「50歳以下お断り」の新聞社サイト、続々登場の理由

» 2008年02月29日 14時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 2月29日、読売新聞は団塊世代向けWebサイト「新しい大人たち」をオープンした。自社ポータルサイトである「YOMIURI ONLINE(ヨミウリオンライン)」内のコンテンツとして設置される。

Welcomeページには「50歳以下の方が観てもあまり面白くありません」との但し書きが

目玉コンテンツは「ラジオ」

 コンセプトは、「新しい大人の知的好奇心サイト」だ。「新しい大人たち」のターゲットである団塊世代とは、1947〜1955年頃生まれの第一次ベビーブーマーを指す。読売新聞ではこれら団塊世代読者を「ファッション、音楽、そして恋愛にも自由とスタイルを追求した世代」ととらえ、「定年後の豊かな生活を心待ちにしている」と分析。「新しい大人たち」は、そういった読者が男女ともに楽しめるコンテンツを揃えたサイトになるという。

 団塊向けだけあって、コンテンツも実にシブい。なにしろ、目玉コンテンツは「ラジオ」である。DJを務めるのは、落語に造詣が深い読売新聞の名物記者。ユーザーの投稿をラジオ番組風に紹介するという“インタラクティブ性”がウリだ。

トップページ。文字は大きめで読みやすい(左)。ラジオ風コンテンツ「大人ラジオ」コーナー。DJを務める長井好弘記者の夢は「吉永小百合をゲストに呼ぶこと」(右)

 このほかにも、和食の鉄人・道場六三郎氏の店の料理長が教える賄い料理のレシピや、ソムリエ・田崎真也氏が紹介するワインにまつわる話など、団塊世代読者に向けた“ちょっとリッチ”なコンテンツが並ぶ。「新しい音楽」コーナーの内容はオーケストラだし、“憧れ旅行”の内容は「クルーズ」に「ロングステイ」。ラグジュアリーなホテルや高級レストランを紹介した記事のあとには、「一休.com」のシステムを使い、そのままホテルやレストランの予約ができる。

 全体的に、ちょっとリッチでお上品、かつ、そつなくまとまっている内容。しかしそれゆえに、「これは続きが見たい!」と思わず次をクリックしてしまうような刺激に欠ける印象もある。記者は思わず「これでPV(閲覧数)が稼げるんですか?」と心配してしまったほどだ。

「メディアになりたいわけじゃない」

 「メディアになりたいわけじゃないんです。だからPVの数、サイトの規模はそれほど重要ではない」と担当者は話す。しかし広告収入で運営する商用Webサイトの場合、サイトの規模はPVで測られるのが一般的だ。

 一般に、単体で100万PVいかないようでは、独立した商用Web媒体として広告を売るのは難しい。「新しい大人たちはいくつくらいのPVを目標にしているのですか?」という問いに対し、「1年以内に……というか、なるべく早く100万PVを超えたいですね」と担当者。しかしポータルであるYOMIURI ONLINEは月間3億1000万PVという閲覧数を誇る。この規模のポータルから誘導する割には、100万というのは相当控えめなコメントだ。

インターネットで広告主と団塊世代のタッチポイントを作る

 新しい大人たちを制作しているのは、読売新聞の広告局だ。「新聞は50代以上の読者に非常に親和性が高いメディアですが、しかしその半面、新聞広告は顧客とのタッチポイントがないという課題がありました。クライアントは、ユーザーサポートの電話くらいでしか読者に接することがなかった。そこで『新しい大人たち』を立ち上げて、“読者に接触できる場所”を作るのが狙いです」

 あくまで新聞社なので、紙の新聞広告とWeb広告をセットで取るのが目的だ。メインは紙であり、Web広告は読者への接点を提供する付加的なもの、という位置付けだという。「バナー広告やテキスト広告を売ろうとは思っていませんから。基本的にはタイアップ広告に近い位置付けです。我々にとってはあくまで、新聞へ広告を集めることがメインです。Webは(サブであり、)タッチポイント(クライアントと読者が接触できる場所)を提供するため」。実際に、広告主は団塊世代へアピールできる場を求めているそうで「名前は出せませんが『新しい大人たち』を前提に、年間契約してくださった大手クライアントもいます」

 大手新聞社による団塊世代向けサイトは、「新しい大人たち」が初めてではない。朝日新聞社は「Do楽(どらく)」というサイトを、日本経済新聞社は「WagaMaga」というサイトを先行して運営している。

 団塊世代向けの紙の新聞広告をWebで補強する――大手新聞社の広告戦略は果たして成功するか。

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