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» 2008年02月26日 14時03分 UPDATE

キン肉マンが29周年――蘇えるキンケシの舞台裏

『キン肉マン』のコミック連載29周年にして復活したキンケシ。「僕が担当でなければキンケシは復活しなかった」というバンダイの開発担当者に、復刻版への思いなどを聞いた。

[西川留美,Business Media 誠]

 2008年、『キン肉マン』がコミック連載開始から29(にく)周年を迎える。それにちなんでバンダイは、1980年代に累計1億8000万個を販売した「キンケシ」を、当時と同じようにガシャポン(自販機専用カプセル商品)の商品として復刻、3月上旬より販売する予定だ。(全20種・3カラー・1カプセル2個入り100円)

 20年以上の月日を経て復活するキンケシは、キン肉マンの中でも人気のある「夢の超人タッグ編」。見た目も感触もまるで当時のままである。とはいえ、このキンケシはただの“復刻”ではない。実は、当時のキンケシを生産していた金型はすでに劣化して使えなくなっている。そのため今回の復刻のために、イチから作り直しているというこだわりようなのだ。

消費者としてキンケシを復活させたい

yd_kinkeshi.jpg バンダイの森久保拓也氏

 「僕が担当じゃなかったら、キンケシは復活しなかったかもしれません」――。バンダイのベンダー事業部、企画・開発第一チームサブリーダーの森久保拓也氏は言い切る。

 きっかけは東映アニメーションからのオファーだった。2007年の夏、キン肉マンの商品を以前から扱ってきた森久保氏の元に、キン肉マンの版権元である同社からこんな問い合わせがきた。「キン肉マンのコンプリートDVDを販売する予定だが、それに全種類のキンケシを付けることは可能か?」

 思いがけない出来事だった。もともと森久保氏はキン肉マンの商品を作りたいがためにガシャポンを取り扱うベンダー事業部に異動願を出したほどの大のキン肉マンファン。当然このオファーには前向きだった。しかし1980年代当時、全418体製造されていたキンケシの金型はすでに劣化しており、使い物にならなかった。

 「担当としても一消費者としてもキンケシを復活させたい」――森久保氏は早速事業部に「キンケシの全種類復活」を掛け合うことになった。

 昔の金型が使えないとなると、復刻するには全種類の金型を取り直さなければならない。ガシャポンの商品は、金型を作るという初期投資は大きいが、その数量がまとまれば利益が出る商売である。

 だが、東映アニメーション・東映ビデオのコンプリートDVDボックスは完全受注生産の限定版で、価格は10万円(税抜き)。数量が未知数の商品の金型を作ることは、簡単に決断できるものではない。森久保氏は悩んだ末に、こんな結論に達した。「かつてキンケシで遊んだ世代なら、『DVDボックスだけでなく、ガシャポンで100円なら買いたい』と思う人もたくさんいるはずだ」

 そうして「DVDボックス用に復刻したキンケシのうち、人気シリーズのキンケシを自社のガシャポンで復刻販売する」という提案が、社内会議にかけられることになった。

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2008年6月には第2弾が発売

 復刻版は売るタイミングが極めて難しい。実はこれまでにも、バンダイではキンケシやSDガンダムなど、かつてのヒット商品の復刻の話が何度もあったものの、そのたびに立ち消えていた。しかし今回の場合、東映アニメーション・東映ビデオと一緒に仕掛けられるのは何より大きい。事業部内でも、「キンケシをこのタイミングでフィーチャーしよう」とGOサインが出ることになった。その結果、ついにキンケシのガシャポンでの復刻が実現するに至ったのだ。

yd_kinkeshi2.jpg  

 今まで述べてきたとおり、復刻版といっても簡単に復活できるわけではない。だが、巷でCDや食品、玩具など、復刻版の商品が数多く発売されており、その数は年々増加傾向にあると見られている。では、なぜメーカーは復刻版を発売するのだろうか。

 まず復刻版は商品ターゲットが明確であり、キンケシの場合は25〜35歳の男性が狙い。最近のガシャポンは玩具店や量販店だけではなく、地下鉄の構内やオフィスビルなどにも設置され、大人が買いやすい環境にするなど流通の工夫が著しい。ガシャポンの売れ行きはいわゆる「大人買い」の貢献も大きい。近年、復刻版商品が増えているのは「キャラで育った世代が買うようになったから」と森久保氏は話す。

 ただ、ターゲットが明確でもヒットするとは限らない。話題性、タイミング、周囲の環境がそろっていて初めてヒットする。つまり、実のところ新規商品と条件はほとんど変わらない。

 先に述べたように、復刻版とはいえ、決して安価に製造できるわけではない。むしろ、イチから作り直すケースも少なくない。そのキャラクターの価値が現在どこまで通用するのかを見極めなければ、ただの記念商品になってしまい、採算は取れない。それでも復刻するのは、ファンの声が存在するときだ。

 例えば1983年に発売され、シリーズ累計約100万個を発売した「スペースワープ」というインテリアホビーは、ファンの声で蘇った商品だ。この商品はその後生産中止されたが、消費者リクエスト型ショッピングサイト「たのみこむ」での再販要望を受け、2005年に復刻。今や販売台数は累計14万個を超えた。キンケシは今でもネットオークションで取引されるなど、一定数のファンがいる。

yd_kinkeshi3.jpg キンケシ復刻版の「夢の超人タッグ編」

 明確なターゲットとタイミングはもちろんのこと、ファンと開発者の熱意がそろったとき、復刻版は真の意味で「復活」できるのだろう。ガシャポン商品としては6月に第2弾が発売、その後も売れ行きによって継続する予定だ。

 「これで成功したら、キン肉マンとは別のキャラで、第2、第3の復刻版を出していきたい。これは試金石なんです」と、森久保氏は笑顔でそう言い切った。キンケシ以外にも読者が懐かしいと思うガシャポンに出会える日は近いかもしれない。

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