インタビュー
» 2007年07月26日 22時25分 UPDATE

手数料競争の敗北を認めた松井証券、次なる“実験”とは

市場シェアが低下している松井証券は、手数料競争に出遅れたことが要因だと分析する。手数料は据え置き、他社よりもいち早く新サービスと商品を提供していくという。先行者メリットを狙う同社だが、巻き返すことができるのか?

[土肥義則,Business Media 誠]

 松井証券の市場シェアが低下している。個人株式委託売買代金のシェアを見ると、2004年の第1四半期には15%あったが、2007年3月末には9%まで低迷した。売買代金のシェアトップはSBIイー・トレード証券、次いで楽天証券で、同社は3位に位置している。だが、あるネット証券幹部は「松井証券のシェアは、2008年3月末に4位に落ちるかもしれない」と予測する。

 6月には「三菱UFJフィナンシャルグループが松井証券の発行済み株式総数の15%以上取得」という報道があった(6月27日の記事参照)。これまで急速に伸ばし続けた口座数は減速、さらにネットでの取引が多い新興市場の低迷などから厳しい環境が続いている。2007年3月期は、経常利益が対前年同期比で−38.7%、最終利益が−34.9%(同)と大幅な減益となった。「ネット証券の競争は激しい。三菱UFJの資本を受け入れるメリットは大きいのではないか」(アナリスト)と分析する。

 三菱UFJグループの傘下に入ることで、生き残りの道を選ぶのか。それとも新たな経営戦略を打ち出すのか。同社は1998年にいち早くネット証券に転身し、「風雲児」と呼ばれたが、今は大きな転換期かもしれない。今後の戦略などを、IR室長兼マーケティング担当役員の和里田聰氏に迫った。

利益率はシェアほどの差はない

yd_matui.jpg IR室長兼マーケティング担当役員の和里田聰氏

 手数料の推移を見ると2002年度から2006年度にかけて同社は、大手ネット証券の中で最も引き下げている。しかし同社の市場シェアは上がらず、手数料の引き下げに出遅れたことが要因だと、松井道夫社長は経営判断のミスを認めた(5月1日の記事参照)。和里田氏も手数料戦略の失敗を認めるが、他のネット証券と比較して収益に大きな差はないという。「業界トップのSBIイー・トレード証券の経常利益は245億円だが、同社は227億円でシェアほどの差はない。高い利益率は確保している」と自負する。

 「手数料を引き下げても、収益は上がらないことが分かった。今後は株式以外で利益を上げなければならない」との方針を示した。他社にはないサービスと商品を提供していく構えだ。金融商品は差別化を図るのが難しいが、他社より早く新サービスを導入していくという。「(手数料など)価格は高いが、新しいサービスを提供する。そうしたブランドイメージを構築したい」。今年の秋をめどにPTS(私設取引システム:proprietary trading system)をスタートする予定。日中での取引が可能で、同一銘柄を同日に何度でも売買ができるのが特徴だ。

 先行者メリットを狙っている同社だが、どこまで新しい商品を提供できるかがカギとなるだろう。PTSを今秋にスタートする予定だが、すでにカブドットコム証券は昨年から始めている(7月4日の記事参照)。また、SBIホールディングスと米Goldman Sachs Groupが折半出資するSBIジャパンネクスト証券は、今夏をめどにPTSを開設する(6月28日の記事参照)

yd_matui.gif 個人株式委託売買代金のシェアは9%

 

三菱UFJフィナンシャルグループとは交渉の途中

 新興市場の影響を受けやすいネット証券にとって、市場の低迷はダイレクトに収益に響く。こうした中で、他のネット証券は投信などで売り上げ増を図っている。だが同社は、現時点で販売する予定はない。ただ、株式のみの事業モデルから脱却することは緊急の課題で、今年の秋をめどにPTSをスタートする予定だ。他社とは違い日中の取引が可能で、同一銘柄を同日に何度でも売買ができるのが特徴。このほか先物取引やFX(外国為替保証金取引)などに力を入れていくという。「株式の手数料戦略では遅れをとった。しかし先物とFXでは、他社よりも早く手数料を引き下げており、先行者メリットを生かしたい」と意欲を示す。

yd_matui1.gif 先物の売買代金と市場シェアは順調に伸ばしている

 三菱UFJグループへの加入については、「収益は下がっているが、利益率は悪くない。わらをもすがる状態ではない」と、きっぱりと否定する。以前、同社はりそな銀行と業務提携を結んだ。りそな銀行とは口座開設の提携だったが、手数料をめぐり失敗に終わった。この時の反省を踏まえ、同社の株式を取得することで三菱UFJは「持ち分法適用会社として連結の経常損益に反映することができる」と、メリットを強調する。「傘下に入るのではなく、あくまで口座を増やすことが狙いだ」とし「同社のネットと三菱UFJのリアルの融合だと考えており、あくまで“実験”として位置づけている。現在は交渉の途中だ」と話す。

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