インタビュー
» 2007年12月19日 12時03分 UPDATE

神尾寿の時事日想・特別編: ファミリーマートとドコモショップがつながる理由――ドコモ九州 (1/2)

地方都市において、おサイフケータイの普及・利用促進を強力に進めているのが、全国9つに分かれたドコモ地域会社だ。地域密着&独自路線で、いかにおサイフケータイを根付かせるか。ドコモ九州の取り組みを聞いていく。

[神尾寿,Business Media 誠]

 2004年のおサイフケータイ登場以降、この分野を力強く後押ししてきた企業がNTTドコモだ。同社は三井住友カードとともに「iD」を立ち上げ、それをFeliCaクレジットの最右翼にまで育て上げたほか、全国各地でおサイフケータイ/FeliCa関連の事例開発に協力している。

 ドコモの「おサイフケータイ推進」の取り組みというと、JR東日本や日本マクドナルドとの提携など、東京中心の“ビッグプロジェクト”のイメージが強い。しかし、それ以上にドコモの功績として光るのは、ドコモの各地域会社が行っている“地方でのおサイフケータイ/FeliCaの普及・利用促進”の活動だ。本誌で紹介した中でも、長崎バス協会の「モバイル長崎スマートカード(参照記事)」や伊予鉄道の「ICい〜カード(参照記事)」などがドコモ地域会社の後押しを受けていた。また、地方におけるiD/DCMXの普及・利用促進で、三井住友カードと連携して地道な努力を続けてきたのも各地のドコモ地域会社である。東京など都市部中心だったおサイフケータイやFeliCaのサービスを、地方に広げていく。“FeliCaの地域格差”の是正において、ドコモ地域会社の果たしている役割は大きい。

 そのようなドコモ地域会社の中で、特におサイフケータイ普及・利用促進の取り組みに熱心なのがNTTドコモ九州である。同社は九州各地でiD加盟店の拡大・利用促進キャンペーンに注力するほか、先のモバイル長崎スマートカード実現にも協力。今年6月からはDCMXクーポンサイト「naviD」を独自に立ち上げるなど、積極的な活動を行っている。

 今日の時事日想は特別編として、NTTドコモ九州 法人営業本部 ソリューション開発部長の石井達雄氏にインタビュー。九州におけるおサイフケータイの現状と、ドコモ九州の取り組み、今後の展望などについて聞いた。

ay_kyushu01.jpg NTTドコモ九州法人営業本部ソリューション開発部長の石井達雄氏

2006年は地元のiD加盟店開拓に尽力

 九州はおサイフケータイ関連の先行事例が多い土地である。先述の「モバイル長崎スマートカード」はもとより、西日本高速道路によるFeliCa決済4方式の先行導入試験(参照記事)、おサイフケータイを鍵として使うKESAKAシステムの導入マンション(参照記事)ビジネスホテル(参照記事)があるのも九州である。また、NTTドコモ九州は直接の関わりがないものの、ヤフードームのおサイフケータイ電子チケットシステム(参照記事)や、宮崎県で実施された「CHORUCA」プロジェクト(参照記事)など、注目の事例は数多い。

 「九州にはIT関連のベンチャー企業が多く、また、九州の人々は新しい技術や文化を積極的に受け入れる気風があります。九州は新しいモノ・コトに対して開放的なのです。そういった土地柄が、おサイフケータイという新しいサービスを広げる上で適しているのは確かですね」(石井氏)

 特に福岡を筆頭とする九州北部は、九州全域から人が集まり、20〜30代を中心に年々人口が増加している。自動車やハイテク産業も集まってきており、経済的・文化的な活力は地方都市の中でも随一だ。さらに自動車交通や鉄道・バスの利用傾向で見ると、九州内で移動する域内交通が全体の約9割を占める「大きなアイランド」でもある。これらはFeliCaサービスの先行事例導入や、普及・利用促進をする上で有利な要素となる。

 このような環境を背景にドコモ九州では、ドコモが全国で行うDCMXやおサイフケータイの普及・利用促進に加えて、九州独自の活動を行っている。

 「ドコモ九州の取り組みとしましては、昨年はDCMX会員獲得に注力するともともに、三井住友カードと協力してiD加盟店を増やすことに尽力しました。お客様にDCMXをお勧めする以上、地元に『使える場所』が少ないというわけにはいきませんから」(石井氏)

ay_kyushu02.jpgay_kyushu03.jpg 福岡市の海沿いにあるアウトレットモール「マリノアシティ」。福岡市中心部の「キャナルシティ」と並ぶ、福岡のおしゃれなショッピングスポットだ。マリノアシティとキャナルシティのテナントはiD加盟店になっており、ドコモ九州がDCMX用の機器や展示物を提供するなど利用促進に協力している

ay_kyushu04.jpgay_kyushu05.jpg マリノアシティには全国的に見ても珍しいiD加盟店がある。写真は「BEAMS」。この店舗では新型のiDリーダー/ライターと、ドコモ九州が用意したDCMXロゴ入りの機器を利用していた

ay_kyushu06.jpgay_kyushu07.jpgay_kyushu08.jpg 旭屋書店ではiDリーダー/ライターを見栄えよく設置するため、レジ周りに専用の設置スペースを用意する改造を施したという

