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» 2008年04月02日 12時06分 UPDATE

神尾寿の時事日想・特別編:駅の地図にSuicaをかざして道案内――「ナビタッチ」

駅に設置されている「周辺案内図」。知らない場所へ行くとき、「この地図を持ち出せたらいいのに」と思ったことはないだろうか? そんな願いをかなえるサービス「ナビタッチ」が4月1日から始まったと聞き、さっそく体験してきた。

[神尾寿,Business Media 誠]

 4月1日、JR東日本企画と表示灯が、「SuiPo」の機能を拡張した新サービスを開始した(参照記事)。以前から行っていたSuicaやPASMOを活用した広告配信に加えて、今回はおサイフケータイを活用した地図に連動するシステムも導入。現在、山手線の東京駅・新橋駅・品川駅・秋葉原駅の主要駅4駅に設置されている。

 SuiPoは、Suica用リーダー/ライターを備えたポスターで、SuicaやPASMO、あるいはモバイルSuicaをかざすと、携帯にポスターに関連する情報(キャンペーン情報やクーポンなど)が送られてくるという駅に設置された広告商品である。若年層やビジネスパーソンを中心に“テレビ離れ”や“CMスキップ視聴”が拡大する中、首都圏の電車や駅を使った交通広告市場は新たな広告メディアとして注目されている。特にSuicaなど急拡大する交通系ICカードを使った仕組みは、潜在的な可能性が大きく、今後の発展が期待できる分野である。

 そこで今日の時事日想は特別編として、SuiPoの新サービスを体験レポート。その可能性について考察してみる。

ay_suipo01.jpg 秋葉原駅中央口に設置されているナビタッチ対応SuiPo

SuiPoの新形態「ナビタッチ」とは?

ay_suipo02.jpg ナビタッチ対応のSuiPoは、LEDを使った大型の最新式周辺案内図に併設されている。なお、SuiPoユニットはワイヤレス通信モジュールを内蔵し、センターと接続している。秋葉原駅のユニットはイー・モバイルの通信回線を使っているという

 今回のSuiPoの進化において、目玉になるのが駅の周辺案内図と連携した「ナビタッチ(Navita with SuiPo)」である。JR東日本では、駅の利便性向上のために周辺案内図をLEDを使用した大型・高輝度タイプにリニューアルしているが、ここにSuiPoユニットが併設されている。おサイフケータイ向けに、案内図と連携した地図提供サービスが組み込まれた。

 具体的にサービスを見てみよう。ナビタッチでは、おサイフケータイ側での初期設定は特に必要ない。ユーザーが自分のおサイフケータイをナビタッチのリーダー/ライター(読み取り機)にかざすと、地図サイトにアクセスするためのURLが送られてくる。そのサイトに接続すると、周辺案内図の位置を起点として「駅周辺の地図」がケータイで見られる。周辺案内図の地図をそのままケータイに持ち出せる感覚だ。

 表示灯がナビタッチを発想したのは、鉄道会社が行ったアンケートに「駅にある周辺案内図の地図を持って行けたら便利だよね」という声があったところからスタートしたという。「ですから、簡単に誰でも使えるものにしたかった。おサイフケータイはすでに広く普及していますので、これを“かざす”だけで利用できるようにしました」(JR東日本企画交通媒体局媒体開発部部長の山本孝氏)

 ナビタッチは新型周辺案内図とのセットで導入されるものだが、FeliCaのリーダー/ライターなどの部分は従来型のSuiPo用ユニットを流用。変更点はソフトウェアの改修にとどめるなどして、低コスト化も図ったという。

ay_suipo03.jpgay_suipo04.jpg おサイフケータイをかざすと、リーダー/ライターから3者間通信機能を使って地図サービスへの接続用URLが送られてくる。ケータイ側にモバイルSuicaの導入をはじめ、初期設定は一切不要。本当に手持ちのおサイフケータイを「かざすだけ」でOK

ay_suipo06.jpg 地図サービスの初期画面。周辺地図とピンポイント天気情報が表示されている。地図の拡大縮小・スクロールができる
ay_suipo05.jpg 地図サービスでは、目的地検索ができる。検索カテゴリーごとの「オススメ店舗情報」は広告付きの紹介項目になる。ほかに一般の施設・店舗の検索も可能
ay_suipo07.jpg 目的地を検索すると、地図上に矢印で目的地までの経路を表示する「地図ナビゲーション」機能が利用できる。携帯電話のGPSを使ったリアルタイムナビはできないが、駅周辺で目的地まで歩くには十分な内容だ

