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» 2007年07月09日 00時00分 UPDATE

“民族系”の論理で、日本が見捨てられる日

日本には“外資系”“民族系”の意識が根強く、外資系資本が入ってくることを良しとしない気分がある。しかしこのまま外国資本が参入できない市場となれば、日本はそのまま見捨てられてしまうのではないか。

[藤田正美,Business Media 誠]

 ひと昔前、日本の産業界では「外資系」「民族系」というような言葉がまかり通っていた。こういう言葉の裏側にある潜在的な意識の中では、民族系資本の会社こそ守るべきであり、外資系資本は労働慣行も何もまったく異なる会社として、どちらかと言えば出て行ってほしいという気分があった。

 その後グローバリゼーションが進み、日本企業がこれだけ海外に進出するようになっても、その気分はあまり変わっていないように見える。それが端的に表れたのが、企業の株主総会だった。スティール・パートナーズのようなファンドが日本企業の買収を図ったり、また増配などの株主要求を突きつけてくるなど、今年の株主総会はいつになく注目を集めていた。実際、いまだに争っている楽天とTBSの話はかすんでしまい、むしろブルドックソースとスティール・パートナーズとの争いが注目された(7月5日の記事参照)

頑固な姿勢で本当にいいのか?

 もちろんこの一連の総会で、大株主として提案をしたファンドはスティール・パートナーズだけではない。他のファンドも同じような株主提案を会社側に提出した。しかし、これらの提案はほぼすべて否決されたという。増配などは他の日本人株主にとってもいい決議であるはずなのに、日本人株主は外資系ファンドに同調せず、経営陣側に手を貸した形だ。

 しかし経営陣ばかりか株主もこれほど頑なな姿勢で本当にいいのか、かなり疑問である。まず日本の企業は、日本の経営者でなければ経営できないわけではない。例えば、日産自動車のカルロス・ゴーン社長、最近は、目標未達で責められているが、ここまで立て直してきた手腕は素直に評価されるべきだろう。少なくとも日産はゴーン社長が来るまで純粋に「民族系」としてやっていたのに、“瀕死”の状態になったのだ。

 もちろん日産を買収したのは、ルノー自動車でありファンドではない。ルノーは、それなりに自社の生き残りも賭けたコミットメントがあったはずだし、株式を売り抜けるだけのファンドとは自ずから異なる。

 しかしファンドにもいろいろある。たとえばブルームバーグによれば、世界最大のプライベートエクイティであるKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)が2006年の1月から6月初めまでに世界各地で企業買収に投じた資金は2000億ドルを超えるという。そして彼らが投資している企業、世界の36社の売上高は全部合わせるとこれも1000億ドル(12兆円)を超えるというから、世界の巨大企業並みである。しかもKKRには専属の経営コンサルタントがいて、買収した企業の経営アドバイスまで行うというから、それなりのコミットメントはあると言っていいかもしれない。

「競争と談合」が外資を締め出す

 これまで日本は、対外直接投資には非常に熱心だった。製品を輸出していた企業が、貿易摩擦などを背景に現地生産に踏み切ってきたからである。かつては米国、現在は中国をはじめとする東アジアが投資先である。その一方で、日本への直接投資はそれほど多くはない。外資系に対する警戒感が根強くあったり、日本で生産しようにも土地などが高く採算ラインに乗りにくいことから、外資系が敬遠してきたという事情もある。

 それに日本の企業同士の「競争と談合」は、日本に進出してきた外資を閉め出すことにもつながってきた。その結果、日本への製造業の直接投資は、世界の中でも極端に少ない。例えばGDP比で見た場合、2004年の数字だが、米国22.9%、イギリス33.0%、ドイツ22.4%、フランス41.5%という数字に比べ、日本はわずか2.0%にしかすぎない。

 経済産業省は、日本への直接投資は日本の産業構造を効率化することに役立つとして、外国資本による日本への投資を奨励している。

外資にとって魅力のない市場

 しかしこうした外国資本を増やすには、日本が投資機会が豊富にある国であるということと、資本市場や監督当局が国際ルールを知っていることが重要である。株主側も、一般株主はともかくせめて機関投資家などは、外国のファンドがどういうように動いてくるのか、彼らの論理は何か、承知しておかなければならない。

 しかし、外資系ファンドの提案をことごとく拒否したという結果を見れば、6月総会がそういう観点から開催されたとは思えない。日本がそういった態度を取り続けている限り、日本に本格的に進出しようとする外資系もちゅうちょするだろう。そしてその間に、日本は少子高齢化が進み、それらの外資にとって魅力のない市場になってしまうかもしれない。日本が見捨てられる日が来ないように、われわれは考え直さなければいけないと思うが、どうだろうか。

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