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» 2008年05月28日 10時36分 UPDATE

神尾寿の時事日想:WILLCOM COREの可能性――クルマ市場に注力する狙いとは

ウィルコムが次世代PHS「WILLCOME CORE」について発表した。高速・大容量化するインフラを使い切るには、音声端末やデータ通信カード以外の“非ケータイ”にも用途の裾野を広げる必要がある。

[神尾寿,Business Media 誠]

 5月26日、ウィルコムが新たなスマートフォン「WILLCOM 03」(参照記事)次世代PHS「WILLCOM CORE」(参照記事)ウィルコムとしてのFeliCaへの対応(参照記事)などを発表した。詳しくは各ニュース記事に譲るが、どれも携帯電話キャリアと差別化しつつ、正面から競争しようという意欲に満ちたものだ。その内容は多岐にわたるが、特に筆者が注目したのが、次世代PHS「WILLCOM CORE」の展望とビジネス拡大に向けた積極的な姿勢である。

 →ウィルコム、スマートフォン新機種「WILLCOM 03」発表──6月下旬発売

 →次世代PHSのサービス名は「WILLCOM CORE」──新幹線内でもブロードバンドを実現

 →「ウィルコムはガラパゴスを目指さない」──「03」「CORE」発表

 →ウィルコム、FeliCa対応を発表──2008年度第4四半期に端末を発売

 次世代PHS「WILLCOM CORE」は、昨年12月に総務省から割り当てられた2.5GHz帯を使う新たな通信サービスの1つで、高速・大容量・低価格の“モバイルブロードアクセス(WBA)”として、その登場が期待されている。ウィルコムと同時に周波数が割り当てられたのは、KDDIとJR東日本などが中心となって設立したUQコミュニケーションズであり、こちらは国際的に標準化された通信方式「モバイルWiMAX」を使う。ウィルコムの次世代PHS「WILLCOM CORE」は、モバイルWiMAXと技術的に類似性があるが、よりモバイル環境での利用に適した独自仕様という位置づけだ。

 発表によると、次世代PHS「WILLCOM CORE」は2009年4月に試験サービスが始まり、商用サービス開始は10月から。当初は都市部からの展開になるが、全国へのエリア拡大には前向きな姿勢だ。通信速度は最大100Mbps、時速300Kmでの利用も想定したモビリティを確保するという。むろん、これらは理論最大値であるが、そこから差し引いても、モバイルで使うには十分な性能が期待できそうだ。

WILLCOM COREのクルマ連携戦略

 WILLCOM COREは、ビジネス戦略の面でも注目すべきポイントが多い。ウィルコムではWILLCOM COREを「オープンに水平展開していく」(喜久川政樹社長)考えであり、主力事業である音声端末やスマートフォン、PC向けデータカード以外にも、様々な分野にWILLCOM COREの“裾野の拡大”を図る方針を打ち出している。

yd_mx07.jpg トヨタ「G-BOOK mX」の例。クルマに搭載された通信モジュール「DCM」(Data Communication Module)から送られてきた走行データをサーバに蓄積することで、VICSでは補えない渋滞も予測可能になる

 記者会見の中で、特に触れられたのが自動車業界との連携・連動だ。ここではWILLCOM COREをクルマ向け情報サービス「テレマティクス」の通信インフラとして提供するだけでなく、大量に設置される基地局にカメラやセンサーを併設し、その情報を収集してクルマ向けに提供するサービスを検討していると明かされた。クルマ向け情報サービスは現在、クルマの走行情報を集めて高精度な渋滞情報とする「フローティングカー/プローブカー」がトレンドであるが、その先には道路情報にあわせて映像情報も取得・提供するサービスの可能性がある。総数16万局に達するという次世代PHSの基地局網を、この“リアル情報を取得するインフラ”にもするというウィルコムの着眼点はテレマティクスの将来トレンドにも合致する。WILLCOM COREのニーズとユーザーを拡げる上でも有利になるだろう。ウィルコムは現行PHSのデータサービスでも、本田技研工業や日産自動車に専用の端末と料金プランを提供するなど(参照記事)自動車業界との協力体制にあるが、こうした実績やノウハウの蓄積が、WILLCOM COREの展開でも生かされる可能性は高い。

裾野の拡大で重要度を増すクルマ向けのインフラ提供

 モバイルブロードバンドアクセスやスーパー3G(LTE)の時代においては、高速・大容量化するインフラを、ケータイやスマートフォン、ノートPCだけでは使い切れなくなる。新たなサービスやビジネスを拡げる上でも、非ケータイ分野への「裾野の拡大」は重要なテーマだ。

 この非ケータイ分野において、まず最初に立ち上がると考えられるのが、カーナビやPND(Personal Navigation Device)向けのテレマティクスである。この分野はホンダ、トヨタ、日産など大手乗用車メーカーがサービスを拡大しているだけでなく、いすゞ自動車など商用車メーカー、パイオニアなど市販カーナビメーカーも相次いで進出している(参照記事)。また、パイオニア向けに独自のコンテンツポータル提供を行うYahoo! Japanのようにネット企業の参入意欲も活発だ。

 各キャリアの取り組みに目を向けると、ホンダと日産向けにインフラ提供を行うウィルコム以外に、KDDIがトヨタ/レクサスやいすゞ自動車向けに、ソフトバンクモバイルがパイオニアのエアーナビ向けに3Gインフラ提供を行っている。またNTTドコモは、各地のバス事業者のGPSロケーションシステム向けに、やはり3Gインフラを提供している。携帯電話市場の競争に比べると目立ってはいないが、クルマ市場をめぐる陣取り合戦は水面下で激しくなっている。

 ウィルコムは“次世代”におけるクルマとの連携において、意欲的かつユニークなアイディアで、まずは先手を打った。UQコミュニケーションズなどライバル各社も、自動車会社や鉄道会社との連携を深めて、より積極的な“次世代インフラの活用”に向けて動き出すだろう。2010年前後の「次世代通信の時代」にむけて、各キャリアがどのように異業種との連携や提携を図るのか。ここが注目である。

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