オバマ氏かヒラリー氏か、2つの州の“復活”が焦点藤田正美の時事日想

» 2008年03月10日 10時08分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 2月のスーパーチューズデイ以降、連戦連敗。それまでの優位を明け渡して絶体絶命のヒラリー・クリントンだったが、3月に入ってから、テキサス州とオハイオ州という2つの大票田を取って、何とか土俵際で持ち直した感じになった。

 これで2人の勝負は、いよいよ8月の党大会にまで持ち越される可能性が大きくなってきた。それも獲得代議員数でオバマ候補のほうが多い状態になる可能性が高い。共和党と違って民主党は、各州の代議員を勝ったほうが総取りする形ではないため、現在の100を超える代議員の差はクリントンにとっては挽回がかなり難しい。

 そうなると問題になるのが、全国で796人という特別代議員の票の行方だ。それに民主党の党規に反したとして1月に予備選を行ったものの、代議員を剥奪されているフロリダ州とミシガン州でやり直し再選挙をするかどうかである。

フロリダ州とミシガン州の再選挙が焦点

 特別代議員とは民主党の上下両院の議員、それに州知事などである。これらの人々は、各州での投票結果にかかわらず投票することが可能である。当初はクリントン支持を表明する人が多かったが、最近はオバマの勢いに「押されて」オバマ支持に鞍替えする人も増えているようだ。

 フロリダ州とミシガン州については、両州とも代議員を剥奪されたこともあり、クリントンもオバマも選挙運動を展開しなかった。ただ投票そのものは行われ、そこではクリントンが勝っている。この両州で再選挙を行うということになると、またクリントンが勝つと見られているだけに、クリントン陣営としては再選挙を強く主張し、オバマ陣営は反対する。現時点で予測することは難しいが、民主党のディーン全国委員長が「再選挙を期待する」といった発言をしたと伝えられている。

 夏の党大会にまで最終決定がずれ込むと、オバマとクリントンのどちらが共和党のマケイン上院議員に勝つことができるかが、焦点となるはずだ。ここで最近ささやかれているのが、経験不足のオバマではそれこそ経験(とりわけ安全保障と外交)が豊富なマケインには勝てないのではないかということだ。経験についてはクリントン陣営がオバマ批判で強調していることだが、夏頃にそういった見方が強まるようだと、特別代議員の投票行動に大きな影響を与えるかもしれない。

実効性と現実味のある政策が必要

 オバマになるにせよクリントンになるにせよ、気になるのは、米国の景気が先行き不透明ということもあって、ややばらまき的な「公約」が増えていることだ。とりわけサブプライムローン問題では、ローンを返済できずに家を差し押さえられる人を救済するとか、金利を5年間凍結するとか、やや不健全とも言えるような方策を打ち出している。

 連邦予算には「ペイ・ゴー・ルール」がある。何らかの財源を手当することなく、新しい政策を提案することはできないというものだ。クリントンやオバマ陣営がそこまで具体的に詰めてはいないと思うが、単純に大企業課税といった方向を打ち出して、ポピュリズム的な色彩を強めれば、11月の本選挙ではむしろ民主党のほうが見放される可能性もある。

 これから米国の景気は悪化する可能性が高いだけに、どこまで実効性と現実味のある政策を両候補が打ち出せるか、米国の有権者だけではなく気になるところだろう。我々も両候補の票勘定だけでなく、政策を吟味する段階にいよいよ入ってきたということだろうか。

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