御社の社内報、外部に配れますか?──リクルート社内報のDNA

» 2007年07月03日 21時50分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 多くの会社が“事業部制”をとり、小部門ごとに損益を見るようになった昨今。リクルートでは、早くから分社経営を進めプロフィットセンター制(利益に責任を持つ組織)をとってきた。今日では「1000社くらいがリクルートの中にある」(リクルート創業者の江副浩正氏)という状況だ。

 リクルートの強みでもあるプロフィットセンター制だが、そこにあるコミュニケーション上の問題点とはなんだったのか。

 リクルートで社内報「かもめ」の編集長を長年務めた福西七重氏が設立したナナ・コーポレート・コミュニケーション。同社10周年記念セミナーで、江副浩正氏がリクルートのDNAについて講演した。

「そうすると会社がバラバラになってしまうんです」

 プロフィットセンター制によって、各グループが利益の競争を行うリクルート。江副氏は、これを“リクルート連邦”と呼ぶ。人材輩出企業とも呼ばれる同社だが、それは企業精神旺盛な人を採用し、プロフィットセンターのトップに据えることで拡大してきたリクルートのDNAとも呼べるものだ。ところが、連邦制を進めるとコミュニケーション上の問題が生じる。

 「リクルート連邦といっても、そうすると会社がバラバラになってしまうんです。そうならないように、社内報を作ってきた」

 目的は、会社の情報を共有すること。自分のプロフィットセンターのことしか分からなくなることを避けるための社内報なのである。さらに「この営業マンはいくら売った」といった情報を掲載して競争的風土を作ることも、これがリクルートの社風にマッチした。

 「20に制限したが、削っても削っても社内報が増える。地区とか事業部とか。放っておいても社内報が増えるという会社も珍しい」

 大きな企業ならば社内報を持っているところは少なくないだろう。昨今ならブログや社内SNSなどの、ITを活用した社内報的なツールも増えている。ではリクルートの社内報はなぜ自発的に増え、また効果が上がったのか。

経営批判もする社内報

 「経営批判もどんどんやるんですね。悪い情報もどんどん載せるということが、御用社内報ではないことにつながる」

 だから社内報は完全に社員のためのものだ。多くの企業では、IR担当役員や広報担当などが社内報を担当しているのだが、リクルートでは社内報の担当役員がいない。さらに社内だけでなく、外にも積極的に配っている。

 「こんな社内のことが書かれた社内報を外に配っていると問題も起きますよ──という指摘も受け、実際そうなったわけですが(笑)。それでもマイナスよりもプラスの面が多かったと思っている」

 「はっきり言って経営者がチェックしている社内報は社員から支持されない。これははっきりしている。誰のために社内報を作っているのかというと、会社のためじゃなくて社員のため」

 リクルートは“コトバでやる気を出していく”。そんな風土の会社だと言われることがある。例えば「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」というコトバは江副氏が1968年当時に作った社訓だ。リクルートを巣立った人材の中には、今だにこのコトバを忘れず、拠り所としている人もいる。勤めていた企業の社訓を、退社後も大事にするような風土──そんな社風が社内報に対する江副氏の言葉にも表れている。

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