新入社員にKYは少ない。むしろAKY(あえて空気読まない)が必要だそれゆけ! カナモリさん(1/4 ページ)

» 2008年05月28日 08時21分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2008年5月1日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


4月23日、発見と気付きを与える育成プログラムの一案

 先行きが不透明な昨今の経済。そんな環境下で、ビジネスパーソンに求められる資質の1つとして、「新たな視点と気付き」がある。そうした発想力豊かな社員を抱えることが、強い企業として生き残りを果たすことにつながる。だが、「いかにすれば『新たな視点と気付き』を与えられるか」と、悩む人材育成担当者は多い。

 何らかの知識やスキルを教え込むのではないゆえ、個々人の「新たな視点と気付き」を醸成することは確かに難しい。しかし、何も特別なことをせずとも実現は可能なのだ。日常の中にでも常に新たな発見は潜んでいるはずだ。

 そのヒントになればと、筆者の企業研修講師としての経験から1つのプログラム案を記す。日々の業務に没頭し、少々アタマが固くなってきている中堅社員向けにどうだろうか。

(1)「この24時間新しい発見があったか」と部下に聞いてみる

 部下なり、教育をする対象者なりに聞いてみて欲しい。「この24時間、もしくは今週が始まってから、何か自分にとって新しい発見があったか」と。多くは「特にない」と答えるだろう。そうしたら、「日常の中にも必ず新しい発見はあるはずだから、街を歩いているときでも、何か新しいことを発見しようと注意するように」と伝えよう。ほんの小さなことでも、直接自分のビジネスに結びつかないことでもかまわないのだ。生活者や街、商店の店頭、それらのちょっとした変化に気付く敏感さが重要なのだから。

(2)ちょっとした非日常を意図的に作るようにさせる

 数日したら、「何らかの発見はできたか」と聞いてみて欲しい。「日常の中の発見」がうまくできた社員もいるかもしれない。しかし、多くは「特に発見はなかった」と答えるだろう。そうしたら、「その数日、どのように発見を求めたのか」を聞いてみよう。ほとんどは「通勤の行き帰りの道や電車の車内で、街や人々の様子をつぶさに観察したが、特に変化はなかった」と答えるだろう。

 日常の通勤でも、うまくすれば新たな発見ができるのだが、それができなかったら、ちょっとした非日常を作る努力をさせてみよう。難しいことではない。週に1日でもいい。普段とちょっと通勤ルートを変えてみる。普段行かない街に行き、ちょっと歩いてみるのもいい。漫然と変化のない日常の繰り返しの中で発見ができないのであれば、その日常をちょっと変えることが大切だと理解させるのだ。

(3)時にはRadicalにやらせてみる

 それでも何も発見ができないという社員がいたら、Radical(極端)にコトを起こすことで行き詰まりを打破する重要さを教えたい。ちょっと違うところを歩いて発見がなかったら、極端に観察範囲を広げさせるのだ。

 例えば、筆者はネタ探しによく街を歩く。事務所が新橋なので、銀座を抜け東京駅までを流す。しかし、そのルートは慣れてしまっていてもはや刺激が薄くなっている。そうしたときには、さらにその先を歩く。丸の内に出るか、日本橋に出るか。その先は秋葉原まで歩を進める。複数の表情を持つ街。そこに集う人々もまるで違う。それらを見て歩き、比較する。そんなことをしていれば、何らかの発見がある。

 普通にやって、ちょっと工夫して、それでもダメなら徹底的にやる。その努力の中に発見があると理解させたい。街歩きで何かを発見することが主旨ではないのだ。そこから実際の業務も同じことなのだと理解させることが肝要だ。

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