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» 2007年07月26日 05時40分 UPDATE

保田隆明の時事日想:三越と伊勢丹は経営統合の次に何を目指すのか

百貨店業界で売上高4位の三越と、5位の伊勢丹が提携を検討しているというニュースが流れた。実現すれば日本最大の百貨店グループが誕生するが、しかし経営統合だけでは、抜本的な解決にはならないのではないか。

[保田隆明,Business Media 誠]

実質的には伊勢丹による三越買収

三越の株価チャート三越の株価チャート(1年:縦軸の単位は円)伊勢丹の株価チャート伊勢丹の株価チャート(1年:縦軸の単位は円)

 百貨店業界に、大きなニュースが流れた。現在売上高で業界4位の三越と、5位の伊勢丹の経営統合するというのだ。実現すれば、業界で売上トップの百貨店グループが登場することになる。売上高では三越が伊勢丹を上回っているが、時価総額では三越3000億円、伊勢丹4300億円と伊勢丹の方が高い。これは実質的には伊勢丹による三越買収である。

 株式市場は如実に反応しており、報道があった昨日の株価の動きは伊勢丹は前日比変わらず。一方の三越は7.5%の上昇。これは、伊勢丹が三越に対して買収プレミアムを支払うことになるだろうことを市場が先読みした形となっている。

 相手が誰であれ、百貨店業界でM&Aが起こることは誰もが予想できた。小売業で見てみると、スーパーはイオンとセブン&アイの2強に集約されており、コンビニでもセブン-イレブン、ローソン、あと1社どこか、という状況になっている。この流れが百貨店でも起きるのは時間の問題だった。あとは、どことどこの企業がくっつくか、それだけの話である。

 西武&そごう、阪神&阪急、松坂屋&大丸と、百貨店業界では立て続けに経営統合が起きている。まずは経営統合によりコストカットをはかり、投資余力を高めたところで積極的な攻めの投資を行うというのが青写真だと思われるが、その攻めの投資が結果となって現れるまでは、百貨店同士の経営統合というのは小手先の戦術でしかない。

百貨店の敵は大いに増えた

 ここ10年ほどで百貨店業界を取り巻く環境は大きく変わった。かつて百貨店で買い物をすることが大好きだった団塊以上の年齢層は徐々に購買力が低下していく。一方、人口ピラミッド的に購買力として注目せざるを得ないのは団塊ジュニア世代だが、この世代はベビーカーを押しにくい百貨店よりも、「ららぽーと」に代表されるようなショッピングセンターを好む傾向にある。確かにベビーカーで百貨店に行くと、時間の半分はエレベーター待ちで終わってしまうが、ショッピングセンターは横に広いので、エレベーターの待ち時間で一日の半分が終わることはまずない。

 また、今年は東京ミッドタウン、新丸ビルなど、商業施設とオフィスビルが同居する大型複合施設がいくつかオープンして話題になっているが、いずれも百貨店は入っていない。

 1994年に開業した「恵比寿ガーデンプレイス」は、これら複合型ビルの先駆けだが、そこに三越が入居していることはまさに象徴的といえる。この10年ほどで完全に百貨店を取り巻く環境は変わってしまったのだ。いまや、ショッピングセンター、複合型ビルなど、百貨店にとっての競合が増えている。また、東京ミッドタウンに至っては、百貨店は入っていないが、プチ高級スーパーは入居しているという有様である。

百貨店の次の一手が見えない

 結局のところ、百貨店が旧態依然とした業容を続ける限りは、この激化する消費者獲得競争で勝者として抜け出すことはできない。今後の消費の中心となる層をつかむために新機軸を打ち出すか、もしくは今の安定収益状態を保つことで良しとし、低リスク低リターンを目指すかどちらかになると思われる。

 百貨店業界全体の売上高は右肩下がりだが、残念ながら百貨店同士の経営統合だけでは、業界縮小に対して歯止めをかけるには至らない。百貨店業界の全体的な底上げ対策にはならないのだ。

伊勢丹にとってのメリットはどこに…?

 分からないのは、伊勢丹の目的だ。伊勢丹は、消費者の新しいニーズをつかんでいた面があるのに、なぜ今さら、老舗とはいえ元気のない三越との経営統合を模索するのか。顧客層の重なりがないことがメリットだと言われているが、総花的に事業展開をしてもむしろ強みを失うだけである。三越との経営統合で伊勢丹が得るものは、老舗百貨店である三越が有する「ザ・百貨店」のブランド、もしくは業界1位という、あってもなくても株式市場的にはどうでもいい称号だけである。

 もちろん、今の絶好調時にM&Aを行えば交渉面で有利に立てるし、銀座の旗艦店も得られる。あるいは、業績が頭打ちになる前に顧客層を広げたいといった考えも理解はできる。しかしそれだけなら、経営統合は早く済ませてしまうことだ。大事なのは「経営統合の後にどうするか」のはず。次の一手を考えないことには、百貨店業界全体が取り残されることになってしまう。

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