インタビュー
» 2008年04月10日 10時56分 UPDATE

神尾寿の時事日想・特別編:利用者の中心は30代――日本でも広がるカーシェアリング (2/2)

[神尾寿,Business Media 誠]
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カーシェアリングは公共交通である

 「カーシェアリングは公共交通である」――この意識の高まりは、スイスをはじめ欧州の各都市に広がっており、トランジットモール(自家用車流入規制)やロードプライシング(都市部への乗り入れ課金)の適用外にするケースも出てきている。欧州の交通先進国では交通の効率性や環境貢献効果から公共交通の利用促進に熱心だが、その環のなかにカーシェアリングも含まれているのだ。

 「カーシェアリングの環境貢献効果は大きくて、スイスの事例では、マイカーを使っていた人がカーシェアリングの利用をすると、(クルマの)年間利用距離が約3分の1になるというデータも出ています。カーシェアリングは利用ごとに料金が発生するので、自分の移動に対するコスト意識が芽生えて、不必要にクルマを使わなくなるのです。

 さらに興味深いのは、カーシェアリングユーザーは、クルマ利用が少なくなる一方で、電車やバスなど公共交通の利用時間・利用頻度が伸びている。やみくもにクルマに乗るのではなく、その時々の状況にあわせて『交通手段を選ぶ』ようになるのです」(高山氏)

 マイカーを持っていると、何かにつけてクルマに頼って移動する生活習慣がついてしまう。しかし、カーシェアリングによって“クルマ利用が選択肢の1つ”になると、消費者は賢い移動を心がけるようになるのだ。これは電車・バスといった公共交通の利用促進の観点からも、注目すべき部分だろう。

 オリックスによると、カーシェアリングを利用することによるユーザー意識の変化は、日本でも同様に現れるという。交通エコロジー・モビリティ財団とオリックスが共同で、同社のカーシェアリングサービス「プチレンタ」のユーザー調査を行ったところ、スイスの事例と同じ傾向が出たのだ。

 「日本のカーシェアリングユーザーも、サービスの利用をきっかけにマイカーを手放される方が非常に多い。さらに法人ユーザーが、減車や増車計画をとりやめるケースが見られました。

 また各交通分野ごとの利用傾向変化でも、カーシェアリングユーザーはクルマ利用が減る一方で、電車・バス・タクシーや自転車などの利用が増えたという結果になりました。日本でも(欧州の交通先進国と同じく)カーシェアリングが普及することで、クルマ利用そのものを減らし、公共交通の利用促進につながると思います」(高山氏)

FeliCaとモバイル通信を活用する「プチレンタ」

 このようにカーシェアリングの可能性は大きいが、一方で持続可能なビジネスとして展開・拡大するには、将来を見据えたシステム構築が必要になる。オリックスのプチレンタでは、この部分で非接触IC「FeliCa」と、独自のテレマティクス型管理システムを構築し、低コスト化と効率化を図っている。

 「プチレンタでは会員の認証にFeliCaを使っていまして、会員カードとおサイフケータイのどちらも利用できます。カーシェアリングを利用するときは、PCかケータイで利用日時と利用時間を予約し、あとはクルマ側のリーダーライターに(会員カードかおサイフケータイを)かざせばいい。

 一方、クルマ側にはドコモの通信モジュールを内蔵した管理用端末が搭載されていまして、これがセンター側と常に通信し、利用管理を行っています」(高山氏)

 もう少し詳細に踏み込むと、FeliCaの利用は「IDm認証」を用いている。IDmとは、FeliCaチップ固有のシリアルナンバーのことだ(参照記事)。そのため、オリックス側に登録さえすれば、オリックス発行のカードやアプリ以外も認証で使用できる。

 「我々としては、SuicaやPASMOなど(FeliCaを使う)交通ICカードや電子マネーカードをカーシェアリングで使い、相互利用のサービスやビジネスを行いたいですね」(高山氏)

ay_orix04.jpgay_orix05.jpg 丸の内のビル地下にある駐車場にあるプチレンタの貸出車両。利用者は会員登録されているので、利用は無人だ(左)。助手席側にあるリーダー/ライターに会員カードをかざすだけで利用できる(右)

ay_orix06.jpgay_orix07.jpgay_orix08.jpg 会員カードのほか、おサイフケータイでも利用できる(左、中)。車内に取り付けられた通信モジュール。クルマの上に短いアンテナが付いている(右)

ay_orix09.jpgay_orix10.jpg 返却時の手続きは、助手席前にあるキーボックスに鍵をかけるだけ(左)。窓を閉めてICカードをかざしてください、というメッセージがカーナビ画面に表示されて、返却終了(右)

都市部の新たな交通手段として普及させたい

 このようにカーシェアリング事業は、「クルマ」の存在をサービス化することで、多くのメリットと新たなビジネスの可能性を生み出している。しかしその一方で、モータリゼーション以降、「クルマは所有するもの」という古い“自動車神話”の影響が色濃い日本では、いまだ認知度が低いのも現実だ。

 「とにかく今は、カーシェアリングをもっと知っていただきたい。この新たな交通手段に対する理解者を増やしていくことが大切だと考えています。当面は東京・名古屋・関西圏でカーシェアリングのネットワークを広げて、4000台くらいの規模を目指したい」(高山氏)

 多くの自動車メーカーが、21世紀の自動車ビジネスで大切なキーワードとして「共生」を掲げている。これは一意には地球環境との共生だが、その文脈のなかで、北米型モータリゼーションが破壊した他の交通手段との共生も重要になる。筆者は毎年、次世代の交通システムを協議する「ITS世界会議」の取材を続けているが、そこでも近年のテーマは、都市部における自動車利用の抑制と、公共交通機関の利用促進・連携だ。

 クルマのサービス化、“所有から利用へ”という流れのなかで、カーシェアリングは注目すべき分野と言えるだろう。

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