まるで書斎のようなトイレ、こだわりは「音」と「色」それゆけ! カナモリさん(2/3 ページ)

» 2008年05月20日 15時09分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

3月5日、ナレッジマネジメントとインターナル・レピュテーション

 「ナレッジマネジメント(Knowledge Management)」(以下、KM)という言葉はもはやITの流行用語ではなくなったが、むしろ本質的な部分が今日、企業内にしっかり定着している。そんなKMの新しい動きと、少し変わった切り口をご紹介したい。

ナレッジマネジメントの新潮流

 組織内の知識を「見える化」して共有し、さらに拡大再生産しようという、KMの取り組みは、もはや社内ポータルなどITの仕組みの普及で当たり前になってきた。その中でも新しい動きとしてはmixiやGREEなどでおなじみのSNS(Social Networking Service)を社内で活用しようという取り組みが目立ってきたことだ。社内での知識をマネージするだけでなく、自由な情報交換の場を作って、緩やかなつながりの中で知識創造を図ろうという意図である。

社内SNSの導入における問題点

 その導入にあたって必ず問題となる論点がある。ウェブ公開されているSNS同様に、ニックネームやハンドルネーム、つまり匿名での書き込みを許すのか、あくまで会社内のことなので実名を用いるかという議論だ。インターネットの世界でも実名を名乗るべきという論があるぐらいなので、会社内なら当然だろうと思われるかもしれない。しかし、そうした場合、実際には極端に書き込みが少なく、内容も面白味がないものになってしまうことが多いのだ。

アンオフィシャルなコミュニケーションの効用

 「タバコ部屋のコミュニケーション」と称されるが、アンオフィシャルな会話の中には実は優れたアイディアやイノベーションが潜んでいることも多い。また、本音が語られるのである。匿名での書き込みは、そうした「アンオフィシャルさ」を醸成する効果がある。一方、本名での書き込みはタバコ部屋での会話に対し、会議室での発言のようなものだろう。思いつきなどは、なかなか書き込みにくくなる。

匿名性の問題点

 しかし、企業においては結果的に、実名での書き込みが選択されるケースが多い。その最大の理由は、「匿名にすると書き込みが荒れる」というものだ。「2ちゃんねる化する」などと形容されることもある。もちろん、2ちゃんねるも板やスレッドによっては、非常に良質な書き込みや正論が展開されているので、一括りに悪者視するこの形容は正解ではない。しかし、匿名性は社内での誹謗中傷や、会社方針に対する批判・非難を生むことがあるのも事実だ。確かに社内 SNSで「炎上」などという状態はイタダケナイ。

インターナル・レピュテーションに注目しよう

 「レピュテーション・マネジメント」という考え方がある。ロナルド・J・オルソップ による同名の著書から引用すれば企業にとって、自社の「評判」は重要な無形資産。評判への意識を高め、積極的に管理する「レピュテーションマネジメント」は、今や必須の経営課題と言えるとのことだ。いかに自社が世間から良い評価を受けるようにするか。また、常にどのような評価を受けているのかをウォッチすることの重要性が記されている。

ロナルド・J・オルソップ著の『レピュテーションマネジメント』

 しかし、社内での情報共有に長く携わっている立場からすると、社外以上に社内のコミュニケーションをしっかりウォッチすることが、まずは大切だと考える。社内でアンオフィシャルに交わされる会話、評判は社外の先行指標となりえるからだ。事実、昨今の企業不祥事は内部告発による発覚が過半を占めている。全社ぐるみ、経営者ぐるみの不正は打つ手なしだが、特定個人、部門の問題はインターナル・レピュテーションとして表出化することができるはずなのである。

 「経営者は知らなかった」では済まされない今日の経営環境において、社内匿名性のネガティブな部分にのみとらわれるのではなく、積極的に活用することを提唱したい。もちろん、それがアイディアやイノベーションの創出になるという本来的な部分もしっかりと理解した上でのことである。

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