周辺検索から地図ナビまで。予想以上に高機能

 表示灯は鉄道の主要駅に周辺案内図を設置している広告会社で、ナビタッチ経由でアクセスする周辺地図サービスは、同社が運営していた「Navita」というサービスがベースになっている。駅周辺の地図を表示するほか、周辺のエリア広告も掲載。ナビタッチで提供するケータイ向けの周辺地図に、検索連動広告やバナー広告などを組み込むことで新たな広告ビジネスを狙う。

 「当初は(駅設置の)周辺案内図の広告枠と連携して、地図サービスにも広告をいれていきますが、将来的にはケータイ向け(の地図)だけの広告も増えていくでしょう。駅の周辺案内図の広告でみれば、常に15〜20社くらいのクライアントがあり、広告掲載期間が最低でも1年、それ以上の掲載期間になることも少なくない」(山本氏)

 地図は拡大縮小やスクロールも可能で、周辺の施設検索や目的地検索、さらには地図上に経路を矢印で描く「地図ナビ」機能も用意されている。また、検索した目的地が駅から離れていた場合は、最寄り駅までの電車の乗り継ぎも案内する「乗り換え案内機能」も用意されている。なお、地図の利用料は無料だが携帯電話のパケット通信料は別途必要になる(パケット料定額プランを推奨)。

 筆者も実際に利用してみたが、検索の精度や地図ナビの表現力はかなり高い。担当者に詳しく聞いたところ、ナビタッチの地図ナビは、携帯ナビの老舗であるナビタイムジャパンのASPサービスを利用しているという。なお、ナビタッチの地図サービスはあくまでWebベースなので、携帯電話のGPS機能を使った歩行者ナビゲーション機能は用意されていない。とはいえ、起点が「駅の案内図から」とはっきりしているので、地図ナビだけでも十分に実用的だ。

SuiPoは交通系IC以外にも対応。登録の手間は変わらず

 一方、ナビタッチ以外に目を向けると、SuiPoの「Suicaポスター」機能も着実に進化をした。少し振り返ると、SuiPoのSuicaポスターは、事前にSuica/PASMOのID情報と携帯電話のメールアドレスを登録し、その後は自分のカードをSuiPoユニットにかざすと広告メールが届くというものだ。“興味があるポスターの詳しい情報をメールで取得する”といった使い方が想定されている。

 Suicaポスターの機能拡張で見ると、大きな変更点は「Suica / PASMO」以外のFeliCaカードも登録可能になったことだ。筆者も手持ちのEdy機能内蔵のANAカードで試してみたところ、確かにSuicaポスター用のカードとして認識し、登録が可能だった。

ay_suipo08.jpg 今回のSuiPo新サービスでは、Suicaポスターで「Suica/PASMO」以外のFeliCaカードも登録可能になった。写真はEdy内蔵のANAカードだが、正しく認識。ケータイの登録ができた

 しかし、その一方で「事前登録が必要」という課題は依然として残っている(参照記事)。QRコードの活用などで登録の手間を軽減しようという工夫の跡は見られるが、この“一手間”をどれだけの一般ユーザーが超えられるかが今後の課題だろう。

 なお、今回の新システムでは、ナビタッチ機能付きのSuiPoにおサイフケータイ(SuiPoの初期登録をしていないもの)をかざした場合は、Suicaポスターの初期登録ではなく、ナビタッチのURL送信・地図サービス提供が優先的に行われる仕様になっているという。

ay_suipo09.jpg Suicaポスターの初期登録画面。QRコードを読み取って空メールを送ればいいだけなので、手続きそのものは難しくない。しかし、初期設定が必要なのは一般ユーザーにとって面倒なのも事実だ。このあたりの改良は今後も必要だろう

“駅でおサイフケータイ”の起爆剤になるか

 これらSuiPoの新サービスを見てみると、特に魅力や可能性を感じるのは「ナビタッチ」の方である。駅を行き交う人にとって、“駅周辺の地図”や“道案内”の需要は大きく、そこに「おサイフケータイをかざすだけ」と簡単さを優先した仕組みを導入したことは高く評価できる。認知度向上をしっかりと行えば、駅で“初めてのおサイフケータイ体験”をしてもらう最良のツールの1つになれるだろう。

 さらにナビタッチは、広告ビジネスの観点でも大きな可能性を秘めている。ナビタッチの地図サービスは、起点が「SuiPoの設置された駅案内図」からと固定されるため、ローカルエリア広告のメディアとしてはすこぶる使い勝手がよい。今後、認知度が高くなれば、ケータイと駅広告が連携した新たな広告の形態として成長していく可能性があるといえそうだ。

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