げている投資銀行もまた、厳しい職場だ。投資銀行のある幹部は「“付いて行けていない”と判断した社員はクビにする」と断言していた。

 投資銀行は人の入れ替わりが激しいから、多くの社員が入社しては、辞めていく。中には「別の魅力的な職場を見つけた」とか「友達と一緒にビジネスをやる」とか、ポジティブな辞め方をする人間も多い。

 だが幹部にいわせると、このうち相当数は“単なるクビ”なのだという。成績不振者を部屋に呼びつけ、「君はこの業界でやっていくのは難しい」とはっきり宣告する。その上で、会社としても支援をするから、ほかの職場を探したらどうか、と提案するのだという。彼らは会社を去ることを前提に転職活動をして、やっとの思いで新しい居場所を見つける。そして表面上は笑顔をとりつくろって、辞めていく。周りからは、実はクビになっていたとは分からない。

 投資銀行の場合、状況によっては職場そのものがゴッソリなくなってしまうこともあるから、恐ろしい。「このオフィスは畳むことにしました」とか、「そもそも日本市場から撤退します」とかいったアナウンスがなされれば、それこそ下位10%どころではない。上位から下位まで100%解雇である。

 サブプライムローン問題のさなか、米国で比較的大手の投資銀行であるBear Stearns(ベアースターンズ)が潰れてしまい、話題になった(現在はJPモルガンが救済合併をすべく処理を進めている)。このケースでは、救済合併される側のBear Stearnsの社員の多くが、JPモルガンのオフィスに居場所がない――つまりはクビであると言われている。

 これはBear Stearnsの内情に詳しいクラスメートが明かしてくれた話だが、同社の株価が急落し、「倒産するのではないか」との噂が市場を駆け巡っていた頃、すでに他社のリクルーターがBear Stearnsの社員を引き抜きにかかっていたそうだ。

 どこまで本当なのか確認する術はないが、正式にBear StearnsがJPモルガンに買収されるとの報道発表がなされたとき、多くの幹部が既に再就職先を決めていたという。激しいクビ切りが行われるウォールストリートを、象徴するようなエピソードといえよう。

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