インタビュー
» 2008年02月01日 19時48分 UPDATE

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」:「上場しない」「失敗を奨励」という経営哲学――マルハレストランシステムズ・小島由夫氏(後編) (2/3)

[嶋田淑之,Business Media 誠]

顧客の“もやっとした欲求”に応える、SWAN Cycle型アプローチ

ay_nir01.jpg マルハレストランシステムズ代表取締役、小島由夫氏

 小島氏は「楽しいこと・好きなことであって、なおかつお客様の求めることをするのがビジネス」であるという経営観を持っている。

 では、お客様の求めるものとは一体何だろうか? 経営学的には、それは「Needs(=顧客の顕在欲求)」「Wants(=顧客の潜在欲求)」として捉えられる。

 「Needs」は、言うまでもなく、顧客自身が、自分が何をしたいのかを明確に自覚しているケース。「安くて早く出てくる、ボリュームのあるカレーライスを食べたい。おいしければもっといい」といった場合である。

 こうしたケースにおける企業対応は、何より「Needs即応型」であることが求められる。安くてボリュームのあるおいしいカレーを、すばやく出すことが、顧客の充足感・安堵感につながるのだ。

 一方、「Wants」への対応は難しい。顧客自身が自分の欲求を明確に自覚しておらず、欲求のイメージが“もやっ”としている。例えば「どこかすてきなところで、何かおいしいものを食べたい」といった欲求に、いかに応えるか。それはムードのあるレストランなのか、料亭なのか。食べたいものは何料理なのか?

 漠然とした欲求に対し、その答えを製品やサービスとして具体的に提示されて初めて、顧客は「ああ、自分が欲しかったものはまさにこれだったのだ!」と認識する。「日常生活の不安やストレスから解放されるような、『非日常』を実感させてくれるレストランに行きたい」という観念的な欲求は、それがどんな店のどんなメニューやサービスなのかを具体的にイメージできていない点で、「Wants」といってよいだろう。

 こうしたケースにおける企業対応は、「SWAN Cycle型」であることが望ましい。すなわち、自社の有する「独自・異質・新規」型の「Seeds(デザイン・アイディアや商品開発など事業の種)」を、顧客の「WAnts」に訴求することを通じて、「自分が欲しかったものはまさにこれだったのだ!(=Needs)」と強く実感させること、「Wants」を「Needs」へと転換させることである。SWAN CycleによってWantsを満たされた顧客の反応は、基本的に「ときめき・感動」である。

 ただし、ここで重要なのは、この「SWAN Cycle型」アプローチが可能なのは、あくまでも自社ならではの“独自”で、他企業とは“異質”な、そしてこれまで存在しなかった“新規”な「Seeds」が存在する場合だけということだ。平凡・同質・既存型の「Seeds」しか持ち合わせない企業には、これはムリな話だということである。

特徴 Needs即応型 Wantsに応えるSWAN Cycle型
製品・サービス特性 平凡・同質・既存 独自・異質・新規
創出価値 価格価値
(「安い」が1番!)
効用価値
(クオリティ重視)
顧客の反応 充足感・安心感 ときめき・感動・驚き
製品・サービスの例 ファーストフード、
普段使いのレストラン
ニルヴァーナニューヨークなど、
非日常空間のレストラン
SWAN Cycle型アプローチの特徴 (C)H.Shimada,2008

 小島氏の顧客価値創造は、Needs即応型、SWAN Cycle型のどちらだと捉えられるだろうか? 結論から述べれば、明確に「SWAN Cycle型」アプローチである。

 「海外の老舗レストランを日本に誘致する場合、候補となるレストランをどう選ぶのですか?」という問いに対し、小島氏は、「現地(海外)で日本人が多数来店しているような店から候補を選ぶ」と即答した。この点だけを見れば「Needs即応型」とも思える。しかし日本市場で展開するにあたって、「不変」と「革新」の識別を厳格に行い、そのレストランが現地で有している中核的強みを、社会環境のまったく異なる日本でも最大限に発揮し得るような工夫を行う。

 その工夫とは、「不変」の貫徹・強化と「革新」の断行だ。それによって、そのレストランは、本店の単純な移植でもなければ、日本風への変質でもない、本物かつ「独自・異質・新規」な「Seeds」を訴求する存在になる。だからこそ、ニルヴァーナニューヨークやマンゴツリーといったレストランは、顧客のときめきや感動を生むのである。

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