――今回の提携の目玉として、ANAマイルとSuicaポイントの連携、そして「ANA Suicaカード」の発行がありますね。特に後者は“航空+鉄道”カードとして利便性が高そうですが、具体的にはどのような発行形態・サービスになるのでしょうか。
奥山 ANA Suicaカードについて整理しますと、これはVIEWカードの「タイプ2」という発行形態となりまして、発行元はJR東日本ではなく、三井住友カードになります(※)。機能的にはJR東日本の発行するVIEWカードとほぼ同じで、Suicaポイントも貯まりますが、ビューサンクスポイントが貯まらないなどクレジットカード側のポイントプログラムは異なります。
――提携発表の段階で発行会社について触れられませんでしたし、ユーザーから見て少し分かりにくいですね。
奥山 既存の(三井住友カード発行の)「ANAカード」に搭載されているEdyの代わりに、SuicaとVIEWカードの機能を載せたものと考えていただくと分かりやすいと思います。
――三井住友カードの発行ということは、審査基準や基本的なサービス内容は既存のANAカードに準じると考えて間違いないでしょうか。
奥山 はい。特にポイント関連は(VIEWカードと)違い、ビューサンクスポイントは付きません。
――なぜ、JR東日本ではなく三井住友カード発行になったのでしょうか?
奥山 それは詳しくお話しできないのですが、我々としてはJR東日本発行のタイプ1(一般のVIEWカード)にするかどうかも含めて、様々な検討をした結果、今回の(タイプ2による三井住友カードの発行という)結果になりました。
――ANA Suicaカードの利用時には、三井住友カードのポイントが貯まると思いますが、それは直接Suicaにチャージできるのでしょうか。
奥山 細かな運用については、今まさに検討している段階で未定です。しかし、現在のANAカードでも(三井住友カードの)ポイントをマイルに交換できますので、その部分は変わらない予定です。
――今回の提携では、ANAマイルとSuicaポイントの交換スキームを持つことで、マイルをSuica電子マネーとして使うこともできるようになります。ANAにとって、Suica電子マネーはどのような位置づけなのでしょうか。
吉田 我々の総合輸送戦略という観点から見ると、残念ながらEdyでは鉄道・バスの乗車ができない。そこで(ANAが)Suicaと提携することで、電子マネーの分野でEdyとSuicaが競合する一面は確かにあると思います。
しかし、我々のカードには今もEdy機能が内蔵されていますし、今後もANA Suicaカード以外ではEdy機能を内蔵していく予定です。EdyとSuicaのどちらを使うかは、お客様にご判断いただく部分だと考えています。
奥山 補足なのですが、ANAマイルの話になるとEdyとセットで見られることが多いのですが、「ANA=Edy」という一面的な捉え方をされるのは本意ではありません。関西を中心に、ANA VISA/マスターカードのお客様にANA PiTaPaカードを提供していますし、今後はSuicaとも連携していく。ANAのスタンスはあくまで「ANAマイレージクラブ会員の皆様の利便性向上」であって、特定のFeliCa決済に限定して取り扱うという考えではないのです。
――なるほど。ちなみにANA SuicaカードのユーザーがEdyも使いたい場合はどうなるのでしょうか。
奥山 その場合、もっとも利用しやすいのは、おサイフケータイですね。(おサイフケータイに)モバイルAMCアプリを導入していただいた上で、Edyアプリをセットし、ANA Suicaカードを登録していただく形になります。
――首都圏の鉄道会社としては、JR東日本の他にも大手私鉄が複数存在します。ANAとして同じ首都圏で複数の鉄道事業者と提携する可能性はあるのでしょうか。
奥山 (鉄道事業者との)提携を排他的に行うという考えはありません。ですから、提携相手が1つの地域で複数の鉄道会社になる可能性はあります。
ANAとしては「選ぶのはお客様」というスタンスですから、JR東日本以外の鉄道会社との提携は今後の検討課題の1つですね。
――今回のJR東日本との提携を始め、最近のANAはドラスティックにサービスの改善や拡大を行っています。2008年に向けた展望をお聞かせください。
吉田 まず、飛行機によくお乗りいただくビジネス客の皆様には、新たに投入する「プレミアムクラス」(参照記事)の快適性や、年内に全空港で完全移行する「SKiPサービス」(参照記事)による利便性を中心に訴求していきます。(東海道)新幹線よりもよいサービスになるよう、来年も競争力を強化していく。さらにビジネスでお乗りいただいたお客様が、休暇を楽しむ時にもANAを選んでいただけるように旅行・レジャーでの利用促進も図ります。
ANAにとってビジネス需要は「縦軸」であり、引き続き重要な領域ですが、(来年以降は)それに加えて個人・レジャー需要の「横軸」もしっかり獲得する。これを事業戦略の柱として、様々な形でサービスを強化していきたいと考えています。
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