預金残高2兆円を達成させ、ソニー銀行のブランド確立へソニー銀行社長インタビュー(2/2 ページ)

» 2008年04月08日 08時00分 公開
[フィナンシャルリッチ特集取材班,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

顧客が金融商品を一元管理できるために、株式の扱いを始めた

 2007年10月、100%出資の子会社として、「ソニーバンク証券」を開業した。しかしソニーバンク証券で口座を開くには、ソニー銀行で口座を持っている必要がある。他の証券会社では口座を獲得するため、手数料の“引き下げ競争”を繰り広げているが、石井社長はこうした戦略に疑問を感じていると話す。「口座を増やすために、手数料を安くすることは考えていない。ソニー銀行の顧客が金融商品を一元管理できることを重視し、そのために株式の扱いを始めた」。あくまで株式を扱うのは、顧客の資産形成や運用をサポートするためで、「機能を追加した」という発想だ。

 またソニー生命保険との連携も、同じように顧客本位の発想から始まっている。預金や投資信託、株式などの取引とは異なり、相談が必要な住宅ローンに関し、窓口を持つソニー生命がソニー銀行の代理店として案内しているのだ。

2008年上期にはFXの取り扱いを開始

 2008年度上期にはFX(外国為替証拠金取引)のサービス開始を予定しているが、これも「最近FXが流行っているから」と、安易な発想からではない。ソニー銀行はもともと外貨の値動きに敏感な顧客が多く、外貨預金が占める割合も非常に大きい。しかし外貨預金を「買う」ことはできるが、「売り」から始めることはできない。例えば外貨預金では米ドルを買って、同時に売るというリスクヘッジ(リスクを回避したり低減すること)ができない。そのためにFXという選択肢を導入する、というのがサービス開始の根底にある考え方だ。またソニーバンク証券が100%子会社である強みを生かし、ソニー銀行との資金移動を自由かつリアルタイムに行えるシステムを導入する。

 しかしソニー銀行は、他行との差別化を目的として、こうしたサービスを考えているのではない。「顧客のニーズに応えることで、サービスのあり方を決定し、その結果がおのずと、他行との差別化に通じていくのではないか」と考えている。「たくさんの銀行がある中で、他行の差別化はもちろん必要ですが、それは他行と競争する中で培えるものではなく、顧客から見たときに、自ずと出てくる個性のようなものではないか」と話す。

 ただ大きな課題として、貸出金残高の低迷が挙げられる。貸出金残高は3300億円(2007年12月現在)ほどだが、「できれば預貸率70%(銀行の預金残高に対する貸出残高の割合、貸出金残高7000億円以上)を突破したい」。貸出金残高は収益の柱であるため、住宅ローンを伸ばすことが必要になる。しかし住宅ローンの繰上返済が多く、貸出金残高が伸び悩んでいるのが現状だ。

3〜5年後には預金残高2兆円を目指す

 石井氏の今後の目標は、「規模を大きくする」ことだ。金融業は規模が大きくなるほど効率も良い。顧客とWin-Winの関係を築くためには、銀行の規模を大きくすることは必須だという。具体的には3年から5年で、預金残高2兆円の突破を計画している。1兆円達成に設立から7年弱かかったが、次の1兆円では期間を短縮させ、同時にソニー銀行というブランドの確立を目指すという。

 銀行は公共性が求められる存在だ。そのため、すべての人に同じサービスを提供する必要がある。しかしネット銀行は、ネット環境がない人に、サービスを提供することはできない。同様に、ネット上で資産管理をしたくない人にサービスすることもできない。「私たちにできるのは、『こういうサービスを提供する』と表明し、それを信じてくれた人たちを『裏切らない』ということだけ。その中でブランドが確立し、顧客とともに発展していくことが、私どもの真の目標だ」

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.