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» 2008年03月06日 04時21分 UPDATE

保田隆明の時事日想:さまよう年金マネー、相場頼みから脱却へ

2007年度の公的年金の運用利回りがマイナスに――。年金資産は株式で運用するので、株式相場が低迷すれば連動してマイナスになってしまう。しかしここは1つ発想を転換して、相場に影響されない運用方法を考えるべきではないだろうか。

[保田隆明,Business Media 誠]
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著者プロフィール:保田隆明

やわらか系エコノミスト。外資系投資銀行2社で企業のM&A、企業財務戦略アドバイザリーを経たのち、起業し日本で3番目のSNSサイト「トモモト」を運営(現在は閉鎖)。その後ベンチャーキャピタル業を経て、現在はワクワク経済研究所代表として、日本のビジネスパーソンのビジネスリテラシー向上を目指し、経済、金融について柔らかく解説している。主な著書は「投資銀行時代、ニッポン企業の何が変わったのか?」「M&A時代 企業価値のホントの考え方」「投資事業組合とは何か」「なぜ株式投資はもうからないのか」「株式市場とM&A」「投資銀行青春白書」など。日本テレビやラジオNikkeiではビジネストレンドの番組を担当。ITmedia Anchordeskでは、IT&ネット分野の金融・経済コラムを連載中。公式サイト:http://wkwk.tv/ブログ:http://wkwk.tv/chou


 3月5日付けの日本経済新聞の1面に、「公的年金の運用利回りが2007年度はマイナスになる」という記事が出ていた。さらに企業年金も同様にマイナスになるという。

 債券投資はさほど元本割れの心配はないが、株式市場で運用する場合、「買い」が中心であれば、どうしても運用利回りは株式市場のパフォーマンスに連動してしまう。こうした場合、我々の年金資産の行方は、相場頼みにならざるを得ないのだ。

年金資産の一部運用をヘッジファンドが担う

 そこで、株価の下落局面でも利回りのプラスを確保できるように、年金資産の一部をヘッジファンドなどに任せるという動きが出てきている。また先週の日本経済新聞には、「企業年金連合会が運用する資産の0.4%、500億円程度の運用をヘッジファンドに任せる」といった記事が出ていた。ヘッジファンドは株価が下落していても、株式をショート(空売り)するなどして、相場が悪い時でも利回りでプラスを目指す。そのため、うまく機能すれば相場頼みにならない状況を作り出すことができるのだ。また運用先を通貨や商品に投資するヘッジファンドの場合は、株式市場の影響を受けない。何かと悪者扱いされるヘッジファンドだが、企業年金連合会という企業年金の代表格から運用を任されれば、存在意義が認められるだろう。

年金資産によるベンチャー投資も一考に価する

 株式相場に影響を受けない運用としては、ヘッジファンド以外にもう1つ考えられる。それはベンチャー企業への投資を行うベンチャーキャピタルに、運用を任せるというアイデアだ。成功しているベンチャー投資では、年率リターンが10%を超えるものも珍しくなく、中には50%ぐらいをたたき出す場合もある。株式相場がどんなに悪くても、年にある程度の数のベンチャー企業が新規上場を果たす。上場に成功するベンチャー企業に投資していれば、未上場株の運用益が手にできるのだ。

 特に日本では、ベンチャー企業投資に回る資金が海外に比べ極端に少ないという現状がある。こうした問題を解決するためにも、年金資産がベンチャー投資に流れると非常に効果が大きい。つまりベンチャービジネスの活性化によって、国内経済へのプラス効果が期待できるのだ。

 ただ残念ながら、国内の主要ベンチャーキャピタルは、あまり大きなリターンを実現できていない。過去の実績に照らし合わせると、ベンチャーキャピタルファンドに年金資産の運用を任せるのは、リスクが大きい。しかし運用先を増やすことで、リスクを分散させることができ、さらに新規産業創出という副次効果をもたらす。こうした資金の流れは国内経済全体にプラスの影響を与えるので、一考に値するはずである。

保有資産の有効的な運用を考え始めたのはいいこと

 最近では、中東マネーやシンガポールの政府系ファンドによる大型投資が注目を集めている。日本でも外貨準備を積極的に運用するために、「政府系ファンドを作るべきだ」という議論もにわかに盛り上がってきている。政府系ファンドの話と年金運用を同じ土俵で考えるのは適切ではないかもしれないが、「保有資産を有効に運用して将来の富を増やそう」という機運が高まってきている。

 2007年度の年金資産の運用利回りがマイナスになるのは非常に残念なことだ。だが、市場のパフォーマンスに完全依存していた今までの運用手法を見直し、より良い運用手法を考えるきっかけになるという意味では、前向きに捉えてもいいのかもしれない。個人資産でも公的資産でも、資産運用に関するリテラシーの向上が我が国で今強く求められている。

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