インタビュー
» 2008年05月24日 03時34分 UPDATE

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」:極上の会議&研修体験、請け負います――コンファレンスコーディネーター・田中慎吾氏(前編) (3/3)

[嶋田淑之,Business Media 誠]
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成功のカギは「3つのL」

 「コンファレンスは、ラーニング(Learning)、リビング(Living)、レジャー(Leisure)、という『3つのL』が揃って初めて所期の成果を収めることができるんですよ。共に学び、共に過ごし、共に遊ぶということですね」(田中氏)

ay_shimada_3l.gif 3つのL

 日本のビジネスパーソンは、「共に学ぶ」ことには比較的長けているように思われるが、果たして、「共に過ごす」ことや「共に遊ぶ」ことに関しては、どうなのだろう? 特に「共に遊ぶ」ことは、あまり得意ではないように思えるのだが……。

 「そうですね。日本企業は昔から、自社の研修センターとかだと“レクリエーション”と称して、決まった時間に全員にソフトボールやバレーボールをやらせますよね。でも、そういう『強制』では、少しも息抜きにはならず、コンファレンスの成果もあがりません。ゴルフをやりたい人はゴルフをすればいいし、テニスが好きな人は、テニス好き同士集まって楽しめばいいんです。スポーツが嫌いなら、緑の中を散策したり、温泉に入ってもいい。要は、そこで英気を養い、お互いに楽しく爽快な気分で、またコンファレンスに臨めるようにすることです。ですから、コンファレンスの参加者特性や実施目的に適合する形で、できるだけ多様な『レジャー』が楽しめる環境を選ぶことは大切です」

 「リビング」という面についても同様だ。共に過ごすことで、コミュニケーションを活性化し、かつ前向きに深めてゆく方向に向かうことが望ましい。

 たとえば、食事。普段の社員食堂で食べているような料理や味気ない食事では、テンションは下がるし、仲間との会話も弾まない。頭の中のスイッチも「オン」のままで、残してきた業務が気にかかり、気持ちも晴れない。

 しかし田中氏のコーディネートしたコンファレンスでは、“ここでしか味わえない逸品”と出逢えることも多い。実際、筆者自身がかつて体験した、南仏プロバンス料理の数々は、実に忘れ難い味だった。

 「またあそこに行けば、あの美味い料理が食べられる! 今度は何が出るんだろう?」と思うだけで参加者の気分は高揚し、頭の中のスイッチも、いつしか「オフ」に切り換わる。楽しい感情は発想力を大いにアップさせ、仲間たちとの議論をクリエイティブなものにしてくれる。秀才だろうが凡才だろうが、人間とは、元来そういうものだろう。

コーヒーブレイクは「キオスク」で

 だから田中氏の手がけるコンファレンスでは、たとえばコーヒーブレイクひとつをとっても、コーヒーが午後3時に画一的に供される、などということはあり得ない。コンファレンスの進行状況や、各参加者の嗜好やその日のコンディションに応じて、香り高い上質のコーヒーはもちろんのこと、紅茶、ココア、煎茶、ハーブティ、ウーロン茶、各種フルーツジュースなど、時を選ばず自由に飲めるようになっている。

ay_shimada_4.jpg キオスク

 飲み物だけではない。コンファレンスの最中に頭を活性化することは重要だ。そのための糖分補給や小腹の空きを満たす目的で、各種菓子類もふんだんに用意され、クッキーでもキャンディーでも好きな時に自由に食べられる。「キオスク※」と呼ばれるコーナーを会議室周辺に設置し、飲み物や菓子類は、そこに盛りつけられる。その盛り付け方も、参加者特性を考慮して様々なスタイルがあるようだ。

 「コンファレンスの合間に、キオスク付近で一服していると、他の参加者との間で何気ない会話がなされますよね。そんな時に、思いもかけぬ斬新なアイディアが出たりするのが面白いところです」

 ちなみにキオスクとは、トルコ語の“キョスク”(「あずまや」の意)に由来する。日本では一般に、駅の売店の意味で使われるが、コンファレンスの世界では、上記の意味に限定される。

 コンファレンスにおける「3つのL」とは、すなわち、ルーティンを断ち切った非日常性の中で、参加者たちのときめきを呼び覚まし、脳を活性化させることで、彼らの創造力や発想力を引き出すものなのだ。

「最高の環境」を創出するプロフェッショナル

 従来の日本企業においては、会議や研修に限らず、ビジネス全般に関して、「厳しく鍛えられた人材×過酷な環境=一定の成果」と見なしてきた節がある。たしかに日本全体が貧しかった戦後復興期や高度経済成長期は、そうせざるを得なかったのだろう。

 しかし、時代は変わった。欧米の成功企業を見ても明らかなように、今や「最高の人材×最高の環境=最高の成果」なのであり、グローバルビジネスで成功を収める日本企業もまた、それを明確に自覚している。

 ミーティングプランナーとコンファレンスコーディネーターは、コンファレンスという領域において、その最高の環境を演出するプロフェッショナルである。そして田中氏は、施設側のコンファレンスコーディネーターの日本における第一人者として、自他共に認める存在なのだ。

 増え続ける会議研修のコーディネート依頼に対応し、田中氏は、各々のコンファレンスの実施目的や参加者特性などに応じて、実施会場をプリンスホテルグループの各ホテルに振り分け、そのコンファレンスに最適な独自プログラムを構築して提供している。会場は都内各所のプリンスホテルだけではない。鎌倉や軽井沢のプリンスホテルを含め、各地のプリンスホテルが有する独自の特性を生かせる形になっているようだ。

 「ユーザー企業のほとんどが、リピーターになってくださっています」

 こうしたコンファレンスは、それが実際のビジネス上の最高の成果に結びついて初めて、企業側から評価される。ほとんどの企業がリピーターになっているということは、すなわち、コンファレンスを実施した企業がビジネスで成功していることに他ならない。

 田中氏が推進しているコンファレンスビジネスは、欧米でどのように生成・発展し、今、どうなっているだろうか? あるいは、日本におけるコンファレンス市場はいつから、どれくらい大きくなり、これからどうなろうとしているのだろうか? 次回はそうした具体的な状況について詳述したい。(次号に続く)

嶋田淑之(しまだ ひでゆき)

shimada180.jpg

1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」「43の図表でわかる戦略経営」「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。


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