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» 2007年11月09日 13時59分 UPDATE

神尾寿の時事日想: 首都高のETC利用率、8割突破――完全キャッシュレス化の鍵を握る「首都高X」とは?

首都高速道路は11月7日、首都高速のETC利用率が、1日平均で80%を突破したと発表した。着々とETCは普及し、キャッシュレス化が進んでいると言えそうだが、最後の問題が“滅多に使わないからETCは要らない”という人をどう救済するか? である。

[神尾寿,Business Media 誠]

 首都高速道路は7日、11月6日付けでETC(自動料金収受システム)の1日あたりの利用率が80%を突破したと発表した(参照リンク)。2001年のETC一般運用開始から6年目、2005年5月に利用率50%を超えてから2年での達成となる。

 首都高速道路のETC普及率の推移を振り返ると、ターニングポイントになったのは2002年12月の利用率30%突破だ。高速道路の料金所では、利用率30%を超えると「多くの時間帯でETC利用車を見かけるようになる」(関係者)。ETC非搭載車の横でETC利用車がスムーズに料金所を通過するシーンを頻繁に見かけることが、ドライバーに対する絶好のPRになったというわけだ。特に他路線からの乗り継ぎ料金所の多い首都高速道路では、ETC利用時のスムーズさの実感は大きい。また、ETC端末の値下げや利用促進キャンペーン、ETC利用時の割引サービスが増えてきたことと相まって、急速な普及が進んだ。

完全キャッシュレスの秘密兵器!? 「首都高X」

 ETCのようなサービスの場合、利用率の大半は全体ユーザーのうち20〜30%の多頻度利用者が占める。そのためETC端末の普及率が5割程度を越えれば、“ほぼ全ての利用がETC”となるわけだが、さらに利用率を上昇させ、“全ての利用がETC”とするには、高速道路の利用頻度が低く「ETCは不要」と考える人たちをどのようにして取り込むかがポイントになる。

 特に首都高速道路では、近距離利用促進と収益性向上のため「距離別料金」制度の導入を急いでいる(別記事)。この新料金制度では、現金支払いは上限金額である1200円(現在700円)が常に課金され、短距離料金や様々な割引サービスが受けられない。そのため利用者に新料金制度の割高感を強く持たれないためには、ETCの利用率をさらにあげる必要がある。また、ETC利用が100%に近づけば、料金所の維持コスト削減にもつながる。

 しかし、首都高速道路利用者のうち「数%は年に1回のみの利用者」(首都高速道路)であり、その人たちにETC端末の購入とETCカードの所有を促すのは難しい。

 そこで首都高速道路では、現在のETCとは異なる、低頻度利用者向けの「ETC未搭載車に距離別料金を適用するためのシステム「首都高X」を開発中だ(参照リンク)。これは首都高速道路のみで利用できるシステムで、プリペイド・匿名の電子マネー方式になり、簡易型の端末をクルマのシガーソケットに接続して使う形が考えられている。首都高速道路では2007年度に実証実験をし、2008年秋には運用開始したい考えだ。

ay_x.jpg 「首都高X通信器」の第1号試作機。重さは約65グラム

 距離別料金制を前にETC移行に力を入れる首都高速道路では特に顕著だが、他の高速道路会社を見てもETCの利用率は年々高くなってきている。全国平均では、1日あたり利用率70.6%、利用台数は約541万台である(2007年11月1日時点)。首都高Xのように、ETCを補完する低頻度利用者向けの機器が普及すれば、高速道路のキャッシュレス化は仕上げの段階に入るだろう。

 ETC利用率が100%に近づくことは、料金所渋滞の緩和や、それによる環境改善効果の拡大につながり、ドライバーの利便性向上以外にも様々なメリットがある。また、ETCによるキャッシュレス化は、料金プランやサービスを拡充することで高速道路というインフラをより柔軟に利用者に提供し、顧客満足度を上げながら高速道路会社の関連ビジネス拡大や活性化につなげる"下地"にもなる。首都高速道路の距離別料金制導入でも、ETC利用者はに限定すれば、限額を事実上の現状維持にしながら、高速道路の利用活性化によって収益力を上げる料金や割引プランの組み方はあるはずだ。

 ETC利用率増加とキャッシュレス化の進展は、料金制度やサービスで様々なアイディアを具現化する上で強い追い風になる。ETCシステムは、高速道路の上に覆い被さった“サービスのインフラ”であり、様々なビジネスモデルにおける最良のツールになり得るのだ。各高速道路会社が、この状況を生かし切れるか。サービス作りの手腕とセンスが問われるところだろう。

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