中小規模の小売店を狙え――ドコモ&カシオ合弁会社の狙い神尾寿の時事日想

» 2007年07月04日 10時00分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 7月3日、NTTドコモとカシオ計算機が「iD」を中心としたクレジットサービスによる電子決済サービスと、店舗の売上集計や分析などの店舗支援サービスを提供する合弁会社「CXDネクスト」を7月9日に設立すると発表した(7月3日の記事参照)。新会社「CXDネクスト」は、資本金・資本準備金の合計は15億円で、カシオが60%、ドコモが40%を出資する形になる。

 CXDネクストではカシオが販売するネット対応電子レジ「TE-2500/TK-2500」向けに、iDやトルカを活用した電子決済ソリューションを提供する予定だ。このシステムは従来のPOSレジよりも安価かつ運用が容易であり、中小規模店舗にiD/トルカを普及させるのが狙いだ。

 iDやQUICPay、Edy、Suica/PASMOなどのFeliCa決済の加盟店は、2007年に入ってから急速に増加している。共用リーダー/ライターの展開本格化も追い風になり、コンビニやスーパーをはじめとする大手ナショナルチェーンでは何らかのFeliCa決済が使えるところがほとんどだ。全国的に“FeliCa決済が使える”ことは特別なことではなくなってきている。

 しかし、その一方で、国内小売店約300万の3分の2を占める中小規模店舗では、POSシステムすら整備されていないケースも多く、FeliCa決済への対応が大手ナショナルチェーンほど進んでいないのが現実だ。FeliCa決済や電子クーポン、ポイントプログラムへの対応が流通小売業で"必須のもの"になる中で、中小規模店舗向けシステムの潜在市場は大きい。

未開拓分野も含めて「面の広がり」が顕著なiD

 iDを始めとするFeliCa決済は、これまでクレジットカードが使われてこなかった小規模・少額決済市場への展開が期待されているが、今のところ大手ナショナルチェーン中心の加盟店拡大になっている。こうした大手の加盟店の中には、すでにサインレスのクレジットカード決済に対応していた店舗もあり、そこではFeliCa決済対応のメリットが打ち出しにくい。

 しかし今回、ドコモとカシオ計算機が中小規模店舗向けのiD普及に本腰をいれることで、小規模・少額決済市場でのFeliCa活用が大きく進み、加盟店の“裾野の広がり”が期待できる。また中小店舗向けに、FeliCaやおサイフケータイを活用したクーポンやポイント、送客のサービスやビジネスの登場など、関連市場が拡大するシナリオは十分に考えられる。FeliCaビジネス全体の活性化という視点でも、今回のドコモとカシオの取り組みは評価できる。

 iDを推進するドコモと三井住友カードは、これまでも自動販売機やタクシー、ハンディターミナルなど、未開拓な少額決済市場にiDを広げる取り組みを積極的に行ってきた。iDは、プリペイド型電子マネーのEdyと並んで、FeliCa決済加盟店の「面の広がり」に貢献している。引き続き、今後の動向に注目していきたい。

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