電子マネーがヒット商品に選ばれた2007年。伸び悩むサービスの課題とは? 2007年のFeliCa関連ニュースを振り返る(前編)(2/2 ページ)

» 2007年12月28日 17時26分 公開
[聞き手:房野麻子,Business Media 誠]
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モバイルSuicaの利用者数が伸びない理由は?

吉岡 モバイルSuicaといえば、「携帯の電池が切れたら改札通れないんでしょ?」という声を数え切れないくらい聞きました。

神尾 だから、 モバイルSuicaはマーケティングが下手なんですよ(苦笑)。基本的なことが伝わっていない。

吉岡 実際には、普通に使っていて電池が切れただけなら問題なく通れるんですけどね。

神尾 イメージ戦略が全然ダメなのが、とても残念です。モバイルSuicaは来年こそいけますかね? 個人的に、新幹線割引(参照記事)はかなりいいと思うのですけど。

JR東日本が運行する新幹線に、紙のチケットなしで乗れるモバイルSuica特急券。通年同じ運賃で、平均9%の割引になる。座席の指定も携帯からできる

吉岡 あとモバイルSuicaでは、「(VIEWカード以外のクレジットカードだと)どうしてお金がかかるの?」という声も多いですねぇ※。

※モバイルSuicaの年会費は、JR東日本が発行するVIEWカードユーザーは無料、その他の一般クレジットカードでは1000円となっている。ただし現在は「年会費初年度無料キャンペーン」中で無料。

神尾 見せ方の問題なんですけどねぇ。VIEWカードの方がかなりお得なんだから、そちらをしっかりPRすればいいのに。

吉岡 でも、「(専用)カードを買わなくていいんだから、モバイルならタダになるべきでしょ?」という声は結構多いですよ。例えばnanacoがそうですよね。カードを買うとお金がかかるけど、おサイフケータイで設定すればタダになる。その感覚なんでしょう。

――もっと効率的なPRを、ということでしょうか。

吉岡 モバイルSuicaは、使い始めると満足度はとても高いんですけどね。もったいないですよ。そういう意味で、今回の新幹線割引はアピールするんじゃないかと思います。

神尾 ちょっと脱線しますけど、女性はケータイをポケットに入れないでしょ?  だからモバイルSuicaだとあまり便利にならないってことはありますか? 男はケータイをポケットに入れているので、“サッと出せる”メリットが大きいんです。

吉岡 いえ、女性こそ便利だと思いますよ。定期ならパスケースに入れている人も多いだろうけれど、(SuicaやPASMOを)大きな財布に入れてる人も多いじゃないですか。あの大きな財布をバッグから引っ張り出さずに済むメリットは大きいですよ。それに、電車の中でケータイをいじっている率はものすごく高いわけですから。

神尾 そうですか、ケータイの方がサクッと出せますか。取り回しで考えると、むしろ女性の方にモバイルSuicaのメリットがあるかもしれませんね。じゃあ今度、誠で「女性のためのおサイフケータイ講座」をやりますか(笑)。

「彼女といっしょにモバイルSuicaを使おうキャンペーン」?

――彼氏が設定してあげれば、使うんじゃないかな……。

吉岡 あ、それいいかも。

神尾 もちろん、読者が彼氏として、女性にモバイルSuicaを設定してあげるのもアリで(笑) 恋愛の入り口で「PCの設定をしてあげる」はけっこう口実になるらしいですし、いいのでは?

吉岡 「彼女といっしょにモバイルSuicaを使おうキャンペーン」ですか(笑)。JRは、彼氏彼女で使ったら1人タダにしてあげるといいんじゃないですかね。

神尾 それいいじゃないですか。ペアリング登録すると特典ポイントがもらえるとか。

吉岡 私、あの新幹線割引には、ちょっと引っかかっていたんですよ。

神尾 どこがですか?

吉岡 JR東日本の新幹線って、東海道新幹線に比べてビジネス客が少ないと思うんですよね。出張だったら新幹線に1人で乗ることが多いかもしれないけど、例えば軽井沢に行くとか、新潟でスキーとか、東北で温泉とかいう人がどれくらい1人で乗るだろう? と。せっかくケータイから席が取れて割引もあるのに、1人分だけしか取れないんじゃ意味がないと思いませんか?

神尾 確かに、チケットと違ってケータイは「1人1台」の問題はありますね。

吉岡 2人以上で旅行に行くのに、1人だけしか席を取れないというのは、ちょっとね……。

神尾 それはたぶん、ANAの「SKIP」(参照記事)も同じなんだろうなあ。まあ、あっちはQRコードやANAカードを使うという手がありますけど。

吉岡 だから、さっきの「彼氏彼女キャンペーン」なんですよ。2人でモバイルSuicaを持っていたら、2人で席を取れますからね。

神尾 その「彼氏彼女でモバイルSuica キャンペーン」は企画としてイケますよ。編集長、JR東日本に売り込みましょう! ソフトバンクモバイルの「ホワイトプラン」でも、お友達紹介は好評らしいですし。

吉岡 じゃあ、今度、取材のときに提案してみましょうか……すみません、脱線しすぎました。

PASMO販売停止の原因は?

吉岡 鉄道系ではPASMOの販売停止も大きなトピックでした(参照記事)。あれだけ読み違えるってすごいことですよね。それだけ大きなブームだったということだと思いますが。3月に相互利用が始まるまで、PASMOで何ができるのかという細かい説明がほとんどないままに、「PASMOっていうものが出るらしい、便利になるらしい」という期待値だけであれだけ盛り上がったわけで、今振り返ると驚きです。それに、「Suicaを持っていたらPASMOは要らないんだよ」ということも周知してなかった。私鉄各社は「Suicaを持っている人はPASMOを買わないだろう」と予想した結果、用意した枚数では全然足りなくなりました。

神尾 もちろん、相互利用化の理解がユーザーに広がっていなかったことも足りなくなった理由ですが、SuicaからPASMOへの“買い換え需要”も読み違えていたのかなと思いますよ。私鉄各社のクレジットカード紐付けで、既存の“Suicaエリアに住んでいないSuicaユーザー”がPASMOに買い換えることを予想しきれていなかった。

吉岡 思ったより“買い増し”も“買い替え”も多かった、だからふたを開けたら全然足りなかった、という話だったわけですよね。

神尾 生活圏は私鉄・地下鉄エリアだけど、「たまに必要だからSuicaを持っていた」という人が多かったわけですよ。そんな彼らが一斉にPASMOに買い換えることが想定されていなかったのではないでしょうか。

吉岡 ちなみに、磁気定期券からPASMO定期券への移行数は、それほど予想とかけ離れていなかったそうです。

神尾 どちらかというと、PASMO開始前にドタバタと動き出した“クレジットカード連携”の特典や加入キャンペーンで動いた層の多さが、本当の原因でしょうねえ。

吉岡 “私鉄・地下鉄エリアに住んでいる人のニーズ”と“Suicaに加えて買い増すニーズ”が予想外に多かったというところじゃないかと思います。それにしても、今年は東京以外でもFeliCaの乗車券を導入するところが増えましたよね。

神尾 2007年はIC乗車券の発表ラッシュでした。実際に始まるのは来年以降のものもありますけど、これでほぼ全国に広がったのかなと。

(→後編に続く)

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