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» 2007年07月30日 00時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:個人投資家を狼狽させる「巨額マネー」

米国の株価が大幅に下落した。暴落要因の1つは、住宅ローンの焦げ付きだ。米国経済は難しい局面を迎えているが、どのような施策に打って出るのか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。 東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」


 米国の株価が大幅に下落した。NYダウは一時450ドル下げ、終値では2月の世界同時株安以来今年2番目の下げとなった。つられて日本の株価も、7月27日には日経平均株価が一時500円を超える下げ幅となった。当然、週明けからどうなるか、そこに興味が集中している。僕は「たいしたことはない」と思っているが、この見方が大間違いだということが実証されてしまうかもしれない。

 米国の株価がなぜいま下げているのか。最近はテレビのニュースでも「サブプライムローン」という言葉を耳にするようになった。要するに、所得の低い人向けに、住宅融資の基準をゆるめてその分金利を高くして貸すローンのことである(4月4日の記事参照)

 どうして米国の金融機関は、本来なら貸せないような人々にも住宅ローンを貸し込んだのか。2つ理由があると思う。

 1つは貸し手側の事情である。お金が余っている中で、ヘッジファンドなどは資金の運用先を物色している。ヘッジファンドの数は急速な勢いで増えているため、資金を集めるためにも、そして運用先を確保するためにも競争が激しい。この結果、中には危険な運用先にも手を出してしまうところが生まれても不思議はない。

 2つ目の理由は、バブル期後半の特有の真理だと思う。住宅価格の値上がりが続いていて、それが鈍ることはあっても落ちることはないという金融機関側の心理だ。だから住宅が担保になっていれば大丈夫、所得が多少低くても景気がよければやがて収入が上がるだろうし、融資も返済してもらえると思い込むようになる。

 だから実際には定期的な収入がないのに、あたかもそういった収入があるように装わせて(借りる人が装うのではなく、金融会社の営業マンがそうした書類を作ってしまう)、貸し付ける。それでも住宅価格が値上がりしていれば何とか回るかもしれないが、需要が落ち込んできて値下がりを始めたらひとたまりもない。

 そういう背景から、住宅ローンの返済不履行が続出しているというのがサブプライムローン問題だ。この問題自体は年初からたびたび指摘されてきているが、現在のところFRB(連邦準備理事会)は、それほどの危機感を持っていないように見える。

 バーナンキ議長は、7月の議会証言でサブプライムローンの焦げ付きが500億〜1000億ドルに達するとの見通しを示した。ローンの延滞や担保物件の差し押さえが急増しているため、こうしたローンを有利な運用先として組み入れていたヘッジファンドの損失が拡大しているという。ただこうしたサブプライムの問題が、現時点では他の部門に打撃を与えていないとも証言して、景気を大幅に悪化させることにはつながらないとしている。従って景気の先行きを心配するよりも、むしろ引き続き物価動向を注目していると述べ、インフレ抑制に明確な姿勢を示した。

 ただ住宅市場の低迷は、米国の場合、消費に直結する。住宅所有者は住宅価格が値上がりすると値上がりした部分を担保に融資を受けることが可能になる。それを消費に回すという構造が何年も続いてきた。そのため住宅価格が値下がりすると、それらの新しい融資を借りられないばかりでなく、過去に借りた融資の返済を迫られることにもなるからだ。これによる成長率の影響は1ポイントぐらいとされていた。

 実際、米国の成長率は、今年2%台前半とFRBは予想しており、1年前に3%台とされていた見通しと比べると約1ポイント落ちている。そうした状況もあって、FRBは現在のところ金利を据え置いているわけだが、もしサブプライムローンの影響が大きく出始めると、金利を緩めざるをえない状況に追い込まれて、インフレが息を吹き返す恐れもある。その場合、バーナンキ議長は難しい選択を迫られるかもしれない。

 それにしてもヘッジファンドやプライベートエクイティといった巨額の資金が、いま世界市場をかき乱す要因となっていることは事実。それらのファンドがどう動くかを予想して株価が動くというような状況になっているだけに、ちょっとした思惑で株式市場や為替市場が大きく変動する。一般の投資家は、それに惑わされて右往左往しないほうが賢明だ。

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