2008年の賃上げ率は1.91%――昨年並みを予想する4つの要因

» 2008年01月16日 07時00分 公開
[Business Media 誠]

 労働組合が賃上げなどを企業側に要求する春闘――。2007年の春闘を振り返ると、前年比0.08ポイント増で1.79%上昇した。成果主義を導入する企業が増えているものの、多くのビジネスパーソンにとっては“懐事情”が決まる大事な時期だ。

 それでは2008年の春闘はどうなるだろうか? 第一生命経済研究所の永濱利廣氏は、主要業種の賃上げ率を1.91%と、昨年並みを予想している。月々の給与が20万円のビジネスパーソンで3800円、30万円で5700円、40万円で7600円のアップとなる。賃上げが1.9%増であれば、ボーナスの増加も加わり、2008年度の名目賃金(金額で示される賃金。物価の上昇などは加味しない)を0.9%ほど押し上げることになりそうだ。

 賃上げの上昇になれば「長期にわたって得られる所得が増加するという期待を、家計にもたらすことになる」(永濱氏)と見ている。一方で生活品の値上げや増税などが決まると、「実質的な所得が減少することもある」と注意を促している。

昨年並みの賃上げを予想する4つの要因

 過去5年間の春闘を見ると、最も賃上げ率が高かったのは2007年で1.87%、加重平均で5890円アップしている。逆に最も低かったのは2003年で1.63%、金額にして5233円の増加。この年は6年連続で史上最低を更新しており、経団連は「ベアは論外、定昇は凍結」という提言をしていた。

 2008年の賃上げが昨年並みと見る背景として、永濱氏は4つの要因を挙げている。1つめは「経済のグローバル化の影響」だ。中国やインドを始めとする新興国の台頭によって、安価な労働力が大量に供給されている。2000年代以降、人件費の低下圧力が続いていて、2008年の賃上げを“抑制”しているようだ。

 2つめに「分配構造」の変化を挙げている。株主構成を見ると外国人株主比率が上昇しており、大株主から「資本効率の高い経営」「配当金の増加」を求められている。このため企業側は、人件費を抑える傾向がある。

 3つめは「資源価格の高騰」だ。生活必需品の値上がりが相次いでいるが、企業側は資源価格の高騰を人件費の抑制で吸収してきた。

 4つめは「企業収益の鈍化」「景気見通しの下方修正」などから、昨年よりも賃金アップを“渋る”企業が出てきそうだ。法人企業統計季報の2007年7〜9月期経常利益では前年比−0.1%と21四半期ぶりに減少。また日銀短観(12月調査)によると、2007年度の経常利益計画は1.1%増だが、前年同時期の調査(4.9%増)と比べると、伸びが鈍化している。

 円高などの懸念はあるものの、2008年3月期決算でも過去最高益となる企業は、数多く出てくるだろう。しかし4つの要因を踏まえ2008年の賃上げは、抑制されそうだ。「かつてのような横並びの一律賃上げはあり得ない。企業間でバラつきが出て、賃金格差の拡大が見込まれる」と分析する。

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