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» 2007年10月18日 08時55分 UPDATE

保田隆明の時事日想:中国の繁栄は本物? バブル?――日本の凋落だけは確実らしい

先日、外資系金融機関で働いていたときのシンガポール人の同期に再会した。欧米企業のアジア戦略を担当し、副業で上海にワインバーを開いた彼と話して感じたのは、中国の想像を超える繁栄ぶり、そして日本の“凋落”だった。

[保田隆明,Business Media 誠]

 先日、外資系金融機関で働いていたときの同期と久しぶりに再会した。彼はシンガポール人で勤務地は香港オフィス、私は東京オフィスだったのだが、ニューヨークでの1カ月間の研修期間に一緒に住んでいたという関係である。彼は外資系金融機関を退職した後、ハーバードMBAを取得し、卒業後上海に移り、GEを経て、今は欧州企業のグローバル戦略部で勤務している。

上海にもワインブームが到来?

 さて、そんな彼が上海にワインバーをオープンした。日本にもワインブームがあったように、上海ではこれから盛り上がりを見せるという読みらしい。15ドルから上は数千ドルのものまで取り揃えているということで、日本のワインショップで売られているものと値段はあまり変わらない印象である。実際、顧客ターゲット層は海外からの駐在者、あるいは上海に住む中国人の富裕層であるとのことだった。

 オープンして間もないそのワインバーは、早速上海のオシャレなお店トップ10にランクインされるなど、非常に順調な様子。2店目の出店契約もちょうど終えたところと景気がよさそうな雰囲気である。

欧州企業が本社機能を上海に?

 彼の昼間の本業は、欧州企業でアジア戦略を考える部署に勤めている。その企業では、本社機能を上海に移そうかという話が出るぐらい、今後は中国ビジネスを重視しているそうだ。欧米にある事業では、あまり高い成長率を望むことはできない。しかし、中国には今後新規事業が山ほどあり、しかも2けた成長は間違いなし。今後の全社的成長は中国にかかっていると言っても過言ではなく、実際に上海に本社を移すかどうかは別として、それほど中国を重視しているということだ。

ジャパンパッシングの現実

 今回彼は、あるカンファレンスのために3年ぶりに来日したのだが、今の企業に移ってからは初めての日本出張である。「もっと日本出張を入れなよ」という私に、「来たいのは山々だけど、ビジネスの話も投資家もみんな直接上海にやってくる。東京で何かが行われることがほとんどないので、なかなか厳しいかも」と話していた。しかも、「上海は空港からダウンタウンまでリニアモーターカーですぐだから、海外から訪問しやすい環境にある」とも話していた。成田と都内の遠さ、不便さを日々痛感する身としては、経済の成長率のみならず、インフラ面でも日本は中国に脅威を感じなくてはいけなくなったことに大いに落ち込んでしまった。

日本の外貨準備高の運用の下手さを指摘される

 そして話は中国の株式市場へ移る。「バブルじゃない?」と聞く私に、「バブルだとは思うけど、次々に投資マネーがやってくるから仕方ないよね。政府はオリンピックまでは絶対に市場をクラッシュさせることはないから、何かあれば手を打つはずだろう」と答える。「ふ〜ん」と半ば懐疑的な目を向けると、「中国は今や、外貨準備高では世界一だよ。しかも毎年すごい勢いで増えていて、その運用に関しては非常に戦略的に考えているし」と続ける彼。中国の外貨準備高が日本を抜いて世界一になったというニュースは日本でも結構大きく取り上げられていたが、やはり中国でも大きな話題になったらしい。

 「日本の外貨準備高はいくら?」「約1兆ドル」「で、どうやって運用しているの?」「えっと……。ほぼ全額米国債かな……」私がバツ悪そうにそう答えると、彼は苦笑いしながら「アメリカの繁栄は日本のおかげだ」と答えた。そして、「シンガポールですら、外貨準備高をうまく運用しているのに、日本はそんな状態?なぜ運用しないの?」と尋ねた。日本は今後の成長のためには金融資産をキチンと運用しないといけないということは常日頃思っていることではあるが、中国に住む友人に指摘されるとは――。

日本は“買い物に来る場所”

 先週の日経新聞に「アジアから日本にやってくる訪問客の第1の目的は買い物となった」という記事があったので、これについても話題を振ってみた。ヨーロッパのブランド物に関しては引き続き香港や中国で買うが、日本に買い物にやってくるのは日本ブランドのものを購入するためだという。特に若い人たちの間では原宿が人気とのこと。そして、「あ、そういえば、ユニクロがTシャツの自販機を作ったんでしょ?」と彼は言う。何のことかと思っていたら、原宿に出店したTシャツ専門店のことであった。こういう日本のファッション情報は早い。

著作権の解決は程遠いか

 食事をしていた店では、あるアメリカの映画が上映されていた。「この後こういうシーンが流れるよね」なんて二人で話していたら、「日本でDVDを借りるのってどれぐらいの値段?」「3ドル」「上海ならそれでDVDを3本買えるよ」「それって、偽物でしょ?」「だって、偽物も本物もないんだから。パッケージはリアルだし、多言語の字幕付きだよ」というやりとりになった。海外で教育を受けて、著作権問題がいかに大きな問題かは当然分かっている彼が、「だって仕方ないじゃん」というところに、今後コンテンツ産業において、中国の影響がいかに脅威になるか、それを垣間見た気がした。

 友人は上海に住み中国人の顔をしているが、中身はシンガポール人で、教育はカナダと米国で受けている。中国を内部と外部の両方の視点で見ることができる彼との会話の後、タクシーの中で「中国はやはりバブルなのだろうか、あるいは繁栄は本物だろうか」という思いが私の頭の中をグルグルと駆け巡った。久しぶりの再会の喜びの余韻に浸ると同時に、日本の凋落の可能性に対しての危機意識が新たになるという何とも言えない一夜であった。

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