無料ルーズリーフ配布で起業目指す現役大学生──浜野さん、内藤さん達人の仕事術(2/3 ページ)

» 2008年02月08日 12時43分 公開
[田口元,ITmedia]

広告付き無料ルーズリーフ「ルーズフリー」の船出

 営業については内藤さんに経験があった。人材派遣会社でインターンをしていたからだ。そのときの仕事はバリバリの営業。新規開拓のため、飛び込み営業を重ねた。営業先のコンサルタントに目の前で名刺を破られたこともあった。悔しかったがもう一度チャレンジした。「また来たのか、お前!」そう言われてまた破られた。三度目に行ったときには苦笑いで迎えられた。「お前、面白いな。ほら、名刺交換しよう」

 「へこむこともありますが、最終的にはやっぱり人とつながっていきたいのだと思います」。内藤さんはそう話す。努力のかいがあり、インターン中には100名ほどもいる営業チームの中で2位という結果をたたき出すことができた。その後、15名のチームをまとめるリーダーとして抜てき。そのころに培ったノウハウを自分たちのビジネスに生かすことにした。

 浜野さんと内藤さんは、まず営業先のリスト作りから始めた。「学生にとって価値ある情報を提供してくれるところ、を思いつくままに挙げていきました」。就職情報、アルバイト情報、レジャー情報……出来上がったリストの先頭からテレアポをかける日々が始まった。

 全く新しい商品だったので、まずは説明をする必要がある。2人で熱心に企業のメリットを語り、説得して回った。最初に受注したのは営業を始めてから13日後。営業に行ったその日のミーティングで納得してもらい、新卒採用向けの広告を出してくれることになった。「帰り道はもう、『うわぁぁぁ!』って叫びだしたい気分でした。本当にうれしかったです」

 その後も順調に受注を獲得し、2007年の11月に無事「ルーズフリー」の配布を開始した。配布したのは1万部。法政大学のほか、5つの大学で展開した。なるべく効率的に配布するために「人がもらってくれる工夫」を凝らした。

 「普通、チラシなどは1時間に20枚程度しか配れません。でも僕たちは10分で50部くらい配ることができました」。工夫したのはとにかく「楽しく」配ること。暗い顔をして渡されてもうれしくない。イベントのように楽しく笑顔で渡すことを心がけた。配ってくれるスタッフには積極的に声をかけて士気を高めた。「ねぇ、君、すごい配るのうまいよね!天才じゃん!」

 クライアントからの評判もよかった。ルーズフリーにはケータイから読み取れるQRコードの広告も掲載している。普通QRコードで広告を打つと配布期間中はいいが、そのあとはばったりと誘導がなくなってしまう。しかしルーズフリーには授業のノートを取るので、そのあとも保管してもらえる。だから、配布期間が過ぎてもQRコードからの誘導が続いたというのだ。

 広告効果があったこともうれしかったが、一番うれしかったのは自分が知らない人が授業でそのルーズリーフを使っているのを見かけたときだ。「あ、僕たちのルーズリーフを使っている!と思うとうれしくて。『握手してくれませんか!』と言いたくてたまりませんでしたよ」と内藤さん。

 今回の配布では学生団体の活動として展開したが、現在株式会社の設立準備中だ。試験期間が終わって休み明けの4月からまた配布を開始する。それまでに今回の経験を生かし、ビジネスプランをもう一度練り直すという。

 「例えば、今回の配布で売り上げと人件費の適正なバランスが分かりました。利益を上げつつ、きちんと受注するために何をすればいいのかが見えてきています。次回は3倍の部数を、10大学で配布したいと思っています」

 また実際に配ることで誰が無料ルーズリーフに反応してくれるかも分かった。「基本的に女の子ですね。彼女たちの方がノートを取りますし(笑)。あと、無料という仕組みにあまり抵抗がないのも特徴です」。こうした経験を生かし、女子大での配布も強化していくという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.