FeliCaをおもちゃに入れると何が起こる?――ソニーブース IC CARD WORLD 2008

» 2008年03月06日 15時41分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 香港や首都圏の鉄道用乗車券から始まったこともあり、FeliCaには交通乗車券や電子マネーのイメージが強い。しかし、「かざすだけで近距離通信」「処理が高速」といったFeliCaの特徴を生かした、決済以外の使い道も開発が進んでいる。ここではソニーブースで見かけた、ちょっと変わったFeliCaの新しい使い道を紹介しよう。

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FeliCa内蔵のおもちゃ、年内登場の見込み

カードタイプのFeliCa(上)の内部には、ICチップのほかにぐるりとアンテナが配置されており、リーダー/ライター(下)が発した電波を受信できるようになっている。ソニーのWebサイトより引用

 FeliCaカードの中には、ICチップ(FeliCaチップ)のほか、CPU、アンテナ、メモリなどが内蔵されている。SuicaやEdyといった、各サービスを利用するためのアプリケーションは、このメモリ内部に書き込まれているのだが、FeliCaカードがほかの非接触ICカードに比べて安く発行できない理由の1つは、このメモリのコストにある。

 ソニーの「FeliCa無線モジュール」は、従来のFeliCaモジュールからメモリを省いた、新開発のモジュールだ。通信モジュールとアンテナを内蔵しているので、FeliCa用の電波をアンテナで受信すればポーリングする。“FeliCaをかざすと何かアクションが起こる”という使い勝手の基本は守りつつ、メモリを搭載しないため、その分低コストに製造できるのがメリット。200〜300円程度で販売可能だという。

 ソニーが考えているのは、FeliCa無線モジュールを内蔵した電子機器をFeliCaポートにかざすことにより、機器のデータをPCに取り込んだり、ネットワークにつないだりするという使い方だ。

 ブースには実際に、バンダイが試作した人形が展示されている。人形にはFeliCa無線モジュールが内蔵されており、PCのFeliCaポートに人形をかざすと、それがスイッチとなって動き始める。ほかにも例えば、体重計や万歩計などの医療機器のデータをFeliCaポート経由でPCに取り込み、インターネット経由でデータを送信する、といった利用方法が考えられる。

FeliCa無線モジュールを内蔵したおもちゃ。モジュールは年内をめどに販売される予定(左)。展示されていたモジュールは2種類(右)

FeliCa+生体認証で“高速かつ安全”

 FeliCaに限らないが、非接触ICカードを“かざして”入退室するシーンは多い。またその一方で、静脈や指紋、顔認証など、生体認証で本人確認を行うソリューションの普及が進んでいる。

 ソニーブースで見かけたのは、その2つを組み合わせた本人認証システムだ。「FeliCa+指静脈認証」や「FeliCa+顔認証」のソリューションが参考出品されている。

 例えば指静脈認証では、FeliCaカードをかざし、その後に指を機械の中に入れると、本人かどうかの認証を行う。通常はカードをかざしたあとにPIN入力を行うところを、指の静脈認証で代行するわけだ。

 ポイントは、生体情報をFeliCaカード内に持っていることだ。通常の指認証システムでは生体情報はサーバ側にあり、ユーザーが指をかざすと、本人かどうかをサーバに問い合わせて確認する。これだと通信する時間がかかるし、サーバ側で生体情報を保存しておかなくてはならない。

 しかしこのシステムであれば、FeliCaカード内に情報が入っているので、機械はカード内のデータと、認証しようとしている指の静脈情報が一致するかだけを見ればいいことになる。通信する時間がかからない上、指静脈情報を管理するのもカードを持っている本人なので、生体情報をサーバに預けるという不安がなくなるメリットがある。FeliCa+顔認証も考え方は同じだ。

 いずれも処理は非常に早い。とくに指静脈認証ソリューションでは、FeliCaカードをかざしながら同時に指を挿入すれば、瞬時に本人確認が完了する。FeliCaの高速な処理速度を生かしたセキュリティーソリューションといえるだろう。

FeliCa+指静脈認証システム(左)。カードをかざしながら指を入れると、1秒かからずに本人認証が完了する(右)

FeliCa+顔認証システム。本人の生体情報をサーバに預けなくて良いため、個人情報保護の観点からもメリットがある

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