天ぷら油をリサイクル――京都・バイオディーゼルバスレポート神尾寿の時事日想・特別編(1/2 ページ)

» 2008年04月18日 15時19分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 1997年の「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」(通称、京都議定書)によって、“環境の時代”を象徴する街となった古都・京都。ここではさまざまな環境施策が試みられているが、その中でも地域住民の生活に根付いているのが、食用油を原料とするバイオディーゼル燃料の収集・利用プログラムだ。京都市の利用するゴミ収集車すべてと市バスの一部で、バイオディーゼル燃料を使用。運用規模は約300台と国内最大の取り組みになっている。

 今回の時事日想は特別編として、京都のバイオディーゼルバスについてレポート。実際の乗り心地や運用状況について紹介したい。

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市バスとゴミ収集車が廃食用油で走る

 京都市がバイオディーゼル燃料化事業をスタートさせたのは1997年8月。京都議定書の決議を受けて、自治体が取り組む環境施策として開始した。

 バイオディーゼル燃料化事業では、一般家庭から排出される廃食用油を京都市が収集、京都市廃食用油燃料化施設でバイオディーゼル燃料として精製している。この量は年間で約16万リットルに及ぶ。さらに京都市では、市内のホテルや旅館、飲食店、食品工場などから排出される事業系の廃食用油を回収業者から購入し、こちも一般家庭から収集した食用油と合わせてバイオディーゼル燃料にしている。事業系も合わせたバイオディーゼル燃料の年間生産量は約150万リットルだ。

京都市交通局の運用する「バイオディーゼル燃料対応バス」。見た目は普通のバスである

 このようにして生産されたバイオディーゼル燃料は、京都市の所有するゴミ収集車と一部の市バスで利用されている。京都市交通局では106台の低公害バスを運用しているが、その中の93台がバイオディーゼル利用車、13台が天然ガス車両だという。

バイオディーゼル対応車は、実は「普通のバス」

 バイオディーゼル燃料車というと、ハイブリッドカーのように特別な構造や機器の搭載をしているように思われるかもしれない。しかし実際は、あっけないほど普通のバスである。見た目の違いは、「バイオディーゼル燃料車」というステッカーだけだ。

バイオディーゼル燃料車に張られているステッカー。これがなければ、普通のバスと区別がつかないほど違和感がない

 「京都市で運用しているバイオディーゼル燃料バスは、試験車両の2台を除いて、残りはすべて軽油とバイオディーゼルの混合燃料を使用しています。バイオディーゼルの混合燃料はそのまま既存のディーゼルエンジンで使用できるため、バスの構造は(バイオディーゼル燃料車だからといって)何も変わらないのです」(京都市交通局)

 特に混合燃料は、バイオディーゼルが2割、軽油が8割という混合比であるため、燃料パイプやエレメント、燃料噴射系統といった機関部への負担が抑えられている。さらに乗り心地なども通常のバスとほとんど違いがなく、「(運転手が)トルクが少し弱いと感じる程度」(京都市交通局)だという。ちなみにバイオディーゼル100%の車両だと、排ガスの臭いが通常のディーゼルエンジン車と少し違い、天ぷらを揚げたときのような臭いがするそうだ。だが、それも混合燃料車だとほとんど感じられない。

バイオディーゼル混合燃料はバス基地の給油設備から給油できる。バイオディーゼル100%のものは専用施設での給油が必要になるという

 「バスは多くのお客様を乗せて走りますから、いくら低公害のものだからといってトラブルがあってはいけません。また、機材繰りでバスの交換や臨時の入れ替えが発生することもあります。その時にバイオディーゼル燃料の『専用車』では運用が難しい。あくまで普通のディーゼル車と同じように使えることが重要になります」(京都交通局)

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