ロサンゼルスの日本アニメショップが今、悩んでいることロサンゼルスMBA留学日記

» 2007年12月17日 17時12分 公開
[新崎幸夫,Business Media 誠]

著者プロフィール:新崎幸夫

南カリフォルニア大学のMBA(ビジネススクール)在学中。映像関連の新興Webメディアに興味をもち、映画産業の本場・ロサンゼルスでメディアビジネスを学ぶ。専門分野はモバイル・ブロードバンドだが、著作権や通信行政など複数のテーマを幅広く取材する。


 日本のアニメ・ゲーム文化は今や広く海外に知られている。「世界コスプレサミット」が名古屋で開催されたといったニュースを見ていると(別記事参照)、こうしたサブカルチャーは世界を巻き込んで盛り上がりを見せているように思える。

 だがビジネスの“現場”では、まだまだ悩みも多いようだ。ロサンゼルスで関係者の声を探った。

企業の進出が足りない?

 ロサンゼルスの日本人街、リトルトーキョーでアニメショップ「Anime Jungle」を運営する塩田哲氏は、「ロサンゼルスにはそれほど企業が進出できていない」と分析する。

 同店は6年前から、ロサンゼルスで営業を開始。アニメCD/DVDやフィギュアなどのグッズ、ポスターやTシャツなどを販売している。塩田氏によれば2〜3年前に日本アニメが盛り上がりを見せ、番組が海外で放送されるようになったり、グッズの海外展開が進んだりしたが、最近ではそれも一段落し、いくつか問題が浮き上がってきたという。

 「こちらのアニメ好きな若者は、商業活動とあまり結び付いていない。多くのアニメ好きは大学のサークルなどに入って、仲間内で盛り上がっているような状況だ」。サークルの典型的な活動内容としては、メンバーの1人が日本のアニメを仕入れてきて、「勉強会をしよう」と皆で映像を視聴するといったイメージ。日本のように秋葉原というアニメ文化の中心地があり、日夜多数のイベントが繰り広げられる中でアニメ愛好家がお金を企業に落とす……という構図がない。

イベント会場でブースを出展するAnime Jungle(写真はJapan Expo 2007会場で撮影)

 日本企業がしっかり進出できていないため、海賊版が出回っているのも頭の痛い問題だ。「海賊版の製品は、正規の品物よりはるかに廉価で仕入れられている。価格の勝負になると、通常のアニメショップは太刀打ちできない」。アニメの海賊版というと、東アジアで流通している印象を受けるかもしれないが、実は米国でも状況は同じだ。

 塩田氏がもう1つ懸念しているのが、今やネット経由で日本のアニメが“無料で”視聴できてしまうこと。違法にアップロードされたコンテンツを視聴して、満足している米国のファンも多いと推測する。

 「一定の年齢層以上になると、子供の頃買いたくて買えなかったアニメを、好きなだけ買い込む。しかし今の若い子は、アニメはお金を払って手に入れるものという感覚がないのではないか」

 このままでは、海賊版や違法動画で海外ユーザーが満足するという状況になってしまう。日本企業はユーザーを教育するという観点からも、きちんと正規品を届ける必要がある。

 「昔に比べると、各メーカーが個別で動いてきたことがつながりかけている。ぜひ、日本企業に積極的に海外進出してもらいたい」

丸井グループが考える「ゴスロリ海外進出」

 ファッションの1ジャンルとして、「ゴシック・アンド・ロリータ」(ゴスロリ)というものがある。日本発のファッションだが、これに興味を示す外国人もいる。

 「マルイ」ブランドでファッションビルを展開する丸井グループが考えているのは、ゴスロリファッションの海外進出計画だ。同社もやはり、日本文化に興味を持つ米国ユーザーに、きちんと商品を届けられていないと感じている。この対策として12月1日にオープンしたのが、ゴスロリやパンクといったジャンルの服装を購入できるオンライン・ショッピングサイト「MARUIONE.JP」だ。

丸井グループはロサンゼルスのユーザーに“ゴスロリ”をアピールする(写真はJapan Expo 2007会場で撮影)

 同社クールジャパンプロジェクトチーフリーダーの石川功氏は、日本のパンクやゴスロリに興味を持ちながら、買えずに困っている米国ユーザーは相当数いるとにらむ。

 「周りの若い子に聞くと、ネットオークションで買おうとすれば、正規の製品の1.5倍ぐらいの値段が付いている。中には日本のサイトを友人に翻訳してもらい、なんとか購入につなげる米国ユーザーもいるようだ」

 MARUIONE.JPは海外向けのコンセプトだから、商品説明やサイト利用上の注意などはすべて英語で表記されている。サイト内ではポップカルチャーのファッションのみならず、伝統工芸品なども用意して、日本文化に興味を持つ海外ユーザーに広く訴求する構えだ。

 さらに同氏は「パンク、ゴスロリといったファッションはそもそもニッチな分野だから、国内だけで展開するには成長に限界がある」と話す。丸井グループとして、まだまだ実験的な要素はあるとはいえ「国際展開して、パイを拡大しなければ」という認識を持っていると説明した。

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