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» 2007年11月13日 12時06分 UPDATE

「共通の敵は現金」――JR東とトヨタファイナンスが提携した理由

電子マネー「Suica」を推進する鉄道会社・JR東日本と、自動車系クレジットカード会社として「QUICPay」を推進するトヨタファイナンスが提携する。一見ライバル同士に見えるこの2社の提携には、どのような狙いがあるのだろうか?

[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 11月6日、JR東日本とトヨタファイナンスは、業務提携を発表した。内容は大きく分けて2つある。1つは、FeliCaクレジット「QUICPay」とFeliCa電子マネー「Suica」の両方が利用できる共用端末の加盟店導入を進めること、もう1つは提携クレジットカード「TOYOTA TS CUBIC VIEW CARD」(仮称)の発行だ。いずれも2008年3月から着手する。

 2010年までの3年間で、共用端末1万3000台を設置。提携カードは、初年度(2008年度)の目標として発行枚数15万枚を目指すという。

 首都圏の駅を中心に鉄道網沿いにSuica電子マネーの利用可能エリア拡大を進めてきたJR東日本と、自動車を基盤とする会社であり、名古屋圏を中心にQUICPay加盟店を開拓してきたトヨタファイナンスがなぜ手を組むのか? トヨタファイナンスに話を聞いた。

汗をかくのはトヨタファイナンス

 SuicaとQUICPayはいずれも非接触IC「FeliCa」を利用した小額決済である。そのため「JR東日本とトヨタファイナンスはライバルなのでは?」という見方もあるようだ。しかし両社ともに「(プリペイド電子マネーのSuicaと、クレジット決済の一形態であるQUICPayは)ライバルではない。共にキャッシュレス社会の実現が目的であり、共通の敵は現金」と話す。

 今回の提携はJR東からトヨタファイナンスに持ちかけたものだというが、しかし業務提携の内容をよく見ると、2つとも、実際に何かを行うのはトヨタファイナンス側であることが分かる。

 まず加盟店開拓は、「トヨタファイナンスが、QUICPayとSuicaの両方が使える加盟店を拡大する」というものだ。これまでは「QUICPayが利用できるようになります」というスタンスで行っていた加盟店開拓を、「QUICPayもSuicaも利用できるようになります」という立場で行うことになり、またエリアとしては名古屋圏が中心になる。※

※記事掲載後、トヨタファイナンスより関東エリアでも加盟店開拓を行う旨の連絡がありました。お詫びして訂正いたします。

 それでは関東のSuica利用エリアでQUICPayも使えるようになるのかというと、そういうわけではない。今回共用端末を導入して加盟店開拓を行うのはトヨタファイナンスであり、JR東はQUICPayの加盟店開拓を明言していない。

 なお、トヨタファイナンスがSuica/QUICPayの共用端末を導入するのは、これから開拓する加盟店に対してが中心となる。トヨタファイナンスは2007年春、名古屋駅を中心とするエリアの店舗に、徹底的にQUICPayの導入を行った。この結果、現在は名古屋駅近辺のほとんどの店で、QUICPayによる決済ができるようになっている(別記事参照)。これらの店舗は“QUICPayだけ使える店”“QUICPayとEdyが使える店”などさまざまだが、すでに同社がQUICPayを導入した加盟店についても、必要に応じてSuica/QUICPayの共用端末を追加していく考えだ。

 また、名古屋の“駅ナカ”への共用端末導入も難しそうだ。なぜなら名古屋駅構内はJR東海の管轄になる。JR東海は現在、Suicaとよく似たIC乗車券システムの「TOICA」(別記事参照)を導入しているが、JR東海が今後、TOICAの電子マネー事業をどういう戦略で進めていくのかは明らかになっていないからだ。

VIEWカードではあるが、FeliCaチップにはQUICPayが載る

 2008年春から発行予定の提携カード「TOYOTA TS CUBIC VIEW CARD」は、トヨタファイナンスが発行するクレジットカード「TOYOTA TS CUBIC CARD」に、JR東日本が発行するクレジットカード「VIEWカード」の機能を載せたもの、という説明がされている。しかしこれもよく見てみると、VIEWカードとしての機能はかなり限定的だ。

ay_tfjr1.jpgay_tfjr2.jpg トヨタファイナンスとJR東日本の提携カード「TOYOTA TS CUBIC VIEW CARD」(仮称)。イシュアはトヨタファイナンスだ(左)。提携を記念したオリジナルデザインのSuicaカード。TOYOTA TS CUBIC VIEW CARDに入会した会員に抽選でプレゼントするという(右)

 TOYOTA TS CUBIC VIEW CARDは、接触ICチップと、非接触ICチップ(FeliCaチップ)の両方が載ったデュアルICカードになる見込み。FeliCaチップにはQUICPay機能が載り、このカード単体ではSuica機能は使えない※。JR東日本の駅やビックカメラ店舗にあるATM「VIEW ALTTE」で手持ちのSuicaカードへチャージができること、また「当面の間」という限定付きではあるが、モバイルSuicaを年会費無料で利用できる、という2点のみが“VIEWカードらしさ”になっている。

※VIEWカードはほとんどのタイプがプラスチックカードの中にFeliCaチップを内蔵しており、Suicaカードとして利用できることが特徴になっている。

 TOYOTA TS CUBIC VIEW CARDを利用して貯まったポイントは、トヨタ販売店でクルマを買った場合のキャッシュバックや、新車の代金をクレジット払いするときにポイント還元できる「使ってバック」(別記事参照)などに利用できる。また、まだ還元率などの詳細は決まっていないが、ポイントをSuica/モバイルSuicaとしてチャージ(入金)できるようにもする予定だ。

名古屋のタクシーでSuicaが使えるようになる?

 トヨタファイナンスが期待するのは、関東エリア、特にレールサイド(=Suicaエリア)における、トヨタファイナンスの認知拡大とTS CUBIC CARDの会員獲得だ。逆に名古屋エリアでは、“Suicaとの共用”を前面に打ち出すことで、加盟店拡大を目指す。Suicaは首都圏中心に展開しているため、これまで名古屋近郊ではほとんど利用できるところがなかったが、イオングループが電子マネー「WAON」を中京・近畿エリアに拡大、Suica、ICOCA、iDにも対応した共用端末を導入した(別記事参照)こともあり、名古屋エリアでもここ1〜2カ月、Suicaが利用できる場所が急速に増えつつある。

 具体的にどこのエリアにSuica/QUICPayの共用端末を導入するかはまだ決まっていないというが、タクシー会社については重点的に開拓していくという。3年間の端末設置目標1万3000台のうち、約8000台をタクシーに導入する意向だ。「使える場所の拡大は基本的にトヨタファイナンスの会員にとってメリットとなることと考えています。それに加え、東京、名古屋、大阪はビジネスでかなり頻繁に人の行き来があります。東京で使えるSuicaが名古屋のタクシーで使えるようになることは、東京の人にとっても大きなメリットがあるはず」(トヨタファイナンス)

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