ビジネスパーソンのために“ちょっと贅沢”――ホテルメトロポリタン丸の内

» 2007年07月23日 06時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 ここ数年、東京駅周辺には新しい建物・大型施設が続々と誕生している。丸ビル、新丸ビルのような商業施設だけでなく、ホテルも多い。

 2007年5月24日、東京駅の真上というロケーションに誕生したホテルが「ホテルメトロポリタン丸の内」だ。

 運営主体は、JR東日本の100%子会社である「日本ホテル」。「ホテルメトロポリタン」(東京・池袋)、「ホテルメトロポリタンエドモント」(東京・飯田橋)といったホテルや、駅からのアクセスの良さを武器にする「ホテルメッツ」(渋谷、目白、高円寺、武蔵境、国分寺、久米川、赤羽、浦和、川崎、溝ノ口、かまくら大船、津田沼)などを運営している。

 同社が運営する他のホテルに比べ、ホテルメトロポリタン丸の内は“ちょっとぜいたく”なホテルになっている。東京駅というホテル激戦区にオープンした、ホテルメトロポリタン丸の内。その狙いやコンセプトについて、総支配人室企画担当の斉藤拓也氏に聞いた。

東京駅を独り占め!

 ホテルメトロポリタン丸の内は、東京駅直結、新幹線日本橋口まで徒歩1分というサピアタワーの、27〜34階に位置している。サピアタワーがある場所は、もともと東京駅の資材置き場やバスロータリーとして使われていた土地で、イメージとしては、東京駅の敷地の北端に当たる。そのため、南向きの部屋から窓の外を見渡すと真下には東京駅が広がる。何本もの線路が隙間なく並び、ひっきりなしに電車が行き来する光景は、特に鉄道好きでなくても、グッとくるものがある。昼間の景色も楽しいが、とりわけ夜景は素晴らしい。

南向きの客室からの夜景。ぜひクリックして拡大を
昼間の景色は、ちょっと鉄道模型のようだ(左)。ツインルームの室内(右)

 全343室の客室のうち、4分の1程度は東京駅がよく見える部屋になっている。眺望の良さはホテル側も意識しており、景色をイラストで解説した「眺望の御案内」というしおりが用意されている。

 取材中もひっきりなしに列車が行き交っていたが、室内が静かなのは意外だった。耳を澄まさないと電車の音は聞こえない。「これまでも駅直結のホテルを手がけてきましたから、防音のノウハウがあるのです。いくら駅に近くて便利でも、電車の音がうるさかったら、くつろいでいただけないですから」

風呂場から外の景色が見える部屋は「ビューバス」と呼ばれ、風呂場からの眺めもいい。(左)。ホテルメトロポリタン丸の内総支配人室企画担当の斉藤拓也氏(右)

ビジネスパーソンのための“ちょっとぜいたく”

 ホテルメトロポリタン丸の内は、シングルの中心価格帯が2万円弱、ツイン・ダブルの中心価格帯が3万円前後となっている。シングル8000円くらいから泊まれるような一般ビジネスホテルよりはちょっと高いが、外資系の超高級ホテルよりはだいぶ安い、という印象だ。

 「東京駅周辺はホテルラッシュですが、外資系の超高級ホテルと、一般的なビジネスホテルに二極化しています。そこで我々は、ビジネスパーソンの方が『ちょっといいホテルに泊まりたい』というニーズに応えられるホテルを目指しました」(斉藤氏)

 確かに東京駅の周りには続々と新しいホテルが建っている。2005年12月開業のマンダリンオリエンタル東京のほか、2007年9月にはザ・ペニンシュラ東京、2008年にはシャングリラ東京もオープン予定など、いずれもシングルルームでも6万円は下らない、外資系のラグジュアリーホテルばかりである。

 実際、ホテルメトロポリタン丸の内は、シングルルームを多く取り、宴会場を作らない、レストランは1つだけと、都市型ビジネスホテルらしい作りになっている。ビジネスホテルとしての最大のポイントは、やはりロケーションの良さだ。「東京駅直結ですから、出張など、ビジネス利用の方にとっての交通の便は最高に良いと思います。東京観光の拠点としても便利に使っていただけるのでは」

 ただ、ホテルメトロポリタン丸の内の客室は、ビジネスホテルとしては“かなりぜいたく”。ベッドはシモンズ製で、6.5インチコイルのポケットコイルを使ったマットレス(ウェスティンホテルが“雲の上の寝心地”とアピールしている「ヘブンリーベッド」と同等である)のものだし、枕は固いものと柔らかいものの2種類が用意され、好みのものを使える。また一部の部屋では、風呂場もユニットバスではなく、浴槽と洗い場が分かれており、脱衣場も設けられた広々としたものになっている。

 ビジネスパーソン向けの配慮も欠かさない。各部屋にはイーサネットのポートとLANケーブルが完備されているので、ノートPCさえ持っていればすぐにネットにつなげる。PCを持っていない人は、1泊1000円でノートPCを借りることができる。椅子は、イタリアのバロン(Baron)チェア。ヘッドレストが付いており、リクライニングしたり、好みに応じてセッティングを変えられる高級オフィス椅子だ。液晶テレビはシャープのアクオスだった。

仕事がしやすそうなデスクと椅子。椅子のすぐ横にコンセントとイーサネットポートがある(左)。ベッドの上には枕が2種類(右)

駅が見えるなら、電車がなきゃだめだろう

 実は取材時に、記者が非常に気になったことがある。机の横のガラス棚のところに、なぜか小さな鉄道模型が1つ置かれていたのだ。よく見るとそれは新幹線らしき車両だった。何の車両か聞いてみると「E2系の長野新幹線ですね」とのこと。

 鉄道模型は、全部屋ではないがガラス天板のある部屋に多く置かれているそうだ。「ああ、だから東海道新幹線じゃないんだ。長野新幹線ならJR東日本の管轄だし」と勝手に納得していたら、「模型の種類はいろいろです。部屋によっては、特急サンダーバードの模型もありますよ」と斉藤氏。どうやら、特にJR東日本の列車でなくてもいいらしい。

 “鉄ゴコロ”のある人には、思わず顔がほころぶサービス……とはいえ、部屋に鉄道模型が置いてあるホテルとは初耳である。なぜこんなサービスを始めたのですか? と聞くと、社長の「駅が見えるなら電車がなきゃダメだろう!」という鶴の一声で決まったのだという。……さすがJR東日本系列ホテル、と妙な感心をしてしまった。

部屋に置いてあった長野新幹線の模型

 東京に住んでいる記者にとって、正直、山手線内でホテルに泊まる必然性はまったくない。しかし部屋の窓や風呂場からの眺めや、長野新幹線の模型を見ているうちに、だんだん「ちょっとぜいたくして、ここに泊まってみたいかも……」という気持ちになってしまったのには我ながら驚いた。

 東京駅を見下ろす眺め、夜景、居心地のいい部屋とさりげなく置かれた鉄道模型……ホテルメトロポリタン丸の内は、ちょっとリッチなビジネスパーソンでも、あるいは“鉄分濃いめ”な人でも、たっぷり満足できるホテルといえるだろう。

部屋に備え付けの、眺望を解説するしおり(左)。部屋の鍵はFeliCaを使ったカードキー(中)。レストランは「TENQOO(テンクウ)」のみ。JR東系列のホテルらしく、もちろんSuicaで支払いが可(右)

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