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» 2007年12月25日 11時13分 UPDATE

ロサンゼルスMBA留学日記:MBA憂国論――日本は中国に負けるのか?

いずれ日本経済は中国に負けるだろう。優秀な学生が多いこともあるが、日本的経営の「閉塞感」も問題だ。このまま変化を拒み続ければ、滅亡の道を選ぶことになるかもしれない。

[新崎幸夫,Business Media 誠]

著者プロフィール:新崎幸夫

南カリフォルニア大学のMBA(ビジネススクール)在学中。映像関連の新興Webメディアに興味をもち、映画産業の本場・ロサンゼルスでメディアビジネスを学ぶ。専門分野はモバイル・ブロードバンドだが、著作権や通信行政など複数のテーマを幅広く取材する。


 MBAで勉強していると、この国の将来について思いをはせることも多い。あちこちで指摘されているとおり、いまや米国資本主義が世界で幅をきかせており、さらにその後ろから中国が「資本主義化」によって猛烈なスピードで追いすがってきている。日本のプレゼンスは日々下がる……と、ため息の1つも出る。

 記事タイトルは「日本は中国に負けるのか?」としたが、あちこちで見聞きしたことを総合すると、負けるのは“確定”している。問題は、どのくらいスコアの差を小さくできるのか、ダブルスコアで負けるのか、というぐらい状況は深刻に思える。

外資系コンサルティングファームの実態

 先日、とある外資系コンサルティングファームの人たちと話をする機会があった。このファームは、戦略系コンサルティングの中でも“業界トップ”と目されている。ここに就職できた人は、世間一般からいえば「エリート」と呼ばれる。

 昨今では学生たちの間でも人気が高まっており、新卒が8000人ほど応募してくるそうだ。その中から優秀な学生のみ選りすぐって、20〜30人を採用しているとのことだが、昨年特に目立ったのが「中国人留学生の優秀さ」だったという。同ファームの日本オフィスは20〜30人の枠のうち、5人を中学人留学生に割り当てた。理由は簡単で、「単純に人材として優れていたからだ」

 日本オフィスでの面接であるため、インタビューは日本語で行い、「中国語と日本語のバイリンガルだ」というアドバンテージはない。普通に面接して、論理的思考力であるとかコンサルに必要な能力を客観評価をしたところ、その5人の中国人留学生がほかの応募者より高い評価を得た。

 彼らはみな中国の高校で英才教育を受けており、海外留学を“規定路線”で日本に派遣されている。この留学生たちはこぞって東京大学、京都大学、あるいは各大学の医学部という難関校に合格しており、受験戦争を勝ち抜けた上で就職活動でも日本の学生たちを圧倒していることになる。

MBAでも痛感する“中国の海外進出”

 上記のエピソードからも、中国のエリートたちの“凄み”がかいまみえる。なにしろ10億人いる国家の中の上位一握りだから、本当に頭がいい。MBA留学していても分かるが、中国人学生たちは英語がしゃべれる上に数学的能力も高いから、MBA受験のカギとなるGMATというテストで極めて高得点をマークする(ちなみに平均的な米国人学生は数学力に問題を抱え、平均的日本人は英語力に問題を抱えている)。

 MBA受験を成功させるためには、基本的に各国の優秀な学生と競う必要があるが、最近のMBA受験予備校は「中国人学生にGMATで勝てると思うな」と指導しているようだ。何しろ彼らのスコアは、770点(総受験者の上位1%)に達することがザラである。

 米国で各誌の報道を見ていると、最近では中国やインドといった勢いのある国から、ビジネススクールに応募する学生が増えている。スクール側もまた、新興国のビジネスエリートたちを取り込みたいという思惑があるし、実際にGMATのスコアもよいものだから、各スクールで中国人・インド人学生比率が高まっている。それは、USC(University of Southern California )の1年生たちを見ても実感する。こうして米国経営を学んだ中国人の相当数が、将来国際企業のマネジメントの現場で活躍するのだろう。

 国全体の経済規模の拡大から考えても、中国のGDPがいずれ米国を上回ることは、もはや経済界では「常識」となっている(別記事参照)

 「GDPだけが国の発展の指標ではない」という反論もあると思うが、とはいっても中国が国際市場で注目され、莫大な資本が流れこんだとすると、相対的に日本が落ち目になるのは目に見えている。かつて日本企業が米国に進出したのと逆で、「仕事がないから、日本に進出してきた中国企業に就職しよう」という状況も発生するだろう。

世界の視線は中国にそそがれる

 懐古趣味ではないが、かつての日本には勢いがあった。電機メーカーがアグレッシブに欧米に出て行き、自動車メーカーがデトロイトの米国企業に打撃を与え、三菱地所はロックフェラー・センターを買収した。実際に、筆者が教科書として日々読んでいるビジネススクールのケースにも松下電器や日産が出てくる。授業では、日本人学生は日本についてコメントすることを求められ、米国人の日本に対する興味を満たす……それが今までの姿だった。

 これからは状況が変わるだろう。ケーススタディでは中国企業の成功事例が多くとりあげられ、中国人学生に質問が飛ぶようになるのではないか。日本は景気がいい時代に多く社員をビジネススクールに派遣していたが、最近ではそうした動きが減っているから、日本人留学生の数も減る。こうして、経営の世界で日本のプレゼンスはどんどん減っていく。

 ひょっとすると、筆者は考えすぎなのかもしれない。日本は経済大国であり、以前の原稿でも触れたとおり個々人の知的水準が高い(別記事参照)。だが、同時にどこか閉塞感があり、それでも強がって「日本には日本のよさがある」と外資系の経営術を拒否している。いまや資本主義のマーケットは世界中連結している。日本だけの“独自ルール”で戦おうとしても、そうはいかない。

 先ほどの外資系コンサルティングファームの人は、「なんだか飲み屋で話しているようなレベルだから、そういうつもりで聞いてほしいが」と断りつつ、こう日本の将来に警鐘を鳴らす。

 「私が危惧するのは……いつか歴史の教科書に、こんな記述が載るんじゃないかということだ。『かつて極東に、ニホンという国があった。その国は一時経済大国であったが、変化を拒み、変化しなければ滅亡することが分かっていながら――あえて滅亡を選んだ、奇妙な国家であった』と」

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