ニュース
» 2008年02月25日 11時00分 UPDATE

フィナンシャルリッチ特集スタート:フィナンシャルリッチに聞く、金融商品の考え方 (1/2)

これまで“なんとなく預金”だったけど、円高だから「外貨預金にしよう」――本当にこれでいいのだろうか? 簡単に投資先を決める前に、まずは金融資産1億円以上を持つ「フィナンシャルリッチ」たちの声を聞こう。

[フィナンシャルリッチ特集取材班,Business Media 誠]

 あなたは“なんとなく預金”をしていないだろうか? 若くて元気に働けている今はまだいい。30年後はどうだろう。親の世代とは違い、年金にも期待できない誠世代は、自分の身は自分で何とかしなくてはならない“運命”にある。

 「お金持ち」――この言葉を聞いたとき、あなたは何をイメージするだろうか? お金持ちには大きく2つのタイプがある。1つは裕福な家庭に育ち、親の財産を譲り受けてそのまま豊かに暮らしている人。そしてもう1つが親からの財産を譲り受けたのではなく、自分の力でお金持ちになった人だ。お金持ちに話を聞くと、共通していることが2つある。それは「人並以上に仕事に打ち込んだ」「稼いだお金を運用することに成功した」という2点だ。彼らは元手を自分で稼ぎ、それを元手に「お金に働いてもらう」ことで、資産を殖やすことができたのである。

 本特集では現役で働いている+現在資産運用をしている人で、金融資産を1億円※以上保有する人を「フィナンシャルリッチ」と定義したい。彼らはどのような金融商品に興味を持って、どのように運用しているのか? ここでは2人のフィナンシャルリッチに話を聞いた。

※金融資産:預貯金や株式、現金(不動産などの実物資産は含めない)などから、借金を引いた金額を指す。

ケース1:スゴ腕株式ディーラーの場合

yd_rich1.jpg

 藤川将太氏(31歳、仮名)は現在、中堅の証券会社で株式ディーラーを務めている。顧客から預かった株を売買して、利益を生み出す職業だ。東証1部上場の株式を運用する藤川さんは、1カ月に約5億円の売買を行う。相場の動きを見ながら瞬時の判断で資金を動かす株式ディーラーは、金融知識はもちろんのこと強い精神力が必要となる。

 生き馬の目を抜く世界で活躍する藤川氏は、月に3000〜5000万円の運用益を出している。株式ディーラーの世界では3カ月マイナスが続くと、たとえ“伝説”と呼ばれようが、“カリスマ”であろうが、即刻クビになる。これまで藤川氏は1度のマイナスもなく、2007年の年収は5000万円、金融資産は2億円を超えるという実力派だ。

 話は少し脇道にそれるが、2005年に上場した総合人材会社「ジェイコム」の株式において、みずほ証券はジェイコム株を大量に誤発注、このためジェイコムの株価が急落するという“事件”があったことを覚えているだろうか。みずほ証券はすぐに事態の収拾に当たったものの、一時的に取り引きが成立しなくなった。このわずか10分程度の間に約20億円を稼いだことから、一躍有名になった個人投資家がいる。ハンドル名「B・N・F」――マスコミでの通称「ジェイコム男」。現在B・N・Fの金融資産は約200億円に達しているとみられ、個人投資家の間では“カリスマ”的な存在になっているが、藤川氏の見方は違う。

 「B・N・Fは単に運が良かっただけ。金融資産200億円となった現在では、彼に勝つことは難しい。しかし資産規模が少なかった時点で、株式ディーラーとの“一騎打ち勝負”※をしていれば、B・N・Fは負けていた可能性が高い」と藤川氏は断言する。他のディーラーも同じ意見で、中には「藤川さんと勝負すれば、B・N・Fは100%勝てない」(大手証券会社・株式ディーラー)と藤川氏の名前を挙げる人もいる。それほど業界で実力が知れ渡っている人物なのだ。

