夏のボーナス時期ですが、読者のみなさんはいかがでしたでしょうか。ボーナスが増えた人はホクホクでしょうが、思わぬ下げによって、買いたいモノが買えなくなった人もいるのでは。あるいは「ボーナスなんて単語は、私には無縁です」という方もいるかもしれません。
損保ジャパンDIY生命保険が行った「夏のボーナスに関する調査」によると、ボーナスは増えたが、家計は厳しいという結果が出ました。ボーナスが増えた人は49.2%で、減った人20.2%の約2.5倍となっています(参照リンク、PDF)。手取り額の平均は昨年より4.4万円増え77万9000円。ちなみに日本経団連が発表した大企業のボーナスは、88万3695円と3年連続で過去最高を更新しています(参照リンク、PDF)。
ではボーナスの使い道は? 他人が何に使っているのか、気になるところ。複数の調査結果を調べると、約半数の人が「預貯金」でした。「とりあえず貯蓄」という人が多いようです。
それでは「投資」をする人はというと、こちらはだいたい10~20%でした。ボーナスを手にして、少しでもお金を殖やそうとしているんですね。しかし、どうやって運用すればいいのか、分からない人も多いのでは。そこで「Business Media 誠」の連載でおなじみ、キャスター兼ファイナンシャルプランナー(FP)の目黒陽子さんに、投資についてアドバイスしてもらいました。
具体的に話を進めるため、ここで「誠くん」に登場してもらいましょう。誠くんは28歳でメーカーに勤めて5年目。年収は税込400万円で預金残高は定期預金が100万円、それと普通預金に20万円ほど。ある調査によると20代後半の預貯金額は「50万円以下」が最も多いということですから、誠くんはコツコツ貯めてきたようです(参照リンク)。誠くんのケースだと、いくら投資に回すことができるのでしょう。
「あくまで一般的な目安として、お話を進めますね。誠くんは20代で独身ということなので、預貯金の10~30%を株式や投信、確定拠出年金などに回してもいいかもしれません」
ということは預貯金の合計が120万円なので、株や投信に回すお金は12万~36万円くらいかな。
「これから結婚や出産のことなどを考えると、2~3年以内にまとまったお金が必要になるでしょう。その準備資金として30~50%は、定期預金や個人向け国債、財形など、確実にお金を増やす金融商品に預けておく方がいいでしょうね」
ん、財形って聞いたことあるけど、詳しく教えてください。
「財形とは一般・年金・住宅の3種類があります。20代の誠くんには、目的用途がない一般財形がお勧めかもしれませんね。3年以上積み立てると利息が非課税になりますし、育児費用のために使えば補助金があります。ちなみに30代以降の方は、住宅財形で住宅ローンの頭金に使うといいでしょう。そして落ち着いたら、年金財形を考えてはどうでしょう。共通しているのは、年数は違っても利息が非課税で、融資や補助があることです。会社が導入しているか、まずは確認してくださいね」
ありがとうございます。あと個人向け国債も教えてもらえますか?
「その名の通り、個人の方を対象とした国債です。変動と固定の金利があり、それぞれ年4回発行されます。変動金利10年型は利率が半年ごとに見直され、固定金利5年型は発行時の金利が適用されるので、利率は一定しています。国が発行しているため安全性の高い商品で、1万円から購入することができます。最近は個人向け国債が人気ですが、満期まで持つなら利回りは断然10年物国債の方がいいですね」
ありがとうございます。それでは僕は定期預金に36万円~60万円、株や投信に12万円~36万円ですね。あれ、預貯金に余裕資金が残ってる。じゃあ投資に回しましょうか?
「慌てないでくださいね。少しは手元にも残しておかないと。急な資金が必要になった時は、どうしますか? 少なくとも30~40%は普通預金に預けておきましょう。3カ月分の生活費くらいは普通預金がいいですね」
分かりました。僕の場合だと最低でも36万円を普通預金に回せばいいのですね。120万円から36万円を引いたら84万円が残るから、50万を定期預金や財形、国債などに預け、34万円を投資に回せばいいんだ。さあ~て投資するぞお~。できればリターンが多い方がいいなぁ。
「たしかに20代はリスクが取りやすいので、積極的な運用もできるでしょう。ですが投資の初心者に、ハイリターン商品はお勧めしません。ハイリターンということはハイリスクなわけですから、元本が大きく目減りする可能が高いのです。中長期的な計画で投資することが大切でしょう」
中長期というと……具体的にはどういう商品を買ったらいいのでしょう?
