インタビュー
» 2008年03月05日 12時20分 UPDATE

ベストセラーの著者が語る:勝間和代氏に学ぶ、金融リテラシーの基本7カ条とは? (前編)

『お金は銀行に預けるな』など、ベストセラーを連発中の勝間和代氏は、日本人の金融リテラシーが低いことに警鐘を鳴らしている。日常生活にも必要だという最低限の金融リテラシーとして、勝間氏は7カ条を挙げる。

[フィナンシャルリッチ特集取材班,Business Media 誠]

勝間和代(かつま・かずよ)

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東京都生まれ。経済評論家(兼公認会計士)。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得した後、アーサーアンダーセン(公認会計士)、マッキンゼー(戦略コンサルタント)、JPモルガン(ディーラー・証券アナリスト)を経て、独立。会計・ファイナンス及び少子化・ワークライフバランス問題に特に強みを持つ。2005年、ウォール・ストリート・ジャーナル「世界の注目したい50人の女性」に選出されたほか、2006年、エイボン女性大賞を最年少で受賞。ブログ:私的なことがらを記録しよう!!


 「あなたの確定拠出年金(401K)はどの金融商品で運用している?」――このように聞かれて元本確保型の預貯金などを除き、即答できるビジネスパーソンは少数派かもしれない。ましてや運用成績を見ながら、3カ月に1度、見直している人は少ないだろう。

 2012年3月、適格退職年金が廃止される――。これを受け、適格退職年金を導入していた企業は2012年3月末までに、厚生年金基金や401Kなどに移行しなければならない。すでに401Kを導入済みの企業も多く、そこで働くビジネスパーソンは年金資産の運用方法を自ら選択しているはずだ。

 しかし「投資信託で401Kを運用している」と答えている人の中には、基本的なことを理解していない人もいる。例えば株価指数などに連動して運用されているインデックス投信か、市場平均を上回る運用(株式など)のアクティブ投信なのか、どちらで運用しているか分からない人もいるようだ。

 401Kなどにより、知らず知らずのうち投資を始めている人が増えている。しかし、金融商品の基本的な仕組み(スキーム)を理解せずに、“なんとなく投資”をしている人に勝間和代氏は警鐘を促す。「金融知識を持たなければ、ゲームのルールを知らずに試合をしていることと同じようなものでしょう」という。つまり資本主義社会で生活をする上で、金融知識は必要なのだが……果たして日本人の金融リテラシーは十分な水準といえるのだろうか?

そもそも金融リテラシーとは

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 そもそも金融リテラシーとは、どういう意味だろうか? 金融リテラシーについて勝間氏は「金融に関する情報や知識を単に学ぶだけではなく、そこで金融の情報や知識を主体的に読み解くことができるようになることです」という。

 金融広報委員会が2003年に実施した「金融に関する消費者アンケート」で、日本人の金融リテラシーの低さが浮き彫りになった。「金融・経済の仕組み」について「ほとんど知識がないと思う」と答えた人は50.2%、「金融商品」については57.3%の人が「ほとんど知識がないと思う」と回答した。この結果について勝間氏は「私たちは金融について、ほとんど習う機会がなかったためでしょう」とし、金融リテラシーが低い理由を2つ挙げる。

  1. 学校教育及び家庭教育で金融リテラシーが軽視されてきた。
  2. 社会人になると長時間労働で忙しく、金融リテラシーを磨く暇がない。

 学生時代に金融について学んだ人は、それほど多くないだろう。それでは社会人になってからはどうだろうか? ある程度のお金が貯まったら定期預金に預け、満期がくれば自動継続を繰り返していたり、米ドルの預金金利が高いので、なんとなく外貨預金に預けている人もいる。そもそも金融について学ぼうと思うきっかけがなかったビジネスパーソンが多いのだろう。

 話はやや脇道にそれるが、ある調査によると仕事と家庭の調和(ワークライフ・バランス)に不満を持つ人の割合は、世界24カ国の中で日本は1位だった(参照記事)。ワークライフ・バランスといえば、仕事とプライベートをうまく調和させ、相乗効果を生み出すことが理想といえる。そのためにも仕事の時間を短縮させることが必要だが、現実はなかなか難しい。せめて自分ばかりが働くのではなく“お金にも働いてもらう”ことで、仕事の時間を短くすることができるかもしれない。しかし一般的な日本人は、まだまだお金に働いてもらうことを実践している人は少ないようだ。

元本保証を重視しているのは「金融リテラシー不足が原因」

 金融広報中央委員会が実施した「家計の金融行動に関する世論調査」(2人以上の世帯)によると、金融資産に占める割合は預貯金が53.1%で半分を超えている(参照記事)。もちろん銀行に預金を預けるのは悪いことではないが、お金に働いてもらうという意味では不十分だろう。

 例えば100万円を定期預金(金利、年0.4%)で、30年間運用したとしよう。30歳のあなたが定年の60歳で受け取る金額は109万6000円(税引き)だ。もちろん定期預金の金利が今後30年間、年0.4%という可能性は少ない。また過去のデータでは株式や債券で運用すれば、統計的に年4.5%〜6.5%の利息が付くが、もちろん今後のことは分からない。

 金利だけを比べれば一目瞭然だが、なぜ日本人は銀行預金に預けるのだろうか? 金融商品を選ぶ際に重視していることを見ると、「元本保証」が最も多い(参照記事)。この結果について勝間氏は「金融リテラシーの不足が原因」と分析する。

 一方、金融商品を選ぶ時に「利回りが良い」ことを重視している人は16.7%で、ハイリスク・ハイリターン商品に投資している人は少ない。ハイリターンの金融商品を購入する際には「リスクを理解しなければなりません。しかしリスクをコントロールできる知識がないため、多くの人はリスクを取ることをためらっているのです」。逆にいえば、きちんとした金融リテラシーを身に付ければ、資産を殖やすチャンスも広がるということだ。

yd_kinyu.gif 金融資産に占める預貯金の割合は50%強

日常生活に必要な金融リテラシー

 銀行に預金を預けていても、金利が低いのはよく分かっている。しかし「金融」と聞いただけで難しく感じるし、「金融リテラシー」といった馴染みのない言葉を聞くと、自分には関係のない話と思ってしまう……という人もいるだろう。そこで勝間氏は、日常生活に必要な金融リテラシーの能力として、7つを挙げた。

金融リテラシーの能力
1. 金融の役割について、直感的に理解できる力
2. 金融の基本的な理論、特にリスクとリターンの関係を理解する力
3. 個別の金融商品について、情報を正しく入力する力
4. 入手した情報の中から、コストを見抜く力
5. 入手した情報の中から、リスクを見抜く力
6. 入手した情報の中から、期待リターンを計量する力
7. 自分に合った資産ポートフォリオ(保有する金融商品の構成)を作る力

 不景気、年金、少子化……私たちはさまざまなリスクを抱えているが、自分のお金を殖やすためには、まずは金融資産を管理することが重要だろう。そして金融商品に興味を持ち、少しずつ金融に関する情報を入手することが大切だ。金融リテラシーが身に付けば「楽に儲けることができる」といったことではなく、むしろ「金融のことを勉強していくと、金融で儲けることの難しさを実感できるでしょう」(勝間氏)

 また金融リテラシーを身に付けるための一歩として、勝間氏は「分散投資」を挙げている。初めて投資をする人は、どのような金融商品で分散投資をすればいいのか? 次回、実践をまじえながら紹介していく。

(→中編に続く)

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