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» 2007年10月22日 09時40分 UPDATE

藤田正美の時事日想:1カ月で10ドル上昇――原油高騰が止まらない3つの理由

原油相場が高騰し、日本でもガソリンを筆頭にさまざまな物の値上がりが続いている。2006年あたりから原油は価格の急上昇と乱高下を繰り返し、不安定かつ高めの状態にあるが、この原因となっているのは、供給側・需要側それぞれの構造的な問題だ。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。 東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」


 原油相場が高騰している。NYMEX(ニューヨーク商品取引所)の基準原油であるWTIは、「瞬間風速」とはいえ、先週には1バレル90ドルを突破した。約1カ月で10ドル上昇するというのは異常である。このまま上昇を続ける可能性は大きくないとはいえ、基本的に原油相場が不安定かつ高いという状況に変化はなさそうだ。

 現在の価格はもちろん過去最高ではあるが、現在の貨幣価値で過去の価格を換算すると、1979年のイラン革命のときには、ほぼ90ドルに達していたという。このときは1973年の第4次中東戦争(ヨム・キプール戦争あるいは10月戦争)で原油価格が大幅に値上がりしたところにさらに上乗せされたため、急激に上昇した。現在価格で言えば90ドルだが、その当時の貨幣価値では30ドル台の後半である。(参照リンク、PDF)

なぜ原油価格は不安定なのか

 昨年あたりからの価格急上昇と乱高下には、いくつかの理由がある。1つは投機資金という攪乱要因だ。ヘッジファンドなどの投機資金が原油取引市場に入り込み、その結果、実需による価格変動をはるかに上回る価格変動が起きている。昨年夏、原油相場は80ドル近くまで迫ったが、需要期である冬場にかけて相場は60ドルを切るぐらいまで下降した。金融市場は現在、米国のサブプライムローン問題で揺れている。金融市場から逃げ出してきた資金が原油取引に流れ込んできてもまったくおかしくはない。実際、今年の夏以降の原油相場が急上昇しているのは、8月初めにサブプライムローン問題が急浮上したのとほぼ軌を一にしている。

 さらにイラク北部で分離独立を求めるクルド人を攻撃するために、トルコ議会がイラクへの越境攻撃を認めたというのも、中等産油地域を不安定にするものとされた。もちろんこうした不安定さは石油問題にはつきもので、その意味では石油は決して安定した地域の下に眠っているわけではないという石油独特の構造がある。BP(英国石油)の「エネルギーレビュー2007」によれば、確認埋蔵量でみると中東地域が61.5%を占める。あと比較的多いのがカザフスタンなど中央アジア、そしてナイジェリアなどアフリカである(参照リンク、PDF)。いま世界が原子力ブームになっているのには、燃料であるウランを産出するのが、オーストラリアやカナダなど政治的に安定した国であるという事情もあるのだ。

中国とインドの需要が急増

 一方、需要側で見ると、中国とインドという世界の人口の3分の1をもつ国が経済的に急成長していることが大きい。2003年の数字だが、人口一人当たりどれぐらいのエネルギーを消費しているかという数字を石油換算した統計がある。それによると、米国が年間7.8トン、日本が4.0トン、中国は1.1トン、そしてインドは0.5トンだ。中国やインドは毎年2桁に近い勢いで経済成長しており、そしてエネルギー消費量はそれよりも大きく伸びている。中国が人口1人当たりで日本のレベルに達するのに、おそらく15年ほどしかかかるまい。たとえば自動車だけ見ても、現在は中国の自動車販売台数は年間300万台程度だが、2025年には米国(年間1700万台)を抜くとGMやフォードは見ているという参照リンク1参照リンク2)。

天然ガス版OPECが登場する?

 さらに、価格面では原油の価格をコントロールするOPEC(石油輸出国機構)のような組織を天然ガスでもつくろうとする動きがある。これはロシアのプーチン大統領が言い出していることで、イランなどにその構想を持ちかけているといわれている。もしこうした価格・生産カルテルが天然ガスでもできると、需要国ではコストが上昇することはあっても、低下することはなくなる。

 日本はとくにエネルギーの面では脆弱な国だ。燃料電池車や水素自動車などのガソリンを使わない車を本気で実用化しなければならない日は、すぐそこまで近づいている。

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