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» 2008年04月24日 11時33分 UPDATE

保田隆明の時事日想:携帯規制、ネット規制は“sell Japan”への道

与野党が国会への提出を目指す「青少年ネット規制法」に対し、ネット大手5社が反対している。だが与野党のこの動きは、今後の日本の成長戦略に逆行するものだ。さらに言えば、日本の株式市場をゆるやかにつぶすことにもなりかねない。

[保田隆明,Business Media 誠]
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著者プロフィール:保田隆明

外資系投資銀行2社で企業のM&A、企業財務戦略アドバイザリーを経たのち、起業し日本で3番目のSNSサイト「トモモト」を運営(現在は閉鎖)。その後ベンチャーキャピタル業を経て、現在はワクワク経済研究所代表として、日本のビジネスパーソンのビジネスリテラシー向上を目指し、経済、金融について柔らかく解説している。主な著書は「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」「投資銀行時代、ニッポン企業の何が変わったのか?」「M&A時代 企業価値のホントの考え方」「なぜ株式投資はもうからないのか」「投資銀行青春白書」など。日本テレビやラジオNikkeiではビジネストレンドの番組を担当。ITmedia Anchordeskでは、IT&ネット分野の金融・経済コラムを連載中。公式サイト:http://wkwk.tv/ブログ:http://wkwk.tv/chou


 18歳未満の有害サイトへのアクセスを防止を目的とした青少年インターネット規制法案(参照記事)が自民党や民主党で検討されていることを受けて、楽天、ヤフー、ディー・エヌ・エー(DeNA)などが反対姿勢を表明した。昨年後半にも政府は総務省主導で、突然18歳未満の携帯サイトへのアクセスを制限するとし、業界を大混乱に陥れた経緯がある。

新規産業創出に逆行――内需型産業を育成するはずではなかったか

 携帯サービスとインターネット、両方の業界に共通しているのは政府、政治に対するロビー活動が不足していることである。なおここで言う「携帯」産業とは、携帯電話上でサービスを提供する企業を指し、NTTドコモやKDDIのようなキャリアや端末メーカーは含まない。そのために、前回も今回も業界の人たちにしてみれば信じられない規制が導入されようとしている。一言で言うならば、政界や経団連の御用企業、御用業界でない限りはこのような理不尽なことが起こりうるということであり、新規産業を育成しようという気概が国として存在しないことを意味する。

 日本における携帯サービス産業、インターネット産業は典型的な内需型産業だ。最近の円高の流れを受け、識者からは輸出依存型の産業構造を内需型に変更していく必要があるという意見がしばしば聞かれる。国もかつての前川リポート※をリメイクし、今後の国の成長戦略を策定しつつあるところであるが、その中でも内需型産業の重要性は合意されるところである。それであれば、携帯サービス産業、インターネット産業は、国をあげてバックアップし、さらなる発展を目指すべきものであるはずだ。しかし現実には、不合理な規制が登場し、産業の成長が阻害されようとしている。

※前川リポート…1985年、元日銀総裁の前川春雄氏が、中曽根内閣の経済構造調整研究会の座長としてまとめた、「内需拡大と市場開放」をうたった報告書のこと。

 今までは、日本の各種産業の成長過程において、民間の利権を主張する代表的存在として経団連が機能していた。しかし、前回の携帯サービス規制や、今回のインターネットサイト規制の動きをみる限り、経団連が成長産業をサポートしようという雰囲気は残念ながらなさそうである。

日本の株式市場で購入するものがなくなる

 一方、日本の株式市場に目を転じてみよう。空港外資規制や電源開発の問題(参照記事)などに見られるように、日本が“閉じた国”に向かっているため、外国人投資家が日本市場を敬遠しつつある。現在東証で売買を行う投資家の半分以上は外国人投資家であり、株主の割合でも外国人株主は3割に達しようとしている。そういう状況で外国人投資家から敬遠されるというのは危機的な事態だ。

 加えて最近は、円高やサブプライムローンの影響を受け、時価総額の高い輸出関連銘柄や金融関連銘柄のパフォーマンスが冴えない状況にある。その分、携帯サービスやインターネットなど内需銘柄に対する買いが入っていたのだ。もし、携帯サービスに続いてインターネット産業にも過度な規制をかければ、日本の株式市場において、外国人投資家はもう買う産業がないという状況になる。それこそ“sell Japan”だ。

携帯、ネット関連の人材流出が加速する

 もし日本の公用語が英語だったとしたら、日本人が日々アクセスするインターネットサイトはMade in Japanに限らず、世界中で作られる英語のサイトすべてが対象になる。そうであれば今回のような規制を国内で導入したところで、海外サイトが“無法地帯”として存在するため、規制は事実上無意味となる。

 サービス提供側も同じだ。日本語という言語のハンディがあるため、日本の携帯サービスやインターネット関連企業は、グローバル展開がしにくい面があり、どうしても国内市場に頼らざるを得ない。もし国内でも過度の規制が行われれば、業界そのものの将来性が危うくなる。

 今回の件は、携帯サービス、インターネット関連企業にとって、事業のグローバル展開を考えるいいきっかけにはなっていると思う。しかし国内から追いやられる形で海外展開をするぐらいなら、そもそも国内で起業せず、最初から海外で起業をしておけばよかったということになる。最近インターネット業界では、日本ではなく海外に活路を求める若い人材が増えているが、その流れを助長しかねない。

 携帯サービスやインターネット産業については、年齢層が若い人たちのほうが理解がある。こういう問題こそ政界の若手議員たち、例えば小泉チルドレンの出番であるが、目立った動きは見えない。結局彼らも、政界のドンたちの御用集団と化してしまったということなのだろうか。

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