「中長期的な運用となると、やはり投信が向いているのでは。TOPIX(トピックス)などの株式指数で運用される『インデックス型』や、株式70%未満や債券30%以上に投資をしている『バランス型』もいいかもしれません。自分で『日本株が好調だから割合を増やそう、金利が上がってきたから債券の割合を減らそう』と組み変えるのは難しいので、ファンドマネージャーの作る投信にお任せするわけです。しかしその分、このバランスファンドはファンドマネージャーへの手数料である信託報酬が高めなのがデメリットですけどね」
なるほど。じゃあ34万円の資金で買える投信を探してみます。
「誠くんのように、20代から投資を考えるのはとても大切なことです。でも若い時は、お金を貯めることも忘れないでくださいね」
普通預金:30~40%(36万円~48万円)
定期預金、財形、国債など確実に増やすお金:30~50%(36万円~60万円)
投信・株式・確定拠出年金:10~30%(12万円~36万円)
※カッコ内の金額は預貯金120万円の場合
次に登場してもらうのは「真琴さん」です。真琴さんは43歳で既婚者。11歳と8歳の子供がいます。現在は賃貸住宅に住んでいますが、年内にマイホームを購入する計画があります。年収は税込800万円で、月々の家賃は12万円です。現在の預貯金は700万円ですが、いくらぐらい投資に回せますか?
「30代~40代の既婚者でしたら、学費や老後の資金も考えないといけません。そのため金融資産残高の10~30%を株式や投信、確定拠出年金などに回し、50~70%を定期預金や財形、20%が普通預金といったポートフォリオ(資産配分)が一般的です」
となると株や投信に70万~210万円、定期預金に350万~490万円、普通預金に140万円か……。
「ただ真琴さんの場合、積極的な運用はお勧めしません。3000万円の家を購入予定だそうですね。2割の頭金を考えると600万円で、ほぼ全預貯金を投入しなければなりません。しかも教育資金は? 投資を行うのが難しいですね。真琴さんの場合は、3つの方法が考えられます。まずは家の価格を下げる方法。2つ目は奥様にもっと働いてもらいましょう、という選択肢。3つ目は家の購入時期を数年後にして、その間に投資で増やす」
そうですか……妻と相談して3つの中から、決めたいと思います。あと私の年収は税込800万円で、妻と子供2人がいて年間支出は750万円(税金含む)です。なので年間に50万円を、投資または預貯金に回すことができます。
「投資に回すお金を考えることも大切ですが、万が一真琴さんが亡くなった場合も考えてみましょう。奥さんが働きに出るとして、年間の収入は100万円(税込)、それに遺族年金と遺族厚生年金などで180万円があり、年間収入は280万円とします※」
「しかし、年間支出は420万円になります。ですから年間収支(収入と支出の差額)は-140万円。毎年赤字です。このペースでいくと学費もかさみ、お子さんが独立するまで約3000万円が必要になる計算ですが、ここを、ご主人の万が一の場合に備えて、最低この金額を満たす保険に入る必要があるようです。(住宅ローンは団体信用生命保険※で支払いがなくなります)又、奥さんの寿命までと子供が自立するまでにかかる必要生活費は6000万円以上が必要ですから奥様の老後もしっかり保障が必要!ということであればこの6000万円を補えるような保険を考えるべきでしょう」
6000万円を補えるような保険ですか……。実は、すでに保険には入っていますが、見直した方がいいでしょうか?
「一般的には保険を見直すことで、支出を少なくできるケースが多いですね」
保険はたしか定期付終身保険だったはず……。月々の掛け金は5万5000円です。
「それは見直した方がいいかもしれませんね。遺族に保険金を残す一般的な保険ですが、実は誤解していることが多いのです。この定期保険特約の部分については、全期型と更新型があります。全期型は、契約から保険料払込終了まで掛け金は変わりません。ですが更新型は、10年ごとに契約が自動的に更新され、そのたびに保険料が高くなっていきます」
えっ、保険料が高くなるんですか?
「保険は30歳の時に契約されたのですか? それでしたら来年の40歳で、契約が更新されます。保険会社は細かい字で簡単なお知らせをしてきますが、『よく分からないし、そのまま更新でいいやっ』とする方が大半です。真琴さんの場合、2回更新することになるので、その間の保険料は今の2倍以上に上がります。トータルで支払う保険料を見ても、全期型の方が安くなるケースが多いのです。本当にこの保険が必要なのかどうか、見直してみるといいでしょう。世帯主が歳をとるほど、家族に対する責任も小さくなのが一般的ですからね」
でもこの保険って、貯蓄はできるんですよね? 例えば60歳でまとまったお金がもらえるとか……。
「基本的に保険で貯蓄は考えませんよ。保険とはあくまで生きている間、足りない部分を補うもので、それ以外はかけすぎと考えるべきです。会社勤めの方は主契約を残して、定期の部分を会社のグループ保険などに変えると安くなりますよ」
普通預金:20%(140万円)
定期預金、財形、国債など確実に増やすお金:50~70%(350万円~490万円)
投信・株式・確定拠出年金:10~30%(70万円~210万円)
※カッコ内の金額は預貯金700万円の場合
投資をどう行うかは、その人の預貯金額や年齢、独身か既婚かなどの条件によって違ってきます。次回は、どんな金融商品が投資の初心者に向いているかなどを紹介しながら、さらに将来の夢やライフプランを実現させるための資産設計を提案していきます。
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