初めての不動産売買(3)――マンション売却なんて、もうこりごりだ保田隆明の時事日想(2/2 ページ)

» 2008年05月29日 09時53分 公開
[保田隆明,Business Media 誠]
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 実はこうやってB社顧客と売買手続きを進行している間も、引き続きA社がより高い値段で購入してくれる顧客を探しており、この最後の週末にも、内覧をしたいという2組の顧客を見つけてきていた。月曜日に無事捺印が終了すれば売り物ではなくなることは当然A社にも伝えてあったが、前回の名誉挽回の意味もあったのだろう、A社は最後まで一生懸命、あきらめずに営業活動をしてくれた。

これこそ大どんでん返しだ

 日曜日の夜0時近くになって、B社担当者から携帯電話に連絡があった。「例の売却の件なんですが、ちょっと難しくなりました」。いったいどういうことだと思って話を聞いてみると、B社の購入予定者が冷蔵庫や洗濯機などの設置場所を採寸するために再度物件を訪れたところ、A社が顧客を内覧中のところにバッタリとはち合わせてしまったという。「明日、契約を終了し自分のものになる物件に、なぜいまだに内覧者がいるのだ?!」とその方は激怒してしまったそうである。

 彼の怒りも理解できるが、こちらとしては最後の最後までより高く売れる先を探したい。なにせ今の売却価格では損をするのだから。

 結局、このB社顧客との契約はお流れになった。感情のもつれが発生しては不動産のような高額物件は売れない。我々の日常生活でも、「さあ、買おう」と思った商品に対して、購入直前に店員の要らぬ一言に気分を害して購入しなかったことなど経験ある人も多いに違いない。

 もう3月半ばである。これで3月中の売買成約はほぼ無理となった。

 3月中での成約ができないとなると、こちらはある意味吹っ切れた。金額で泣くのはやめて、こちらの納得がいく金額で売却できるまでじっくり待つことに決めた。物件は自分で住もうと思って吟味した物件である。南東角部屋、見晴らし良好。そして、販売元はブランド力のあるM社である(M社のマンションと言えば三井不動産か三菱地所。両社のマンションは非常に人気が高い)。売り急ぐ理由はない。

他人任せの販売活動はもうこりごり

 不動産の件が頭を離れつつあった3月最終週、今までほとんど動きのなかったC社から「購入申し込みがありました」と連絡が入り、この顧客と無事成約に至った。売却価格は購入価格+3.5%。C社からも仲介手数料を1割負けてもらい、こちらの最低ラインは死守することができた。B社顧客に売っていればこれよりも100万円損失が発生していたわけだから、こちらとしては大満足である。

 ほぼ半年にわたる不動産の売却活動であったが、感想としては「もう懲り懲り」。自分が一生懸命動けば購入者が見つかるわけではない。仲介不動産業者が購入者を見つけるのを、ただ待つしかないのだ。人生で最も高額な売り物なのに、完全に他人頼み。しかも、その頼みの仲介業者はこちらの代理人でもあるが、同時に買い手の代理人でもあるため、売却価格はこちらと買い手の希望額の中間で落とし所を探ることとなる。

 不動産市況が下がってきた最近は、「そろそろマンションは買いどきだ」という内容の記事を新聞で見かけることも多くなってきた。特に団塊ジュニア世代の読者などは、子どもが生まれたり大きくなってきたりして、不動産の購入を検討する方々も多いだろう。くれぐれも冷静に判断していただければと願うばかりである。

 →初めての不動産売買(1)――中古と新築、どちらがいいのか?

 →初めての不動産売買(2)――新築マンションに住まずに売ることになったワケ

 →初めての不動産売買(3):本記事

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