携帯向け地図市場に、黒船Googleがやってきた神尾寿の時事日想:

» 2007年08月22日 08時53分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 「地図師があまりに正確な地図を描くと、地図は街と同じ大きさになってしまう」

 古くから伝わる西洋のことわざだが、技術の進歩はこのジレンマを超えた。地図のデジタル化と検索技術の向上、膨大な容量を持つサーバーにインターネット経由でアクセスすることで、地図は紙という記録メディアの限界に縛られなくなった。“街と同じ大きさのデジタル地図”は、すでに現実のものになりはじめている。

Google参入で競争激化する“モバイル地図サービス”

 サーバーの中にある“巨大なデジタル地図”にアクセスする手段も、PCから携帯電話へ急速に広がってきた。携帯電話のデータ通信速度の向上とGPS搭載が進んだことが追い風になり、モバイル向けの地図・ナビゲーションサービスは、今やモバイルコンテンツ市場の成長株の1つになっている。

 この分野では、ナビタイム、インクリメントP、ゼンリンデータコムの3社を中心に競争が繰り広げられており、KDDIと協業するナビタイムが“一歩リード”という状況だった(2月13日の記事参照)。ここに昨日、グーグルがドコモ端末向けiアプリ「モバイルGoogleマップ」を公開。この分野に“黒船”として乗り込んできた(8月21日の記事参照)

モバイルGoogleマップ

 さっそく筆者もダウンロードして試してみたが、モバイルGoogleマップの完成度は予想以上に高い。GPS連携やリアルタイムナビゲーション機能こそないものの、見やすい地図と、拡大・縮小・画面スクロールが直感的にできるUIのできばえは特筆すべきものがある。また、Google譲りの検索機能を有しており、キーワード検索の使い勝手はすこぶるよい。住所や施設名はもちろん、地域+ジャンルや、通称名での検索でも、ほぼ“ずばり”で対象を見つけ出してくれる。

 また筆者が利用したN904iがHSDPAとVGA液晶対応だったこともあり、地図操作の体感速度もサクサクと小気味よかった。地図スクロールがスムーズなのはもちろん、航空写真モードの表示もストレスなく行える。今後、ドコモの主力ラインアップはHSDPA+VGA液晶に移行するが、そうなればモバイルGoogleマップはより快適に動作するようになるだろう。

 モバイルGoogleマップは、一部の機能やサービス面で、先行する他の地図・GPSナビゲーションサービスに及ばない部分がある。しかし、地図の操作や検索、体感速度の速さといったUIの部分は非常に優れている。筆者は今回のiアプリ版モバイルGoogleマップについて、iPhone向けのGoogleマップに次いで使いやすい地図サービスと評価している。これだけ完成度の高い地図サービスが、無料で、“いつでも・どこでも”使える。このGoogleショックは小さくない。

 Googleがモバイル向け地図サービスに本格参入にしたことで、この分野の競争が激化するのは必至だ。ナビタイムやインクリメントP、ゼンリンデータコムが、Googleという黒船にどう対抗するのか。各社のサービスやビジネスモデルがどのように変わっていくか、今後の携帯電話向け地図・ナビゲーションサービスの動向は注目である。

関連キーワード

Google | Google Maps | GPS | 地図 | 携帯からの利用


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.