海外で新規事業拡大――オリックスの成長戦略

» 2008年01月30日 11時49分 公開
[FujiSankei Business i.]

 オリックスの梁瀬行雄社長はフジサンケイビジネスアイのインタビューに応じ、これまでリース事業中心だったインドや中国といった新興国市場で「不動産や企業再生といった事業を加えていきたい」と語り、海外で幅広く新規事業を立ち上げる考えを明らかにした。時期については明言を避けたが、海外事業は営業収益の25%程度にとどまっており、海外強化を新たな成長戦略の核に位置づける方針だ。

インドや中国でも事業を拡大

 オリックスの海外拠点はアジアを中心に25カ所に上り、これまではリース事業が中心だった。今後は「インドや中国でも内需を中心にした経済発展が見込める」として、リスクを勘案しながら慎重に事業の拡大を目指す。これまで拠点がなかったロシアについても「研究中」とし、新拠点の開設を検討する。

 また、米国のサブプライム(高金利型)住宅ローン問題に伴う金融市場の混乱で、海外では事業再構築が進んでいる。このため、新興国以外でも「投資チャンスが大きくなっている」として、海外でのM&A(合併・買収)に意欲を示した。

 一方、国内のリース業界では再編が加速している。梁瀬社長は「強力なライバルが出現し、競争は厳しくなっている」として警戒感を示す。競争激化に対応するため「銀行と協力した新しいビジネスを考える」として、大手銀行とリース分野での提携を検討していることも明らかにした。

 オリックスは2008年3月期の最終利益が3%増の2025億円と5期連続で過去最高益を見込む。ただ、利益の伸び率は鈍化しつつあり、国内外で新たな成長の布石を打つ構えだ。

梁瀬行雄社長に聞く「IT活用で新ビジネス」

――1月1日に社長に就任した

梁瀬 4年前に自分の人脈を生かせると考え、銀行界からオリックスに入社した。宮内(義彦)会長からは『第2の人生にしないでくれ』といわれた。当社のDNAを生かしながら成長路線を維持することが、社長としての大きな使命と考えている。成長維持には人材を育てることが重要だ。

――サブプライム問題など事業環境は激変した

梁瀬 1つの要因で金融市場が大きく揺れ動いている。視界が良好になるまでは慎重に運営しないといけない。一方で(損失が拡大する)外資系金融機関に資本を入れるチャンスとも考えられる。ここ数年の企業成長で財務体質が強化されており、当社は買収側の立ち位置にある。欧米の金融技術は一日の長があり、そこへの投資は悪いことではない。常に(M&Aの)話は来ているがあわてる必要はない。

――米経済が減速する一方、成長が続く新興国での戦略は

梁瀬 短期的には慎重に見るべき部分もあるが、10年単位でみればインドも中国も成長が続く。海外には25カ所の拠点があり30年以上の歴史を持つところもある。これまでは小口のリースが中心だったが、リスクを見極めつつ事業を拡大したい。

――オリックスの事業は多岐にわたる

梁瀬 リースのような市場シェアと存在感のある事業は、さらに磨きをかける。一方、当社の個人向けローンや信託銀行、証券といったリテール(小口金融)はオンラインが中心の業態で、IT(情報技術)と結びつけた新しいビジネスが考えられる。個人ローン業務の買収には興味はない。

梁瀬行雄(やなせ・ゆきお)

早大卒。1968年旧埼玉銀行(現りそな銀行)入行。旧あさひ銀行(同)頭取、りそなホールディングス副社長を務め、2003年11月オリックス常任顧問。専務、副社長を経て08年1月から現職。埼玉県出身。63歳。


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