ミシュランガイドとは違う!?――アテにならないホテルの格付け

» 2007年11月21日 17時22分 公開
[富永ジュン,Business Media 誠]

 ホテルのグレードを示す時に頻繁に使われる「5つ星」や「3つ星」などの星等級制(スターレート)による格付け――。実はあまりアテにならないという事実を知っているだろうか。スターレートによるホテルの格付けには世界標準が存在せず、国や民間の格付け機関が独自に定めた基準に従って格付けをしているためだ。

 フランスならばフランス政府観光局、英国ならば英国政府観光庁、スコットランド観光局、ウェールズ観光局、オートモービル・アソシエーション、ロイヤル・オートモービル・クラブの5団体、中国ならば中国国家旅遊局といった具合だ。

国や格付け機関によって違うホテルのグレード

 例を挙げると、フランスでは政府がホテルの客室数と設備によって“星ナシ”から4つ星デラックスまでの6等級にホテルを分類している(4つ星デラックスは4つ星の上)。細かい部分は表を見ていただきたいが、2つ星の条件は「7室以上で湯と水が出て、40%の部屋にバス、またはシャワーがあること。従業員が外国語を1つ話せること」、4つ星デラックスの条件は「1つ星から4つ星までの条件に加えて、全室バスつき。寝室付きスイートルームがあること」となる。従業員が習得している外国語の数はかろうじて含まれているものの、そのほかのサービスや建物の新しさなどはまったく考慮されていない。

 逆に英国では共通の基準があり、1つ星が「シンプルで実用的、基本的なサービス」、2つ星が「十分な設備とサービス」、3つ星が「高水準のサービスと快適さ」、4つ星が「すべてについて優れたレベル」、5つ星が「非常に優れており高級」とサービス主体の格付けが行われている。ちなみに筆者がロンドンで宿泊した3つ星ホテルは、たしかに清潔でフロントもホスピタリティにあふれていたものの、部屋が見事なL字型でトイレ・シャワーが半畳サイズ、バスタブなし。サービスの質だけが基準なのも考えものだ。

 米国にいたっては、厳格な審査による格付けで大変権威がある米国自動車協会のダイヤモンドの数から、大定番ガイドブック「モービル・トラベル・ガイド」、機関投資家向け雑誌「Institutional Investor」誌、または1989年に設立されたばかりのアメリカン・アカデミー・オブ・ホスピタリティー・サイエンスに至るまで民間の格付け機関が乱立している。そのため単純に「5つ星ホテル」と言われただけでは、どこの機関による格付けなのかすら分からない状態だ。

 旅の印象を大きく左右するホテル選び。星の数だけに惑わされず、自分が心地よいと感じる建物の規模や設備、サービスをしっかりチェックした上で選ぶのが快適な旅への近道と言えるだろう。

フランス

星の数 格付け内容
1つ星 最低7室ある
湯と水が出る
全室の25%の部屋に独立した洗面設備がある
30人に1つのシャワー付き共同バスルームがある
トイレのない部屋10室に1つの共同トイレ(ワンフロアーに最低1カ所)がある
2つ星 1つ星の基準に加え、次の条件を満たさなければならない
全室の40%がバスまたはシャワー付きである
シャワーのない部屋の宿泊客20人に1カ所の共同バスまたはシャワーがある
各フロアーに電話ボックスがある
4階建て以上の場合、エレベーターがある
従業員が外国語を1つ話せること。客室内での朝食が可能
3つ星 1つ星と2つ星の基準に加え、次の条件を満たさなければならない
部屋数が10以上あること
全室に専用の洗面設備があること
70%の部屋がバスまたはトイレ付きであること
50%の部屋に専用トイレがあること
全室に電話があること
3階建て以上の場合、エレベーターがあること
従業員がフランス語以外の言葉を2つ話せる
4つ星 1つ星〜3つ星の基準に加え、次の条件を満たさなければならない
90%の部屋にバスまたはシャワーがある
90%の部屋に専用トイレがある
2階建て以上の場合、エレベーターがある
レストランがある
4つ星デラックス 1つ星〜4つ星の基準に加え、次の条件を満たさなければならない
全室がバス付き
サロンに作り変えられる寝室1〜2室を有するスィートルームがある

英国

星の数 格付け内容
1つ星 シンプルで実用的、基本的なサービス
2つ星 十分な設備とサービス
3つ星 高水準のサービスと快適さ
4つ星 すべてについて優れたレベル
5つ星 非常に優れており高級

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