2年目の挑戦は“抹茶”――「ロック DE お茶」の1年を振り返る「シャカシャカ抹茶!」は定着するか?(2/4 ページ)

» 2008年04月11日 14時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

煎茶でなく、抹茶の新メニューを推す意義

 ロック DE お茶は、濃く入れた日本茶を氷で急冷する飲み方で、マイボトルに入れて持ち歩くのに適している。日本茶の販売店が「給茶スポット」として、マイボトルを持ってきた人にお茶をテイクアウト販売して“給茶”する。

 茶は、昔は薬として飲まれていたほど栄養豊富な飲み物だが、ロック DE お茶など煎茶で摂取できる栄養は成分の3割といわれている。ビタミンE、ベータカロチン、食物繊維など、水に溶けない栄養は摂れないためだ。

 しかし抹茶は、茶がらとして捨てる部分がない分、茶葉の栄養をまるごと摂取できる。またシャカシャカ抹茶!では氷で急冷するため、抹茶の風味や香りも飛びにくい。また抹茶は煎茶に比べ泡立ちやすいため、ボトルをよく振ることで泡でクリーミーな味を楽しめるというメリットもある。シャカシャカ抹茶!は、理にかなった飲み方といえるのだ。

 上記の通り、抹茶には茶道のイメージが強く、日常的に抹茶をたてる習慣がある一般家庭はあまりない。専用の道具も不要で簡単にいれられるシャカシャカ抹茶!で、「抹茶を気軽に飲む」という新しいスタイルの定着を狙う。

 「カフェで抹茶ラテのようなメニューが人気が出たり、抹茶を使ったスイーツが増えたりしたことにより、抹茶自体の生産量は増加傾向にあります。その半面、茶道を習い、抹茶を飲む機会がある人は減っている。新しい飲み方を提案することで、抹茶を飲む人が増えるといいのですが」(全茶連専務理事の大石哲也氏)

茶の君野園の店内にある給茶コーナー。上の丸い緑のステッカーは、給茶スポットであることを示すもの。このうち、シャカシャカ抹茶!に対応する店舗では、下のステッカーを貼る

 ロック DE お茶キャンペーンにはいくつかの目的があった。1つ目は、煎茶を冷やして飲むスタイルを定着させ、日本茶の消費量を増やすこと。2つ目は、マイボトルの持ち歩きを普及させることで、ペットボトルなどの容器ゴミを減らすこと。そして3つ目が、家庭でお茶を淹れる機会が減っている現代の日本で、お茶の入れ方を広め、食育について考えるきっかけにすることだった。

 全茶連や象印マホービンの狙いはどれくらい達成されたのだろうか? キャンペーン開始からの1年を、それぞれの立場で振り返ってもらった。

「会話力を試されるのが面白い」「世間話が熱かった」

日本茶の包装パッケージを製造する、吉村紙業の橋本久美子社長。ロック DE お茶キャンペーンの事務局長を務める

 「給茶がすっかり定着したお店と、あまりお客さんがこなかったお店と、いろいろでしたね」と話すのは、ロック DE お茶キャンペーン事務局長の橋本久美子さん(吉村紙業社長)だ。

 「傾向として、ビジネス街にあるお店は、常連さんがつきやすかったようです。1日に3回くらい給茶にやってきて、まるで自宅で奥さんにお茶を入れてもらうように給茶してもらうお客さんもいると聞きました。観光地にあるお店も反応がよかったそうです。逆に、1週間に1回お客さんが来るか来ないかというお店もありました」

 ロック DE お茶の対象店舗は、現在日本全国で198店舗。利用したユーザーにWebアンケートを採ったところ、「店が少ない」という声が多かったという。「給茶サービスは、日本茶専門店が店頭で行っています。もともとが茶葉の販売店ですから、(飲料を販売するとなると)保健所の許可が下りないなど『やりたくてもできないお茶屋さん』が多かったという事情もあります。ただ、店舗を改装するときに給茶スポットを併設し、保健所の許可を取ったお店もあり、徐々に給茶スポットは増えています」(橋本さん)

 日本茶専門店以外にも給茶スポットを広げるのは難しいのだろうか? 「駅の中など、人通りの多いところに欲しいという意見は多かったです。コンビニやファストフードなどで給茶できるといいのでしょうが、コンビニだとボトルを洗うのが難しい、ファストフードだと扱うのが熱湯だけなので、日本茶のように少し冷ましたお湯を使うメニューは難しいという課題があります」

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