携帯市場の飽和を受けて、キャリアショップはどう変わる?神尾寿の時事日想・特別編(1/2 ページ)

» 2008年06月04日 11時21分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 6月3日、KDDIの携帯電話ブランドであるauと、ソフトバンクモバイルの2008年夏モデルが発表された。この記者会見の模様と、今年の各キャリア 夏商戦への取り組みについての総評は別記事に譲るが、ひと言でいって今年の夏商戦は、日本の携帯電話市場が新たなステージに入り始めていることを感じさせる内容であった。

 →au 2008年夏モデルまとめ記事発表会のようす(+D Mobile)

 →ソフトバンクモバイル 2008年夏モデルまとめ記事発表会のようす(+D Mobile)

 そこで今日の時事日想では、その中の1つのポイントである「キャリアショップ」にフォーカスしてみたい。

岐路に立たされているキャリアショップ

 キャリアショップとは、「ドコモショップ」「auショップ」「ソフトバンクショップ」など、キャリア名を冠した店舗のことで、特定のキャリアの商品やサービス“だけ”を取り扱う販売店を指す。携帯電話業界では「専売店」とも言われており、複数のキャリア商品を取り扱う販売店(併売店)や家電量販店とは区別されている。なお、これらキャリアショップのうち、キャリアの直営店はほとんどない。大半はキャリアの厳しい認定や条件をクリアした販売会社が、キャリアと代理店契約を結んで運営している。

 東京など大都市に住んでいると、携帯電話を買うのは、複数のキャリアの端末やサービスが見比べられる家電量販店や携帯電話ショップ(併売店)という人も多いだろう。しかし、全国的にみるとキャリアショップの販売比率は高く、特に地方や郊外の住宅地などはキャリアショップが販売の主力チャネルとなっていることが珍しくない。キャリアショップの販売比率が、販売数量全体の7〜8割近い地域もある。

 こうした背景もあって、携帯電話市場が右肩上がりで成長した時期には、各地にキャリアショップが出店した。ごく最近でも、番号ポータビリティ制度の開始直前には、ドコモのシェアを狙うauとソフトバンクモバイルのショップが出店ラッシュをかけており、「めぼしい物件があれば、他キャリアのショップが来る前に出店して(物件を)押さえる」(キャリア幹部)という状況が続いた。

 しかし実際にMNPが始まってみると、各キャリアの2年契約型の料金プランや割賦制を軸とした新販売モデルにより、携帯電話市場の流動性が鈍化。その前から兆候が現れていたコンシューマー市場の飽和の影響や、台頭する家電量販店との競争激化もあり、これまでキャリアショップがビジネスモデルの柱としてきた「新規契約の獲得」と「端末の販売 (新規・機種変更)」で儲けるという仕組みを維持するのは難しくなってきている。実際、筆者が全国各地を取材した中でも、キャリアショップを経営する地域密着・独立系の販売会社が、全国規模で展開する大手販売会社の傘下に入るというケースを多く見聞きしてきた。“販売の拠点”としてのキャリアショップは、大きな岐路に立たされていると言える。

ブランド力向上と解約防止の拠点になる

 キャリア側も、キャリアショップの位置づけを変えようとしている。例えば最大手のNTTドコモでは、コーポレートロゴを一新した新生ドコモ体制の中で、ドコモショップの役割を「顧客とのコンタクトポイントとして、ドコモと顧客との絆を深めるための場所」と再定義しようとしている。今のところ、ドコモショップの体制や、その経営を支えるインセンティブ制度は旧来の市場拡大期のものであるが、それも大きく変える方針だ。

 「いずれはインセンティブ制度も、(ドコモの)ブランド向上への貢献度も含めるような形で変えていかなければならなくなります。ドコモショップの評価方法も変えなければならない」(NTTドコモ 執行役員 コーポレートブランディング本部 副本部長の荒木裕二氏)

 そして今回の夏商戦への取り組みで見ると、ドコモよりも一歩先んじる形で、KDDIがauショップの新たな展開に踏み出した。それが一連の新サービスのひとつとして紹介された「ナカチェン」「フルチェン」である。

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