※一騎打ち勝負:ある銘柄をめぐって、Aは「買い」続け、Bは「売り」続けたとする。その場合、資金力があるほうが儲かるケースが多い。

 そんな藤川氏はどんな金融商品を保有しているのだろうか。「株式の保有が50%(国内株式20%、外国株式30%)、あとは外貨MMF※と個人向け国債※を合わせて49%、残りの1%が普通預金」だという。もちろん普通預金が1%だといっても、藤川氏の金融資産から考えると、200万円。よほど派手な生活をしない限り、十分といえよう。

※外貨MMF:MMFはMoney Market Fundの略で、高い格付けの債券などを中心に運用される外貨建て投資信託。
※個人向け国債:日本国が半年ごとの利子や満期時の元本支払いを約束していて、個人のみが保有できる。

 藤川氏が保有する金融商品の特徴は「シンプル」さだといえよう。自分が得意とする東証1部上場の株式で、株価が乱高下しにくい銘柄を保有しているそうだ。あとは為替リスクはあるものの、外貨預金よりも利回りがいい外貨MMF、元本と利息を国が保証する個人向け国債で堅実に金融資産を殖やしているのだ。

 ただ藤川氏の場合、社内規定上、金融商品を頻繁に売買することができない。またアクティブな投資信託(日経225やTOPIXといった指数を上回る成績を目指す)を保有していない理由についてこう語った。「金融商品を保有する上での基本になりますが、できるだけ手数料の安い商品を選ぶことが大切です。運用成績がよくても手数料が高ければ、結果的にマイナスになる可能性があります。そのため手数料が高い投資信託を保有することはありません」

 最後に藤川氏はこう付け加えた。「運だけでは金融資産を殖やすことは難しいでしょう」。きちんと金融商品の基礎知識を学んだ上で投資をしなければならない、ということだ。

ケース2:仕事が忙しい、漫画雑誌編集長の場合

 大手出版社で漫画雑誌の編集長をしている福島直樹氏(48歳、仮名)は、仕事で忙しい日々を送っている。仕事が終わるのは終電が多く、締め切り近くになると、徹夜もよくあるという。年収1800万円で金融資産が1億円を超える福島氏は、プロに運用を任せている。

 福島氏は金融資産の8割を「ラップ口座」で運用している。ラップ口座とは証券会社などにお金を預け、投資信託での運用を一任するサービスだ。福島氏の場合、以前は大和証券の「ダイワSMA」という株式に投資するラップ口座で運用していたが、現在では投資信託に投資する「ダイワファンドラップ」に預け替え、手数料は年1.2075%。仮に運用益が手数料以下であれば、福島氏の金融資産は元本割れとなる。

 実は福島氏は以前、他社のラップ口座で運用していた。その時の運用成績は手数料を差し引いて、2%前後だったという。もう少し運用成績はよくならないの? という気もするが、「プロに任せてダメだったら『仕方ない』とあきらめがつく。もし自分が運用していたら、もっと損が出ていたかもしれませんからね」と話す。それよりも福島氏は、金融資産がジェットコースターのように乱高下することを嫌う。「あくまで生活の基本は仕事。金融資産が大きく殖えたり、減ったりすれば仕事に影響するかもしれない。そのほうが怖い」という。

ファンドラップ・フィー(年率・税込)
契約資産の時価評価額 合計 投資顧問料 取引等管理手数料
〜5000万円 1.4700% 0.3150% 1.1550%
5000万円〜1億円 1.2075% 0.2625% 0.9450%
1億円〜3億円 0.9450% 0.2100% 0.7350%
3億円〜5億円 0.6825% 0.1575% 0.5250%
5億円〜 0.4200% 0.1050% 0.3150% 

