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» 2007年12月20日 12時32分 UPDATE

保田隆明の時事日想:Blu-rayレコーダーは意外に速く普及する?

Blu-rayレコーダーの販売が好調で、品切れになっている店舗も出ているようだ。“計算外”の品薄と見る人も多いようだが、筆者は意外に速く普及するのではないかと予想している。思い出すのはマーケティングの授業でおなじみ「イノベーター理論」である。

[保田隆明,Business Media 誠]
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著者プロフィール:保田隆明

やわらか系エコノミスト。外資系投資銀行2社で企業のM&A、企業財務戦略アドバイザリーを経たのち、起業し日本で3番目のSNSサイト「トモモト」を運営(現在は閉鎖)。その後ベンチャーキャピタル業を経て、現在はワクワク経済研究所代表として、日本のビジネスパーソンのビジネスリテラシー向上を目指し、経済、金融について柔らかく解説している。主な著書は「M&A時代 企業価値のホントの考え方」「投資事業組合とは何か」「なぜ株式投資はもうからないのか」「株式市場とM&A」「投資銀行青春白書」など。日本テレビやラジオNikkeiではビジネストレンドの番組を担当。ITmedia Anchordeskでは、IT&ネット分野の金融・経済コラムを連載中。公式サイト:http://wkwk.tv/ブログ:http://wkwk.tv/chou


 次世代DVDレコーダーであるBlu-rayレコーダーの売れ行きが好調で、品物によっては入荷待ち状態の店もあるという。次世代DVDレコーダーに関しては、Blu-rayタイプのものと、HD DVDタイプのものがあり、規格が統一されないまま商品が発売されたという意味は、かつてのベータとVHSのビデオデッキ戦争に例えられることが多い。

Blu-rayレコーダーが品薄な理由

 メーカー側は、次世代DVDレコーダーをこの冬の目玉商品と想定し、去年に比べて大幅に値下げをし、モノによっては10万円以下で購入できるものも登場した。しかし消費者は、Blu-rayとHD DVDのどちらの陣営が優勢かの見極めがつくまでは、購入しにくいだろうと家電量販店では考え、あまり積極的に次世代DVDレコーダーを買い付けなかった。その結果、現在の品薄状態につながっている様子である。

 私も、担当しているテレビ番組でこの次世代DVDについて何度か取り上げたが、Blu-rayとHD DVDのどちらがいいか、という質問になかなか明快に答えられなかった。今年は消費者がまだ手を出さないのではないかと想像していたが、蓋を開けてみると売上は好調。Blu-rayタイプの方が商品数が多いので、消費者が「次世代DVDレコーダー=Blu-rayレコーダー」と思い込み、迷わずBlu-rayタイプを購入しているのかもしれないが、それでも普及スピードは予想を上回る。

次世代DVDレコーダーをイノベーター理論に当てはめてみる

 販売好調の理由として思い当たったのが、マーケティングの授業で学ぶ「イノベーター理論(ロジャーズの普及理論)」だ。イノベーター理論とは、ある新商品が登場した際、まずは「イノベーター」と呼ばれる最先端のものが好きな人が購入した後、「アーリーアダプター」と呼ばれる比較的新しいものが好きな層が購入し、その後になってから多くの人「マジョリティ」が購入していくという流れを曲線で示したものである。イノベーターとアーリーアダプターを合計して16%、マジョリティが68%、残りは「ラガード」と呼ばれる最後に購入する、もしくは購入しない層ということになる。

 次世代DVDレコーダーは実質去年登場したばかりであり、今年の商戦で手を出すのは、イノベーター、アーリーアダプターまで、マジョリティ層に普及するのは来年以降と考えるのが普通だあろう。

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次世代DVDレコーダーの普及スピードは予想外に速いのでは?

 しかし、次世代DVDレコーダーの場合は、このロジャーズの普及曲線をセオリーどおりに当てはめると間違ってしまうと思われる。なぜなら、まだ通常のDVDレコーダーすら持っていない人も多くいるためだ。そういう人たちが「そろそろDVDレコーダーでも購入しようかな」と思って店に足を運んでみると、次世代DVDレコーダーが登場していることを知り、価格も10万円を切っているとなれば、「じゃあ、DVDレコーダーをすっ飛ばして次世代DVDレコーダーを買おうかな」、と思うわけである。

 通常のDVDレコーダーにおけるマジョリティ層がDVDレコーダーから1段飛ばして次世代DVDレコーダーを購入するとなれば、次世代DVDレコーダーについては、イノベーター理論における普及期間が通常の商品よりもぐっと短期化される可能性がある。“次世代”DVDレコーダーと呼ばれていることも、DVDレコーダーしか知らなかった人にとっては受け入れるハードルを下げる要因になるはずだ。もちろん、価格が大幅に引き下げられたことが大前提になるが、ボーナスが上がらないこの時勢では、いくら価格が下がったと言っても10万円弱は大きな買い物である。

 大学のマーケティングの授業で学んだ内容なんて普段はすっかり忘れているが、たまにこうやって現実の出来事と重ね合わせて考えてみるのも面白い。この年末年始はカレンダーの並びがいいので、長期休暇という方も多いだろう。特に旅行の予定などがないなら、たまには本棚に眠っている大学時代のテキストを引っ張り出してみるのも楽しいのではないだろうか。

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