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» 2008年03月03日 09時56分 UPDATE

藤田正美の時事日想:メドベージェフ大統領誕生――ロシアの政治リスクは高まるか?

プーチン大統領が後継者として指名したメドベージェフ第1副首相は、選挙で7割もの票を得て圧勝した。メドベージェフ大統領の誕生で、今後のロシアに政治や経済面での不安は生じないのだろうか?

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。 東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を務める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 ロシアのプーチン大統領が今年5月に任期切れになるのに伴い、この3月2日、次期大統領を選ぶ投票が行われた。もっともこの投票の結果は、開票を待たずとも明らかだと言っていい。プーチン大統領が昨年暮れに後継者として指名したメドベージェフ第1副首相が当選する(参照記事)。見どころはどれぐらいの票を集めるかだが、約7割の得票で圧勝となった。

 メドベージェフ氏が勝てるのはプーチン路線への支持率が高いからだ。なにしろ現在でもまだ70%を越える支持を誇っているのだから、ブッシュ米大統領や福田首相はさぞやうらやましいことだろう。国民的な支持が高いのは、独立系メディアがほとんどないおかげと言えるかもしれない。モスクワにある独立系の報道機関の調査によれば、2月の3週間、キー局であるNTVは、メドベージェフ候補について他の3候補を合わせた時間よりも17.3倍も長い時間放映したという(参照リンク)

プーチン大統領が支持される理由

 プーチン大統領の業績のうち、最も重要なのはやはり経済だろう。任期中の平均成長率は7%、実質賃金の増加率はそれよりも高く2ケタ。これだけ生活水準が改善すれば、国民の支持率が上がらないはずはない。だからメドベージェフ氏はプーチン路線を引き継ぐと何度も明言している。

 もっとも1998年に債務不履行を起こしたロシアが今や事実上の「無借金経営」となって復活したのは、石油や天然ガスの値上がりによるところが大きい。原油相場は現在のところ100ドルを越えており、この高値が続く限りロシア経済は安泰ということもできる。

 しかし実勢価格60ドルとも言われる原油相場が(参照記事)、世界の景気が悪化するなかでいつまでも現在の水準を保つかどうか不透明だ。原油以外に外貨を稼ぐ産業は、軍需産業以外にほとんどないだけに、もし原油相場が暴落するようなことがあればロシアの景気にたちまち赤信号が点滅することにもなるだろう。

 それに政治と同様、経済でもすべてがクレムリンに集中するようなやり方がどこまで通用するかという問題もある。メドベージェフ氏は比較的リベラル寄り(プーチン大統領や他の側近のように情報機関出身ではない)であるとはいえ、例えばサハリンの天然ガス、石油開発プロジェクト(サハリン1、サハリン2)では、会長を務めていた国有ガス会社ガスプロムがごり押しして、プロジェクトの権益をぶんどった。

 こうしたことが西側によるロシア国内への直接投資にどう影響するのかという問題は残る。外国資本の動向がロシアの資金面にそれほど大きな影響を与えるとは思えないが(何と言っても外貨準備は豊富である)、外国資本による工場進出は雇用を提供するのと同時に技術移転という点でロシアにとって大きな意味があるはずだ。

プーチン&メドベージェフの二頭政治はどうなる?

 メドベージェフ氏が大統領に就任する5月には、プーチン現大統領は首相就任を要請されることになる。この二頭政治が果たしてどう機能するのかは現時点では何とも言いようがない。プーチン首相が実質的に政権の支配者でいるのか、それともメドベージェフ新大統領が権力基盤を徐々に固め、プーチン氏はやがて権力を完全に譲るのか。

 もともとプーチン氏が大統領の座を降りるのは、ロシアの憲法が大統領について連続2期までと制限しているからである。一度、大統領の座から降りればこの制限には引っかからないことから、メドベージェフ氏はいわば「暫定大統領」になるだけで、やがてプーチン氏が大統領として復活する、そんなシナリオもささやかれている。

 こうした意味で、ロシアの政治リスクはプーチン大統領のときよりも大きくなったということができるだろう。ロシア流の「壊れやすい民主主義」が混乱をもたらす根本的な原因である。前出のメドベージェフ氏と他候補の放映時間に関する記事(参照リンク)の中で、機関の専門家はこう述べている。

「法に反するわけではないかもしれないが、明らかに正義には反している」

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