 日本証券投資顧問業協会によると、ラップ口座の件数は2007年9月末で、前年同期比54%増の約3万4300口座に拡大した。日本で最初にラップ口座を扱ったのは日興コーディアル証券で最低契約額は1000万円、かつて最低契約額を3億円に設定していた野村證券は2006年に1000万円に引き下げた。また福島氏が預けている大和証券は500万円からで、業界最低水準となっている。

 ラップ口座の市場規模は拡大傾向にあり、2007年9月末の契約資産残高は7000億円を突破。今後もラップ口座の資産残高は増えていくことが予想され、主な資金は団塊世代の退職金とフィナンシャルリッチのお金になると見られている。

ファンド・オブ・ファンズで毎月積立

 福島氏はラップ口座のほかに、投資信託の1種である「ファンド・オブ・ファンズ」にも投資している。投資信託といえば株式や債券などに投資する商品が多いが、ファンド・オブ・ファンズは「投資信託に投資」するもので、分散効果を高めることができるのがメリット。分かりやすくいえば株を1銘柄に全額投資するより、複数銘柄を購入するほうがリスクは小さい。ファンド・オブ・ファンズも分散投資を行っている投資信託なので、リスクが抑えられるのだ。

 数多くある投資信託の中で福島氏は「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」に、毎月積立をしている。「まとまったお金を投資信託に投資すると、株価が急落した時のリスクが大きい」と話す。福島氏のように、中長期にわたって、一定の金額を一定の商品に投資する方法を「ドルコスト平均法」という。安値のときは購入口数は増えるが、高値になると少なくなるため、結果的に購入金額は平均化するので、リスクは抑えられるというわけだ。

yd_rich3.gif セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの基準価額と純資産総額の推移

 一般的にファンド・オブ・ファンズの手数料は年3%を超える商品も多いが、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの手数料は年0.78%程度と安い。この手数料の安さも、商品選びのポイントだったという。

 福島氏のように忙しいビジネスパーソンは多い。かつての福島氏は「金融商品のことを考えるのは面倒だから、すべて定期預金に預けていました。しかし将来の年金不安などを考えると、少しでも利回りがよい商品でリスクが分散されているファンド・オブ・ファンズを積み立てていくことが、自分に合っていると思ったのです」という。

金融資産を見直さない理由

 藤川氏と福島氏に共通しているのは、自分に合った金融商品を選んでいることだ。金融知識が豊富な藤川氏は株を中心に購入しているが、社内規定上、頻繁に売買できないため、手数料の安い金融商品を中長期に保有している。一方の福島氏は忙しい毎日を送っているため、なかなか時間がとれない。それでも自分に合った商品は何か? と考えた結果、プロに運用を任せたラップ口座とリスクが分散できるファンド・オブ・ファンズの積み立てを選んだ。

 こういった投資に積極的な人がいる一方で、「元本が安定している定期預金以外考えられない」といった意見が根強いのも確かだ。理由として、以下のようなものが挙げられるだろう。

  1. 損をするのが怖い
  2. 金融知識がない
  3. 面倒、考えるのが嫌

 また銀行に対する不満も強い。金融庁が実施したアンケートによると、銀行に不満を持つ人は45%。ある民間調査会社によると、銀行のATM手数料の高さや預金金利の低さに不満を持つ人が多い。

 たしかに自分のお金を引き出すのに、時間外や他行のATMからだと105円の手数料※がかかるのは痛い。それなのに100万円を定期預金に1年間預けていても、もらえる利息は3000円ほど。これでは文句の1つも言いたくなるだろう。“銀行に預けておく”ことは、本当にあなたにとって最適な方法なのだろうか。

 もう一度、自分が預けているお金を見直してみるのはどうだろう。例えば同じ預金でも、メガバンクの定期預金よりも、利回りのよい預金を探せばあるのだ。金融商品に関する情報を貪欲に集めることで、あなたもフィナンシャルリッチに近づくことができるかもしれない。

※手数料:提携している金融機関のATMであれば無料であったり、手数料の金額は金融機関によって違う。
       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

注目のテーマ