ay_kyushu09.jpgay_kyushu10.jpg スターバックスもiDに対応している

ay_kyushu11.jpgay_kyushu12.jpg 女性に人気のFranc franc(フランフラン)でもiDが利用できる

 全国規模で見れば、東京のNTTドコモと三井住友カードが、大手ナショナルチェーンを中心としたiD加盟店開拓を推進してきた。それとは別に、ドコモ九州では地元企業や商店街にiD採用を働きかけ、加盟店拡大を後押しした。そして昨年後半から今年に入ってからはコンビニなどナショナルチェーンのiD導入と地元企業のiD導入の動きがうまく噛み合い、その結果、「九州というエリアで見れば、iD加盟店の数は他のFeliCa決済よりも多い状況」(石井氏)になったという。

 「お客様にとって(決済をする)身近な場所にiD加盟店を増やすことができました。そこで2007年度の目標は(iD/DCMXの)『利用促進』とし、ドコモユーザーの皆様がiD/DCMXを使いたくなるような環境作りに力を入れています」(石井氏)

 iD/DCMXの利用促進は、ドコモにとって重要なだけでなく、加盟店側の期待が大きい部分でもある。九州は全国の中でもドコモのシェアが高い地域である上、端末販売の7割以上を地元のドコモショップが占めるなど地域との密着性も高い。“ドコモからの送客”や“ドコモショップとの連携”に期待する地元のiD加盟店は多い。

地域性を生かしたキャンペーンでiD/DCMXを後押し

 ドコモ九州では、ドコモユーザーのiD/DCMX利用率を向上し、地元iD加盟店の期待にも応えるために、2007年は様々な利用促進の取り組みやキャンペーンを行った。

 「ドコモ九州として(iD/DCMX利用促進の)戦略的な取り組みと位置づけているのが、『naviD(ナビッド)』です。これはDCMXユーザー向けに地元加盟店で使えるトルカ形式のクーポン(参照記事)を配布するもので、ドコモ九州の会員制ポータルサイト『iCanDo!』の中に専用メニューを作って配布しています」(石井氏)

ay_kyushu13.jpgay_kyushu14.jpgay_kyushu15.jpg ドコモ九州が運営するnaviDでは、iD加盟店向けのトルカクーポンを配信している。naviD参加店舗はドコモ九州の媒体に無料で掲載される。写真はnaviDに参加している福岡市の天神地区にあるカフェ「ROSARIAN」。店舗にはnaviDの紹介カードがおいてあり、その場でのサイトアクセスもできるようになっていた

 naviDのビジネスモデルは、ドコモが全国で展開する会員組織「プレミアクラブ」の会員優待サービス(参照記事)に近い。naviDに参加する加盟店が原資を持つ形で、DCMXユーザー向けに割引や特典などが利用できるクーポンを提供。一方でドコモは、無料でnaviD参加店の告知やPRを行う。ドコモのDCMXユーザーはnaviDのサイトからトルカクーポンを取得すれば、それを店頭で見せるだけで様々な割引や特典を得られるというものだ。

 「割引や特典の原資は加盟店負担ですが、その代わりにドコモ九州の媒体を使って無料でPRができます。

 naviDが使うiCanDo!の登録会員数は約48万人、そのうち約6割が女性です。PV数は月間平均で1700万、ユニークユーザーは約30万人くらいですね。iCanDo!以外では、ドコモ九州の請求書同封リーフレットが約355万部、九州のドコモブランドショップ380拠点、他にもドコモ九州が発行するメールマガジンなどの媒体を我々は持っています。これらが無料で利用できるというのは(naviD)加盟店にとっても大きなメリットがあるでしょう」(石井氏)

 石井氏はさらに、これらのメディアが「ドコモ九州のお客様という、地域に根ざしたものであることが重要」だと強調する。

 「メディアの規模という点では、(テレビや新聞、ネット、雑誌など)全国規模で展開する媒体にはかないませんが、iCanDo!をはじめ我々の持つ媒体は『ドコモ九州のお客様向け』と地域性のあるものになっています。地元のiD加盟店にとって地域広告媒体としての価値があるのです」(石井氏)

ay_kyushu16.jpg ドコモ九州が行ったキャンペーンのリーフレット。「iDおトク向上計画」は今からでも参加できる

 ドコモ九州が実施した利用促進の取り組みはnaviDだけではない。今年の10月からは「DCMX iD おトク向上計画」という登録制のキャンペーンを実施している。このキャンペーンの第1弾はコンビニでのDCMX iD決済の利用に応じたドコモポイントの付与であり、第2弾はDCMX(※)の利用額5000円ごとに抽選で豪華景品のプレゼントが受けられるというものだ。「DCMX iD おトク向上計画」のキャンペーンは、ドコモ九州のDCMXユーザーが参加条件となっているが、12月半ばの段階で9000弱のエントリーがあるという。キャンペーンは来年3月末までなので、今後さらに参加は増えるだろう。

※第2弾のキャンペーンはDCMXによるiD決済だけでなく、VISA/MASTERのクレジットカードとしての利用しても参加対象として含まれる。

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