米国の投信残高、日本の17倍

» 2007年07月19日 21時40分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 米国の投信残高は2006年に10兆ドル(約1200兆円)に達し、全世帯の5割が投信を保有していることが分かった。国民1人あたりの投信保有額は、米国が411万円、日本が54万円だった。1996年末での残高3.5兆ドルから10年間で約3倍に拡大。一方、日本の投信残高は1996年末の48.7兆円から、68.9兆円へと10年間で1.4倍の拡大にとどまった(7月2日の記事参照)

 「米国投信10年の軌跡」と題し、日本証券経済研究所の杉田浩治専門調査員が分析した。米国と日本の投信残高に大きな開きが出た背景として、米国のダウ平均株価(米国の代表的な株価指数)が96年末の6448ドルから1万2463ドルと2倍近く上昇した。米国に比べ市況環境が厳しかった日本は、日経平均株価が1996年末の1万9361円から2006年末には1万7225円に下落した。ここ10年間の米国と日本の相場環境の違いが、投信残高に大きな影響を与えたようだ。

米国の投信残高は10年で3倍になった

小型株がパフォーマンスに貢献

 米国で投信の資金が増加したのは、401K(企業型確定拠出年金)やIRA(個人型確定拠出年金)などで、「税優遇のある年金プランを通じ購入されている部分が大きい」という。確定拠出年金からの資金は2000年〜2005年(2003年除く)の間、毎年500億ドル(約6兆円)以上が流入している。日本では2001年に確定拠出年金制度(掛金と運用収益の合計額から給付額が決まる年金制度)が始まったが、運用資産残高は2006年末で3兆円程度でしかない。

 運用のパフォーマンスを見ると、米国の国内株ファンドの騰落率は1999年から2005年までS&P500(米スタンダード・アンド・プアーズが算出している株価指数)を上回っていた。また日本の国内株ファンドも、2000年から2005年まではTOPIXを上回った。好パフォーマンスを収めた理由は「小型株(発行済み株式総数の小さい企業の株式)の値動きに一因があると思われる」。なお米国と日本の小型株指数は、S&P500とTOPIXの動きを上回ることが多かった(6月19日の記事参照)

確定拠出年金の制度の拡充が課題

 米国の投信残高成長率を見ると、1980年代は年平均26%、1990年代は21%、2000年から7年間で6%。「世界投信残高の半分を占めるに至った米国投信は、今後安定成長を目指していくように思われる」と予測する。

世帯普及率では米国が48%、日本は7%

 一方の日本は、商品や運用面などで改善することが必要だという。「確定拠出年金の制度を充実(従業員拠出、拠出限度額の引き上げ)させ、また浸透させることが課題」と指摘している。

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