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» 2007年09月12日 20時50分 UPDATE

ロサンゼルスMBA留学日記:サブプライムローン問題がMBAの学生たちを悩ませる事情

サブプライムローン問題がきっかけで世界中の金融市場が混乱した。当の米国では空前の好景気が収束する恐れが出てきている。金余り現象で羽振りが良かった投資銀行やファンドは今後どうなるのか? MBAの学生にとって、これは実に重大な関心事なのだ。

[新崎幸夫,Business Media 誠]

著者プロフィール:新崎幸夫

南カリフォルニア大学のMBA(ビジネススクール)在学中。映像関連の新興Webメディアに興味をもち、映画産業の本場・ロサンゼルスでメディアビジネスを学ぶ。専門分野はモバイル・ブロードバンドだが、著作権や通信行政など複数のテーマを幅広く取材する。


 米国の低所得者向けの住宅融資「サブプライムローン」問題に端を発し、世界中の金融市場で株価が暴落した8月(9月3日の記事参照)。今、MBAの学生にとって気になるのは、「ファンドバブル」「LBOバブル」が弾けるのではないか、ということ。市場の冷え込みや、投資銀行、ファンドの動向は、学生たちの卒業後の進路にかかわってくるからだ。

金余り現象で投資銀行とファンドは空前の好景気

 サブプライムローンとは比較的信用の低い借り手を対象にしたリスキーな住宅ローンである。それが焦げ付いてしまい、企業が損失もしくは破たんし、市場全体への信用収縮(これをクレジットクランチという)につながるのではと懸念された/されている――ざっくり言えば、これがサブプライムローン問題だ。

 きっかけは住宅ローンだが、本質的な問題は市場にお金が余っていた状態(リクイディティ=流動性が豊富にある状態)が変化するかどうかという点だ。高リスク高利回りの債券に投資することが必要以上に「危険」と認識されると、お金が枯渇し、市場全体が停滞してしまう(8月27日の記事参照)

 米国は日本とは異なり、ジャンクボンド(高リスク高利回り債券)市場なども発達していて、高リスクの投資をいとわない種類のお金がふんだんにある。それが金融セクターをうるおす原因となり、ひいては米国の好景気の一因となっていた。だから、リスク回避のためにお金を引き上げる人が増え、この状況が変化すると社会としても少々まずい、といった事情がある。

 このような状況で気になるのは、投資銀行やファンドの動向だ。ファンドはこれまで、市場の圧倒的なリクイディティを背景に、空前の好景気を享受していた。個人的には、米Blackstoneという大手PEファンド(プライベートエクイティファンド)※が上場した6月あたりが“ファンド全盛期”だったという気がする。お金が余っているから、ファンド自体も「次の投資案件はどこだ」となる。企業買収の入札では、ファンドと普通の事業会社の入札金額には雲泥の差があり、ファンドの入札額が圧倒的に高かったという。

※PEファンド……未公開の株式を取得して株式公開したり事業会社などへ売却することにより、利益を獲得することを目的にしたファンド。

 LBO(レバレッジド・バイ・アウト)も花盛りだった。LBOとは文字通り、大量の借金をして(レバレッジを効かせて)買収を行うということ。借金をすると金利支払いが大変だから、倒産のリスクが高まる。どれだけレバレッジを効かせるかにもよるとはいえ、そんな「危ない橋を渡る」買収が大人気だったのも、ひとえに尽きることのないリクイディティ=金余りの状況があったからだ。

 だが、景気は徐々に失速してきた印象を受ける。ウォールストリートの報道の傾向を見ても、また投資銀行の関係者に聞いた感触でも、こうした見方をしている人が多いようだ。景気の低迷は、ファンドすなわち「ハゲタカ」たちの失速を意味する。

MBAの学生に人気就職先のファンド

 MBAの学生にとって、PEファンドなどは人気の就職先だ。理由の1つは、破格の給料をもらえるから。MBAを卒業した20代後半の学生に、数千万円レベルの給料を支払う。実際に給料明細を見たわけではないが給料のいい職業として知られる投資銀行で、MBA卒に支払われる給料は約2000万円かそれ以上と聞く。そしてPEファンドの給料は、その投資銀行を上回るという。

 一流のファンドでマネージャークラスとなれば、年収1億円以上を手にすることになる。ファンドは熾烈な競争が展開され、派手にお金が乱れ飛び、典型的なウォールストリートという感じがする。だが景気が悪くなれば、ファンドや投資銀行の仕事は霧散する。そうなると、彼らは非情なまでの首キリを敢行するだろう。当然ながら、MBAを卒業したばかりの学生が金融業界に就職することも、難しくなるのだ。

 MBAの学生は、卒業と好景気のタイミングが合えば金融業界に進みやすく、そうでなければ就職難に陥るという運命にある。食事は毎日シェフに作ってもらい、プライベートジェットで移動する――そんなウォールストリートの勝ち組への道を断念しなければならない学生も、景気次第では今後出てくるのかもしれない。

 サブプライム問題が不況を誘発すれば、当然ながら社会全体にとっても良くないことだ。誰もが今後の市場を注意して見守るが、MBAの学生は自身の就職を思いながらさらに注意して見守るといったところだろうか。

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