留学で感じる日本と韓国の特徴、そして学ぶべき「絆」ロサンゼルスMBA留学日記

» 2007年09月19日 18時17分 公開
[新崎幸夫,Business Media 誠]

著者プロフィール:新崎幸夫

南カリフォルニア大学のMBA(ビジネススクール)在学中。映像関連の新興Webメディアに興味をもち、映画産業の本場・ロサンゼルスでメディアビジネスを学ぶ。専門分野はモバイル・ブロードバンドだが、著作権や通信行政など複数のテーマを幅広く取材する。


 さまざまな国から留学生がやってくるMBA。留学生活を送っていると、“お国柄”というか、各国の生徒の特徴を面白く感じることが多い。米国人のおおらかで社交性ある性格や、インド人や中国人の押しの強さなど、感心させられることは多い。「韓国人」に焦点を当ててみよう。あくまで筆者の体験した範囲内での話だが、日本人とは異なる韓国人ならではの気質があると思うのだ。

 まず、日本と韓国に共通する特徴がいくつかあるので、それを指摘しておこう。1つには「語学力のなさ」が挙げられる。基本的にMBAに留学する生徒は英語が流暢なはずだが、やはり個人差はある(5月14日の記事参照)。留学生の中でも語学力が比較的高いのはインド人と中国人で、彼らのGMAT(英語で行われるテスト)のスコアは、米国人以上なことも珍しくない。一方で、日本や韓国の学生は比較的リスニングを苦手とする者が多い。

 「典型的タテ社会」という特徴も似ている。日本では、企業文化にもよるだろうが、一般的に上司が偉い。韓国ではこれがさらに進んで、「年上が無条件に偉く」、年配の人間にはとにかく敬わなければならないという。たった2歳、年が違うだけでも、彼らの間では大問題である。「2歳年上の方が圧倒的に偉いに決まっている」と、筆者の友人は真顔で話す。

 韓国で外資系戦略コンサルティングをしていた友人によると「上司の勧めたソジュ(焼酎)は、絶対飲まなければならない」。一方で、中国で外資系戦略コンサルティングをしている友人に聞いたところ、「上司がタバコを買いに行く時に『何か買ってきてほしいものない?』と僕に聞いていた」という。筆者の知る限られたケース内の話ではあるが、中国よりも韓国の方が上下関係に厳しいのかもしれない。

 また日本と韓国に特徴的なこととして、「企業派遣制度」がある。米国では、MBAを取りたいという社員に対し、企業が金銭的な支援をすることなど、まずあり得ない。そんなことをしたら、MBAを取ったらすぐに会社を辞めて、別の職場に転職するだろう。ヨーロッパでも状況は同じ。幹部候補生を社費で米国留学させて、帰国後に昇進させるというのは、日本や韓国ならではの企業文化と言えそうだ。

 これらの特徴、および韓国人のメンタリティがミックスされると、どんなことになるのか?

独自のコミュニティを作り上げる韓国人

 MBAの学生の中でも、韓国人は独特のコミュニティを作り上げる傾向が強い。彼らは英語がそれほど得意ではないし、企業派遣で最終的に本国に戻ることが前提にあるため、米国社会に溶け込む必要性に乏しいのかもしれない。仲間内で固まって、「絆」を作り上げるケースが多い。そのコミュニティの中でも、やはり年上の学生が絶対的に偉い。

 授業中でも、積極的に発言しない韓国人が多い。対照的に中国人は、少々発音が下手でも、極めて堂々と発言を行う。ちなみに日本人は、英語が下手でも、健気にコメントをする傾向があるようだ。

 一度、ちょっとしたトラブルがあった。MBAではしばしば、チームを組んで課題に取り組む。あるとき筆者は、韓国人を含め5人ぐらいのチームを組んで資料作成に取り組んでいた。しかし、ある韓国人の生徒が、なかなかやる気を見せない。筆者はその韓国人に「もうちょっと気合の入ったパワーポイントを作ってくれないか?」と言った。その韓国人の年齢は30歳過ぎ、ちなみに筆者はまだ20代だ。

 それからしばらくして、その韓国人と飲む機会があった。その時、彼から「注意」を受けたのだ。

 「お前は、もっと年上を敬わないといけないよ。俺が聞いたところでは、自分よりずっと年上の学生を敬わずにいるケースがあったと聞く。留学生活をどう過ごすかというのは、人それぞれなんだ。みんな考えがあってやっているのだから、事情を考えないといけない」

 さらに、同席していた韓国人の同級生はこう続けた。

 「お前が年上を敬わないようであれば、その話は韓国人のコミュニティに伝わる。そうすると、俺としても、お前と仲良くできなくなるよ。逆にお前が年上を立てるようなら、『あいつはとてもいい奴だ』という情報が伝わる。そうすると、みんなお前をかわいい弟分だと認識するようになるんだ」

 2人ともアルコールが入っていたとはいえ、一面の真実なのだろう。そんなものか、と大いに感心させられたエピソードだった。文化的差異を、しみじみ感じさせられた。

 韓国人の美徳というか、「いいなあ」と筆者が感じる特徴もある。彼らは日本人以上に「情」があるというか、愛情深いところがある。また日本文化および日本のテレビ番組を結構知っているから、「キムラタクヤ」がどうだとか、「ホクトシンケン」がどうだとか、妙な話題で盛り上がることも多い。また筆者も、最も好きな映画の1つが韓国の『猟奇的な彼女』なものだから、しばしば韓国文化の話題で楽しませてもらっている。先日も仲良くしている韓国人の友達と“Sushi”を食べにいった。

 前述の“やる気がない”学生も、韓国の超一流企業からの派遣で、職場では1日16時間のペースでバリバリ働いていたのだというから、人は分からないものだ。国民性の違いを身近に感じながら互いに理解を深める――日本にいてはなかなかできない、こうした体験ができるのも、MBA留学ならではだなと感じている。

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