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» 2008年03月12日 12時04分 UPDATE

神尾寿の時事日想:2008年のFeliCaのトレンドとは――IC CARD WORLD 2008を振り返る

FeliCaやICタグへの関心が高まる中、「IC CARD WORLD 2008」が4日間で16万5000人の来場者を集めて閉幕した。イベントで感じたのは、昨年普及が進んだ結果、FeliCaソリューションのトレンドが変わりつつある、という流れだ。

[神尾寿,Business Media 誠]

 3月4日から7日まで、東京ビッグサイトで開催された「IC CARD WORLD 2008」が無事閉幕した。今年の来場者数は4日間合計で約16万5000人。FeliCaやRFIDの注目が高まっていること、また実際に広がっている効果もあってか、これまで以上に盛況であった。筆者は4日間連続で、FeliCaワークショップ オープニングディスカッションの司会を務めたが、このイベントの聴講者数も毎回200人を超え、立ち見が出るなど注目度の高さを感じた。

 今日の時事日想では、IC CARD WORLDで見かけたFeliCaのトレンドについて書きたいと思う。

「IDm認証」を活用するソリューションが急増

 今回のIC CARD WORLD(特別展FeliCa World)において、筆者が特に興味深く感じたのが、“FeliCaを簡単に使おう”という気運の高まりだ。昨年(2007年)は、FeliCa決済の普及・拡大期のさなかであったこともあり、FeliCa決済やポイントシステム連携など“高度なソリューション”が多かった(参照記事)。しかし今年は、FeliCa決済で普及したインフラや機器をベースに、低コストかつ手軽にFeliCaを使う提案が多かった印象がある。

 その中でも注目なのが、FeliCaチップ固有のシリアルナンバー(IDm)を使うソリューションの増加だ。これは実際の商品からブース内でのイベントまで幅広く使われており、事前登録やおサイフケータイへのアプリ登録が要らない手軽さをアピールしていた。

 このIDm認証の広がりは、FeliCaリーダーなど関連機器が増加・低コスト化し、FeliCaカードやおサイフケータイが増加したことが主な要因であるが、一方で「事前登録を面倒だと嫌がるユーザーの多さ」や「詳細な個人情報の取得・管理を嫌う流通業者」が予想以上に多いことも背景にあるようだ。単純にユニークなIDを取得し、単純なCRMを低コストで導入したいという流れは、今後も広がりそうである。その点で、IDm認証を活用したツールやソリューションのビジネスは、引き続き拡大する可能性が高い。

 一方、おサイフケータイ関連でも、複雑なソリューションではなく、単純かつ低コストな活用法を提案する展示内容が多かった。例えば、大日本印刷の「SiteKicker(サイトキッカー)」が良い例だ。SiteKickerは“おサイフケータイをかざすだけで携帯サイトへ誘導・接続ができる”というFeliCaリーダー/ライターだ。この「かざすだけで簡単」という強みを生かし、同社ブースで活用事例が紹介されているだけでなく、フェリカネットワークスのブースで盛況だった「おサイフケータイTOWN」でも活用されていた(参照記事)

ay_kamio01.jpgay_fn01.jpg 大日本印刷ブースでは、SiteKickerを化粧品売り場に置き、口コミサイト「@COSME(アットコスメ)」のモバイルサイトへ誘導するデモを行っていた(左)。フェリカネットワークスブースの「おサイフケータイTOWN」(右)

 大日本印刷以外にも、ビーユージーの「ピットタッチ」(参照記事)や、エーゼットの「pittomo(ピットモ)」(参照記事)など、同様のソリューションは多く見かけた。ICアプリを導入せず、おサイフケータイをQRコードの代わりに使う事例は、今年さらに増えそうである。

ay_kamio02.jpgay_kamio03.jpg ビーユージーの「ピットタッチ・オクトパス」は、ピットタッチを複数つなぎ合わせてFeliCaリーダーの新しい使い方を提案していた(左)。エーゼット「pittomo」とFeliCaポケットとの組み合わせは、“手軽に使えるFeliCaソリューション”としてIruCaのくじ引きやOSAKA PiTaPaのポイントラリーに採用された(右)

おサイフケータイは正念場。決済以外で広がれるか?

 “おサイフケータイ”という切り口で見ると、今年のFeliCa Worldは課題も多く感じられた場であった。FeliCaカードの普及が進み、交通系ICカードの活用に注目が集まる中で、「カードではなく、おサイフケータイを使うメリット」を打ち出し切れていない印象があったのだ。特にFeliCa普及の両輪である決済・交通分野では、おサイフケータイへの期待が冷え込んできているように見えた。

 そのような中で、おサイフケータイへの可能性を感じたのが、アクロディアの展示である。同社の商品である「VIVID Touch」は、フィットネスマシンやシールプリント機などとおサイフケータイを連携させるデモンストレーションを行っていた(参照記事)。FeliCaサービスの主軸分野である「決済・交通・CRM」をあえて外し、エンタテイメント分野で“おサイフケータイと連携”するメリットを打ち出してきたところがユニークだ。おサイフケータイの課題であるICアプリ導入も、フィットネスクラブのように会費制で対面サポートが可能な業態ならば超えられる可能性が高い。アクロディアが今回示したように、おサイフケータイの普及と利用拡大では、「FeliCaカードと軸足をずらす」ことも重要かもしれない。

 また、別記事でも紹介したフェリカネットワークスの「おサイフケータイTOWN」(参照記事)は、“なぜ今までこれをやらなかった!”と思わず膝を打ったほど、すばらしい企画である。各キャリアは公式サイトにおサイフケータイのコーナーを作っているが、積極的な利用意欲のあるユーザーでないと、わざわざそこにアクセスしてICアプリを探さない。また、公式サイト自体の作りも“万人に使いやすいもの”とは言えない問題があった。おサイフケータイTOWNの展示では、この問題に対して、「サービスの数だけSiteKickerを設置し、手持ちのケータイをかざす」という方法でダウンロードサイトへ誘導する手法で対応している。ユーザーがおサイフケータイのサービスを“リアルに目で見て、その場で設定できる”コンセプトは秀逸だ。このおサイフケータイTOWNと同様の施設を、今後は駅や大規模なキャリアショップや家電量販店などに広げてもいいのではないだろうか。

 おサイフケータイはFeliCaの「マルチアプリケーション」の特性を十二分に引き出し、かつ液晶表示と通信機能を持つことで、非接触ICの用途を大幅に広げる。携帯向けネットサービスの将来において、FeliCaなど非接触ICはGPSと並んで重要な機能になるだろう。それを鑑みれば、今年のFeliCa Worldで「おサイフケータイへの取り組み・期待」に、やや減速感が見られたのは残念なことである。

 来年のIC CARD WORLDでは、おサイフケータイの活用に新たな扉が開かれていることに強く期待したい。

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