新カード「MUFG Card」が目指すもの――三菱UFJニコス：Interview（2/2 ページ）

[クレジットカード特集取材班，Business Media 誠]

「MUFG Card」は“お得感”を打ち出せるか

　三菱UFJニコスの2008年度において、重要な取り組みになるのが、新プロパーカードの「MUFG Card」だ。先述のとおり、現在のクレジットカード業界では改正貸金業法による構造変化で、無料カードの発行枚数を追求する“量の拡大”よりも、優良顧客を囲い込む“質の向上”が重要になっている。そこでJCBや三井住友カードなどライバル他社に対抗するのが、MUFG Cardということになる。

　「MUFG Cardは今まさに準備を進めている段階にありますが、その中でも大きく2つのコンセプトを考えています。1つは『生活インフラとしての安全・安心』です。日本のクレジットカードはショッピングでの利用、すなわち支払い手段として定着していますので、高品質かつ安全に対する“信頼感”が重要であり、そこを打ち出していきたい」（島貫氏）

　安心・安全、そして高品質という点は、同社の強みである銀行系カード会社のメリットが打ち出しやすい領域でもある。これはイメージ戦略において有利であるというのはもちろんだが、「セキュリティや事務処理能力の高さなどで銀行系としてやってきた実績がある。自信をもって高品質を訴求できる」（島貫氏）という。

　「そして、もう1つの柱となるのが『お得感』です。日本のクレジットカードユーザーは、ポイントに対する関心が高いですし、お得感はとても重要です。ここでは“長く使ってもらうほどお得”というコンセプトを打ち出したい」（島貫氏）

　しかし、前者の「信頼感」は銀行系だから得やすいとして、後者の「お得感」は提携カードに比べるとプロパーカードは打ち出しにくい分野である。例えばポイント分野で人気がある航空会社マイルにしても、プロパーカードのポイントをマイル交換するよりも、特定の航空系カードで直接ためる方が獲得率が高い。プロパーカードにはユーザーの特定の利用シーンに応じた“お得さ”を打ち出しにくいという傾向があるのだ。

　「提携カードに比べてお得さが打ち出しにくいのは、確かにプロパーカードの課題であり、我々の悩みどころでもあります。しかし、お客様の多くの利用シーンでポイントのお得さがでるプログラムにしたいと考えています。

　三菱UFJニコスという会社で考えますと、多くのカード会社が合併してできたことによるメリットがあります。例えば、ゴールドカード以上の方にご利用いただく空港ラウンジですが、ここでは（合併前の）前身会社が構築したネットワークを持ち寄ることで、利用可能空港の数において他社より有利な立場にあります」（島貫氏）

“アメリカン・エキスプレス”ブランドで新たにプレミアムカードを発行

　お得感は何もポイント付与率だけで決まるわけではない。特に中流以上の顧客層を狙うならば、サービス内容の充実による上質感やステータス性も合わせた、トータルでの満足度が重要であり、これが「お得感」になる。

　三菱UFJニコスでは、MUFG Cardとは別ラインアップのプレミアムカードとして「アメリカン・エキスプレス」ブランドのカードも発行を予定している。MUFGグループという信頼性とブランド力のある金融グループのプロパーカードであることに加え、国際ブランドとしてステータス性の高い「アメリカン・エキスプレス」を追加したプレミアムカードという位置付けだ。

　「『アメリカン・エキスプレス』ブランドのカードのグレードは、一般カードのほかに、ゴールドと招待制のプラチナを検討しています。海外を中心にアメックスのサービスの一部が使えるようになりますし、それでいて年会費はお得感を感じていただけるような価格帯に設定したい。ここは思い切っていきたいと考えています」（島貫氏）

　クレジットカード業界はまさに激変の渦中にあるが、その中で主要各社の間で、中流層から富裕層にかけての「優良顧客」の獲得と長期的な関係構築が重要になっている。その点で、プロパーカードや航空系など優良提携カードの市場は、カード会社の健全性を左右する主戦場と言えるだろう。

　三菱UFJニコスが投入する「MUFG Card」は、業界最大手のプロパーカードとして、またサービス内容の方向性から、ビジネスパーソンにとって魅力的なカードになりそうだ。JCBや三井住友カードなど、プロパーカード分野で競争力をもつライバルとどのような競争を繰り広げるのか。今後の業界勢力図を見据える上でも、その動向に注目である。